二十、新たな展開
「航太、朝よ。起きなさい」
え・・俺を呼んでる。
誰だ・・
俺はベッドの上で目を覚ました。
そこは俺の部屋だった。
え・・
なにっ・・
もしかして・・
そうか。
あれは全て夢だったのか・・
俺は起き上がり、夢でよかったと死ぬほど安堵した。
俺は早速、一階へ下りてみることにした。
ドアを開けると、まさしく見覚えのある俺の家だ。
よかった・・マジでよかった・・
それにしてもリアル過ぎる夢だったな・・
もう死んだかと思ったぞ。
「航太、起きたのね」
母親が背を向ける形で、キッチンで食事の支度をしていた。
「えっ・・」
母親には少し違和感があった。
そう、背の高さが違うのだ。
「お・・お母さん・・なのか・・?」
「なに言ってるのよ。ほら、早く座りなさい」
ギギギ・・
「母親」は振り向く時に、身体からきしむ音を発していた。
え・・
俺はそこで立ち止まった。
「ほら、あなたの好きなカレーよ」
なっ・・なんだ、こいつ!
母親でもないし、人間ですらないじゃないか!
そう、そいつはマネキンだったのだ。
「あははは!早く食べなさいよ!」
マネキンは大きく口を開き、狂ったように笑いだした。
「なっ・・お前、なんだよ!」
「あははは!」
マネキンは俺の方に向かってきた。
「来るな!来るんじゃない!」
俺は慌てて外へ飛び出した。
すると視界の中に、だだっ広い海の景色が飛び込んできた。
目の前は砂浜だった。
え・・
俺は後ろも振り向いてみた。
すると、山がそびえ立っていた。
ここは・・島なのか。
ちょっと待てよ・・
俺は海に投げ出され、やがて気を失った。
もう死んだと思っていた。
いや・・ここは死後の世界なのか・・
あっ!蒼空たちは・・どうした・・どうなってしまったんだ。
俺は砂浜まで走った。
「蒼空~~!飯島~~!田地~~!」
俺は何度も彼らの名を呼んだ。
俺って・・誰かに助けられたのか・・?
あのマネキン・・
でもどうして俺の家が、あそこにあるんだ。
振り向くと家は倒壊していた。
えっ・・どうなってる・・一体どうなってるんだ。
俺は考えがまとまらず、その場に座った。
「航太~~!航太ああ~~!」
そこに蒼空が走ってきた。
「蒼空っっ!」
俺は立ち上がり駆け寄った。
「航太、無事だったんだね!」
「蒼空、お前も無事だったんだな!」
「よかった・・よかった・・」
蒼空は泣いていた。
「蒼空、お前どこから来たんだ?」
「あっ、それなんだけど、僕、自分ちで寝てたんだよ。それで全ては夢だったんだと安心したんだ。でもね、お母さんがマネキンで「ご飯食べなさい」って迫って来たんだ」
「なにっ!俺もそうだぞ!」
「ええっ!」
「マネキンがカレー作ってて、それで狂ったように笑ってて」
「ぼ・・僕も同じだったよ!」
「なんなんだ・・これ。何が起こってる・・」
「ゲームが続いてるってこと・・?」
「そうとしか思えないな」
「だとしたら・・飯島くんや田地くんも無事なんじゃないの?」
「そうだな」
それから俺たちは、二人を探すことにした。
しばらく砂浜を歩いていると、飯島が頭をもたげて座っていた。
「飯島!飯島~~!」
俺が叫ぶと飯島は顔を上げて、こっちを見た。
「ああっ!き・・きみたち!」
飯島は立ち上がり、俺たちのもとへ走ってきた。
「きみたち、無事だったんだね!」
「ああ。飯島も無事でよかったな!」
「飯島くん、よかった!」
そこで飯島は、自宅やマネキンの話をしだした。
「俺たちもだよ。カレー作ってただろう。マネキン」
「そ・・そうなんだよ!」
「それで家を出ると、倒壊してなかったか」
「そうなのか!きみたちもそうだったのか」
俺たちは全く同じ体験をしていた。
「ということは、田地くんも同じだよね」
蒼空が言った。
「ここら辺りを探せばいるかも知れないな」
それから俺たちは、砂浜の近くを探し続けた。
「おおーーい!田地~~!」
「田地くん~~!」
田地を呼びながら歩いている時だった。
一軒の家を見つけた。
「あれって・・なんだかお金持ちそうな家だよね・・」
そこには三階建てで、洋風建築の大きい家が建っていた。
あきらかに、島に相応しくない建物だ。
「あれって、もしかして田地くんの家じゃないの」
蒼空が言った。
「でも壊れてないぞ」
「あっ。家が壊れたのは、僕たちが外に出てからだよね。ということは・・田地は中にいるんじゃないのかな」
飯島がそう言った。
確かにそうだ。
家を出たら倒壊していたもんな・・
「田地くん、なにやってるのかな・・」
「行ってみるか・・?」
俺がそう言うと、蒼空も飯島も戸惑っていた。
「でも助けないとダメだろ」
俺は家に近づいてみることにした。
「は・・入るの・・?」
蒼空が後ろで言った。
「とりあえず、覗いてみるか」
そして俺たちは、小窓から中を覗いてみた。
すると・・あろうことか、田地はダイニングの椅子に座ってカレーを食べていた。
「あいつ・・なにやってるんだよ・・」
「あり得ない・・マネキンが作ったカレーを・・」
飯島は呆れていた。
田地は水もがぶがぶ飲み、カレーをおかわりしていた。
「ゴックン・・」
蒼空の喉が鳴った。
「蒼空・・あんなもん食べたら、具合悪くなるぞ」
「だけど・・美味しそう」
「何が入ってるかわかったもんじゃない。それより田地をどうするかだ」
「ここで呼ぶしかないよね」
飯島が言った。
「よし」
俺たちは家から少し下がり、田地を呼んだ。
「田地~~!出て来い!」
何度か呼び続けると、やがて玄関のドアが開いて田地が出てきた。
「なんだよ~」
田地は呑気にスプーンを持ちながら、そう言った。
「お前、なに食ってるんだよ。早く出て来い」
俺がそう言うと、「はぁ?」と田地は呆れた風に言った。
「マネキンが作ったカレーなんて、食べちゃダメだよ」
「飯島くん、なに言ってるんだよ」
「それより、早く出て来た方がいいよ」
「あはははっ!きみたちバカじゃないの」
田地は大声で笑った。
「バカってなんだよ」
俺がそう言った。
「まあいいさ。それより僕は今日からここに住むから」
「はああ?お前、こんなのあり得ないぞ。カレーだって何が入ってるかわからないんだぞ!」
「食べ物はたくさんあるし、水どころかジュースだってあるし、ベッドもあるし、お母さんだっているし」
「お母さんって・・あんなのマネキンじゃないか!」
「マネキン?どこが?僕のお母さんだよ。心配して来てくれたんだって」
ダメだ・・こいつ、完全に洗脳されている。
原因は、あのカレーを食べたからか?




