二十五、洞窟発見
翌日、俺たちは洞窟を探すことにした。
昨晩の野宿で、やはり屋根がないと体力が消耗することを実感したからだ。
俺たちはわずかな朝食を摂り、出発することにした。
山中を、まるで彷徨うように歩き続けたが、飯島は迷わないように、ナイフで木に印をつけていた。
「そういう知恵って、やっぱり戦記物読んでるからか?」
俺が訊いた。
「まあ、それだけってわけじゃないけど、確かにヒントはあるね」
「そっか。やっぱり読書っていうのは、いざという時、役に立つもんなんだな」
俺は感心した。
日頃、ゲームばっかりやってる俺とは違うな。
「あっ!」
しばらく歩いたところで、先頭を行く飯島が叫んだ。
「洞窟だ!見つけたよ、洞窟だ!」
「マジか!」
あああ~~!
マジで洞窟だ。
俺たちの100mほど先に、突然、ポッカリと大きな口を開けた入口が見えた。
冬なら熊なんかが大喜びして、冬眠しそうな穴だ。
よ・・よかった・・
これで何とか雨露は凌げる。
蒼空も田地も大喜びしていた。
「ちょっと待って・・」
飯島が小声で囁いた。
「どうした・・飯島」
「誰か出てきた・・」
せっかく見つけた洞窟だったが、そこを誰かが出入りしていた。
「ちょ・・これってラムダじゃないの・・」
蒼空が言った。
「ええっ!ラムダって僕たちを殺そうとしているんだろ!」
田地が大声で言った。
「田地・・声が大きい」
飯島がたしなめた。
俺たちは暫く様子を窺うことにした。
すると出入りしているのは、男性二人で、しかも大人だった。
ほどなくして二人は洞窟を後にした。
「なんだろう・・他にも誰かいるのかな」
飯島が言った。
「確かめてみるか?」
俺がそう提案した。
「ちょっと、航太。危ないよ。ラムダだったらどうするの」
蒼空が俺を制した。
「でも、あそこを確保しないと、今夜も野宿だぞ」
「そうだけど・・」
「よし、じゃ、とりあえず俺一人で行ってみる」
「航太・・危ないって」
蒼空は俺のシャツを引っ張った。
「大丈夫。危険だとわかった時点で戻って来るから」
確か、蒼空は昨晩、「戦うしかない」って言ってたよな。
あの言葉はどこへ行ったんだ。
「石竹くん、ほんとに平気なの?」
飯島も俺を心配した。
「ああ。ちょっと覗くだけだし」
俺は木刀を持ち、先へ進んだ。
振り返ると、三人とも不安気な表情を浮かべていた。
やがて洞窟の入口まで来た。
俺は少しだけ中を覗いた。
すると、たくさんのマネキンが積み重ねて置かれてあった。
なんだ・・あの数・・
ここはマネキン置き場なのか。
だとすると・・ラムダのアジトはここから近いってことか・・
俺は少しずつ中へ入ってみた。
どうやら人間はいないようだ。
俺はとりあえず三人のもとへ戻った。
「どうだった?」
蒼空が待ち兼ねたようにそう言った。
「びっくりだぞ。中にたくさんのマネキンが置かれてあったぞ」
「えっ」
「それって・・実験用のマネキンじゃないのかな」
飯島が訊いた。
「どうなんだろうな。とにかく積み重ねられてたよ。で、人間はいなかったぞ」
「でも・・また来るんじゃないの・・」
蒼空が言った。
「そうかもだけど、奥の方もあったし、隠れることも可能だと思うぞ」
「行ってみようよ」
飯島が言った。
「ええ・・僕、怖いよ」
田地は消極的だった。
「ダーメ!」
飯島は田地の腕を引っ張り、無理やり歩いた。
「飯島くん!」
「みんな怖いんだよ。きみだけじゃないんだ。足手まといになるな」
そう言われた田地は、黙って歩くしかなかった。
「蒼空、俺たちも行こう」
「うん」
やがて洞窟に入り、三人はマネキンの多さに驚いていた。
「これだけの数だと・・さすがに不気味だよね」
蒼空が怯えていた。
「しかし・・実験用にしては、使い古したというか・・粗雑に扱ってる感じがするね」
飯島が言った。
「失敗したやつとか?」
俺がそう言うと、田地が「気持ち悪いよ~!」と、また大声を出した。
そして俺たちは、ろうそくをつけ、奥へ進んだ。
「また・・岩が落ちて入り口が塞がれたりするんじゃないの・・」
そこで田地の足が止まった。
「それはないね」
飯島が言った。
「どうして?」
「ここが塞がれば、マネキンを使えなくなるだろ」
「これ、廃棄処分なんじゃないの」
「それはどうかな。これだけ生産できる技術があるんだから、再利用だって可能だよ」
「え・・」
「塞ぐつもりなら、そもそもここへ置かないだろう」
「そ・・そっか・・」
「さっ、先へ進もう」
飯島って、やっぱり頭がいいな。
考えてみれば確かにそうだ。
廃棄処分なら、ラムダの工場で出来るはずだ。
わざわざ、ここへ持ってくる意味がない。
俺は飯島の推理を信じた。




