二十二、田地の泣きごと
俺たちは野ウサギの肉や果物を与えてもらい、やっとお腹が膨れて満足していた。
女性は日本人で、名前はラムダ京子と言った。
それと、この島で住んでいるラムダ一族は、全員日本人らしい。
いわばこの島が、日本支部のような場所とのことだった。
それと京子は、島を脱出するために、イカダを造りたいと頼んできた。
俺たちは当然、協力することにした。
それまでは、この家で寝泊まりさせてもらうことが決まった。
「やっぱり田地くんを連れて来ようよ」
京子は水汲みに出かけ、一息ついたところで、蒼空が言った。
「そうだな。助けてやらないとな」
俺が言った。
飯島もそれに賛成した。
「それと、狩りや水汲みも、手伝った方がいいね」
飯島がそう言った。
「当然だな。んじゃ、まずは田地を連れて来よう」
そして俺たちは家を出て、浜へ向かった。
その際、京子が護身用として拵えていた木刀も持った。
俺たちは来た道を走って駆け抜け、やがて浜へ着いた。
すると家は既に倒壊していた。
「ちょ・・これ、どういうこと?」
蒼空が訊いた。
「どういうって・・。あいつ、出たんだろ」
「出たって、どこへ行ったのかな」
「まったく、どこまで俺たちに迷惑かければ気が済むんだ」
そこで俺たちは、大声で田地を呼んだ。
「田地~~~!どこにいるんだ~~!」
「田地くん~~!ここは危険だから出てきなよ!」
俺たちはそこらじゅうを探し回ったが、田地の姿はなかった。
「どうする?引き返す?」
飯島が訊いた。
「そうだな、引き返すしかないか」
俺がそう言い、来た道を引き返すことにした。
ガタンッ・・
倒壊した家辺りから、物音が聴こえた。
「えっ・・なにか聴こえなかった?」
蒼空が振り向いて言った。
「確かに聴こえたよね。あっ、もしかして田地じゃないの?」
飯島が言った。
「行ってみよう」
俺たちは家の傍まで行き、「田地!いるのか!」と呼びかけた。
ガタッ・・ガタガタ・・
音のするところへ行ってみると、太い腕が見えた。
「ああ~~!田地っ!」
「田地くん!」
「大変だ、下敷きになってる」
俺たちは急いで瓦礫を取り除いた。
すると田地が中から出てきた。
「う・・ううう・・」
田地は情けない声で、そう言った。
「田地!大丈夫か!」
俺がそう言うと「もう僕、死ぬんだね・・」と泣きごとを言った。
やがて瓦礫を全部取り払い、田地を救出した。
「どこかケガでもしてるんじゃないの?」
田地は血を流しているわけではなかった。
けれども無事ではないと思った蒼空が、そう言った。
「おい、田地。痛いところとかないのか」
俺が訊いた。
「うう・・お母さん・・」
「田地!しっかりしろよ!」
「痛みはないよ・・」
「えっ!マジか」
「打撲はあるけど、特に痛くないよ・・」
よかった・・
ケガなんてしたら、治療も出来ないし、とりあえず不幸中の幸いだ。
「お前、何で下敷きになったんだよ」
「僕さ・・一旦家を出たんだ。散歩しようと思って。それでおやつを忘れたことに気がついて戻ったんだ。そしたら突然、家が崩れてさ・・」
「そうだったのか・・」
そうか。
こいつは家を出たら倒壊することを知らなかった。
なのに戻ってしまったところ、最悪のタイミングで下敷きになったってことか。
「もう・・家もないしお母さんも死んじゃったよ・・」
「違う!田地。あれは母親なんかじゃない。マネキンだ。俺たち、ラムダって組織にはめられて、こんなことになってるんだぞ」
「ラムダ・・?なにそれ」
「俺だって詳しくは知らない。でもこのサバイバルはラムダ一族の陰謀なんだ。実験なんだぞ」
呆気に取られている田地に、俺たちは懇々と説明した。
「なんで・・どうしてなんだよぅ!僕がなにをしたって言うんだ。帰りたい、帰りたいよぉ~~!」
田地は泣き叫ぶだけで、現状を受け入れようとしなかった。
「田地、お前だけじゃないんだぞ。俺も蒼空も飯島も同じなんだぞ」
「嫌だ・・もう嫌だああ~~!うわあ~~ん、帰りたい、帰りたいよぉ~~!」
「田地くん・・」
蒼空が呆れていた。
バチーーン!
突然、飯島が田地に平手打ちを食らわした。
「なっ・・なにするんだよ!」
田地は手で頬を押さえた。
「いい加減にしろ!いつまでも子供みたいにわがままを言うんじゃない!死にたければ勝手に死ぬがいい!」
飯島は激怒し、田地を睨みつけた。
「なっ・・なんだよ・・」
「このっ!腰抜けのボンボンがっ!少しは成長しろ!」
「うう・・うわあ~~ん」
田地はひとしきり泣いた。
俺と蒼空はその様子を呆然と見るだけだった。
飯島は、俺たちに背を向けて肩を震わせていた。




