二十六、連行
俺たちは奥へ進み、どこまで続いているのか確かめてみたが、この洞窟は行き止まりだった。
「どうする、行き止まりだぞ」
俺はみんなに訊いた。
「この場所は、入口から見えないから、とりあえずここで居た方がいいね」
飯島が言った。
「そうだね。水や食料もまだあるし」
蒼空がそう言うと「ここまで入って来たら、どうするの」と田地が訊いた。
「マネキンは入口付近に積み重ねられてある。ここまで入って来る用がないんじゃないかな」
飯島が答えた。
「あのマネキン、ちょっと確かめてみた方がいいんじゃないか」
俺が提案した。
「確かめるって?」
蒼空が訊いた。
「ほら、これまでマネキンがメッセージを送って来ただろ。そしたらあの中にそれがあるかも知れないぞ」
「でも、あれって、いわばゴミなんでしょ。ここに来たのも偶然だし」
「これまでもずっと偶然だったぞ」
「まあ、確かに・・」
「じゃ、僕は田地と見張りをするよ」
飯島が言った。
「ほら、田地。入口へ行くよ」
飯島は田地を引っ張って、入口へ向かった。
「蒼空、俺たちで確かめてみよう」
「う・・うん・・」
俺と蒼空は手あたり次第、マネキンの身体に何か書かれていないか確かめた。
ないな・・
どれもこれも、単なるマネキンだ。
「あっ・・」
蒼空が何かを見つけたようだ。
「なんか書かれてあったか!」
「いや・・書かれているわけじゃないけど、これって・・着ぐるみだよね」
蒼空が示したマネキンには、背中にファスナーがついていた。
「中に・・なにか入ってるのかな・・」
蒼空は嫌な予感がしている風だった。
「死体とか・・?」
俺がそう言うと、蒼空は後ろへ下がった。
俺は恐る恐る、そのマネキンを触ってみた。
けれどもマネキンには重さを感じなかった。
「これ、カラじゃないのか」
「そ・・そうなの・・?」
「開けてみるか」
「えぇ・・気持ち悪いよ・・」
「それこそメッセージが入ってるかも知れないぞ」
「じゃ・・航太、開けてよ」
「わかった」
俺はファスナーを掴み、ゆっくり下へおろした。
ジジジ・・
ファスナーを腰のあたりまで下し、中を覗いてみた。
「なにか・・ある?」
蒼空が訊いた。
「いや・・特になにもないぞ」
「そうなの・・」
蒼空は安心したように、中を覗いていた。
「ほんとだ、なにもないね」
他にも似たようなものがないか、俺たちは再び探した。
すると何体か着ぐるみが見つかり、中を確かめてみたが何もメッセージはなかった。
一体には機械が埋め込まれている物もあり、とても重かった。
「これって、遠隔操作っていうやつ?」
蒼空が訊いた。
「どうなんだろうな。いずれにしても、俺たちには操作できないな」
「だね・・」
「これさ・・」
俺は一呼吸置き、ある考えが浮かんだ。
「なに」
「これ・・」
俺はマネキンを持ち上げ、身長を確かめてみた。
すると偶然にも、俺にぴったりのサイズだった。
「航太、なにするつもり?」
「これを着てさ、ラムダのアジトへ潜入するってのは、どうかな」
俺は面白半分にそう言ってみた。
「えええ!」
蒼空が叫ぶと、飯島と田地が振り返った。
「そんなの絶対だめだよ!危険すぎる」
「でもさ・・敵の様子を確かめないことにはさ」
「どうしたの?」
そこで飯島が走ってきた。
「ちょっと着てみる」
俺はそう言い、足を入れ、腕を通し頭も被って「蒼空、閉めてくれ」と、ファスナーを閉めるように頼んだ。
「え・・石竹くん、なにやってるの」
飯島は俺の行動に驚いた。
「ほら、蒼空。後ろを閉めてくれ」
「ダメだってば」
「ちょ・・石竹くん、蒼空くん。どういうこと?」
「飯島、これってラムダに潜入できると思わないか」
「えっ!せ・・潜入って・・。無茶だよ」
「だよね。飯島くんもそう思うよね」
「そうだよ。場所もわからないんだし。潜入するにしてもまず場所を確かめなくちゃ」
確かに飯島の言う通りだ。
やみくもに探しても、体力を消耗するだけだな。
「わかった、わかった。でもとりあえず閉めてくれよ。リハーサルしとかないとな」
俺はそう言って笑った。
「もう・・航太は・・」
蒼空は、仕方がないといった風にファスナーを閉めた。
俺はロボットのように、カクカクと動いて見せた。
「航太・・なにやってんの」
「あはは、うまいか?」
蒼空も飯島も呆れていた。
「た・・大変だ~~~!」
田地が全速力で走ってきた。
「田地、どうしたんだ」
「う・・うわあああ~~!」
田地は俺のマネキン姿を見て、大声を挙げた。
「俺だよ俺。石竹だよ」
「な・・なにやってるんだよ・・」
「大変って、どうかしたの?」
蒼空が訊いた。
「ああっ!それだよ、それ。あいつら戻って来たよ!」
「ええええ~~~!」
「どこまで来てる?」
飯島が訊いた。
「もうすぐそこだよ!」
「マジか・・じゃあ外には出られないな」
俺が言った。
「奥へ行こう!」
飯島がそう言い、俺たちは奥へ隠れることにした。
その際、俺は着慣れない着ぐるみのせいで、足を滑らし転んでしまった。
「だから、言っただろう。R-5はあっちだって」
そこに男性二人が、話しながら入ってきた。
しまった・・ここで動くとバレてしまうぞ・・
蒼空たちは、どうやら奥へ隠れたようだ。
「ああ、あった、あった」
男が俺を見つけ、そう言った。
え・・あったって・・どういうことだ・・
「何体だっけか」
もう一人の男が言った。
「確か・・三体だな。えっと・・あと二体は・・あっ、ここだ」
男は機械が埋め込まれたマネキンを見つけ、そう言った。
「ほら、運ぶぞ」
俺と機械のマネキン二体は、男たちに引きずられ、入口まで運ばれた。
ちょ・・おいおい・・これってマジでアジトへ連れて行かれるのか・・
「俺たち」は、荷車に乗せられ、洞窟を出発した。
待て・・
待て待て・・待てって・・
これは大変なことになった。
冗談半分にアジトへ潜入なんて考えたけど、マジになってしまった。
荷車はガラガラと音を立て、森の奥深くへ入って行った。




