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十七、決死隊




「どうだった!」


俺と蒼空が戻ると、飯島が直ぐに様子を訊ねてきた。


「いや、実は・・」


俺は見てきたことを全部説明した。

すると飯島は、「断崖絶壁・・」と言ったきり絶句していた。


「それって左へ行っちゃいけないの」


僅かながら気を取り戻していた田地が、そう訊いた。


「さっきも言ったけど、両方はダメなんだよ。行くと死んでしまうぞ」

「それってほんとなのかな・・」

「どういう意味だ」

「だって、断崖絶壁から下りられるはずもないし、一か八かで左へ行ってみるのもありなんじゃないの・・」

「そんなことできるか!あっという間に岩が崩れ落ちて、下敷きになってしまうぞ」

「そんなこと決まってないじゃん」

「これまで確実に岩が崩れ落ちて、俺たちは行き場を失って来たじゃないか。フェイクはあり得ないぞ」

「崖って・・どれくらいの高さなの・・?」


飯島が訊いた。


「かなり高かったぞ。30mくらいはあるんじゃないのか。な、蒼空」


俺は蒼空を見た。


「そうだね・・低くないことは確かだよ」

「30m・・」


飯島は顔面蒼白になっていた。


「飯島・・大丈夫か?」


俺は飯島の様子が、普通じゃないと悟った。


「あ・・うん。だ・・大丈夫だよ・・」

「え・・なに、お前、もしかして高所恐怖症なのか?」

「う・・うん・・」

「マジか・・」


これは大変だ・・

田地だけでも大変なのに、ここにきて飯島が高所恐怖症だったとは・・

自分だけでも下りられるかどうか自信がないのに、二人をどうやって下せばいいんだ。


「高い場所だと、どうなってしまうんだ?」


俺が飯島に訊いた。


「一歩も・・足がすくんで一歩も動けなくなるんだ・・」

「・・・」

「僕は・・無理だと思う・・」

「でも、ここにいても死ぬのを待つだけだぞ」

「そうなんだけど・・」

「下りることが出来れば、船に乗って脱出できるんだぞ」

「うん・・」

「あっ!そうだ」


蒼空が突然、叫んだ。


「まだ日があるから、ここで訓練しようよ、飯島くん!」

「訓練って・・どうするの?」

「木に登って下りる訓練だよ」

「え・・」


飯島は木を見上げていた。


「なにもしないよりは、マシでしょ?」

「そ・・そうだね・・」

「そうだ。俺たちは足腰を鍛えるんだ!」


俺が言った。


「俺たちも木登りや、腕立て伏せをやって、足腰を鍛えるんだよ」

「あ、それいいね」


蒼空が賛成し、「田地くんもやるんだよ」と言った。

こうして意見がまとまり、俺たちは早速、行動に移した。


飯島は腰が引けて不格好な「木登り」だったが、少しずつ上る高さを伸ばしていった。


「ひゃあ~~・・」


飯島は下を見て、震えていた。


「飯島、下を見るな。上だけ見てればいい!」

「ど・・どうやって下りれば・・」

「手でしっかり掴むんだ。枝でも幹でもいい、しっかり掴むことだけ考えろ!そして一歩ずつ足場を確認して、焦らずに下りるんだ」


蒼空と田地も木登りしては下りることを、何度も繰り返し行っていた。


「とにかく高さに慣れることだ!」


俺は下から飯島を励ました。

それから俺たちは、網を解いてロープを作った。

これを岩に括りつけ、崖を下りることにした。

俺たちは、最終日まで木登り、腕立て伏せ、ペットボトルをダンベル代わりにして腕力をつけていき、ランニングなども行っていった。


そしてとうとう最終日を迎えた。


「さてと、行くか」


俺が号令をかけた。

みんなは「うん」と頷き、覚悟を決めた。

そして奥へと進んだ時だった。


ガガガガ・・


また地鳴りだ。

俺たちはもう、大して驚きもしなかった。


ガガガ・・

ガガガガガ・・

ドッスーーン!


後ろを振り向くと、さっきまで居た場所が岩で塞がれてしまった。

すると辺りは真っ暗になり、飯島がすぐに懐中電灯をつけた。


「石竹くん、きみが先頭を行ってくれ」


飯島は俺に懐中電灯を渡した。


「わかった」


俺はそれを受け取り、先へと進み、やがて二手に分かれた道へ辿り着いた。


「そこ・・左じゃダメなのかな・・」


田地がまだそんなことを言った。


「ダメだ。右しかない」


俺は迷わず右の道へ入った。

そして更に緩やかな上り傾斜を進み、やがて崖に辿り着いた。


久しぶりに見る陽の光と海の景色に、飯島と田地は束の間の喜びを味わっていた。


「さて、ここだ」


俺は飯島と田地に、崖を確認するよう促した。

飯島はとてもじゃないが、立って見ることはできず、寝そべる形で頭だけ出していた。


「う・・うわあ~~・・」


飯島はもんどりうって、後方に転がってきた。


「飯島、しっかりしろ。大丈夫だから、な」


俺は飯島の肩に触れながら励ました。


「これ・・誰から下りるの・・」


田地が訊いた。

みんな顔を見合わせて戸惑っていた。


「最初は僕が行くよ」


蒼空が言った。


「蒼空・・それでいいのか」


俺が訊いた。


「僕が成功すれば、次の人が楽になるでしょ」

「そうか。よし、じゃ蒼空、頼んだぞ」


俺は蒼空を抱きしめた。


「蒼空、絶対に死ぬな。必ず下へ辿り着くんだぞ」

「わかってる。航太もきっと辿り着いてね、待ってるから」


そして田地も蒼空の手を握った。

飯島は、ただ茫然と蒼空を見ているだけだった。


「じゃ、行くね」


俺は岩にロープを括りつけ、外れないかを何度も確認した。

蒼空は身体にロープを巻き、こちら側を向いて、一歩ずつ崖を下りた。

最初に行くと先陣を切ったものの、蒼空の手は震えていた。


「蒼空!下を見るなよ!俺たちが道案内するから、それに従っていればいいからな!」


蒼空は俺を見て「うん」と頷いた。

そうだ・・一歩ずつでいいんだ。

焦るな・・焦るなよ・・


時折、足を踏み外し、その度に俺たちは肝を冷やした。


「蒼空!聞こえるか!あと少しだ!頑張れーーー!」


こうして約一時間かけて、蒼空は下りることに成功した。


「やったーーー!やったぞ、蒼空あああ~~!」


俺は思いっ切り手を振った。

蒼空も両手を広げて、合図していた。


「飯島、蒼空が成功したぞ!」


飯島は、蒼空が下りるのを見る勇気がなかった。


「そ・・そうなんだ・・」

「飯島くん、しっかりしなよ」


田地がそう言った。


「次は僕が行く」


続けて田地が言った。


「大丈夫か、田地」


俺が訊いた。


「僕さ、太ってるだろ。だからロープが切れないうちに行かなくちゃね」

「そ・・そうか・・」


そして田地はロープを身体に巻き、こちら側を向いて一歩ずつ下りて行った。


「飯島、見ろよ。あの田地が下りてるぞ。あの田地がだぞ」


俺はそう言って、飯島にも見るよう促した。


「そ・・そうだね・・」


飯島は恐る恐る、下を覗きこんだ。


「ほら見ろ、一歩ずつでいいんだ。飯島にもできるさ」

「う・・うん・・」

「田地~~!焦るなよ~~!」


そして田地も、無事に崖を下りることに成功した。


「飯島、次はお前だ」

「え・・」

「俺が最後に行く」

「・・・」

「お前を残していくと、きっとお前は下りることが出来ない」

「・・・」

「さっ、できるさ。頑張れ」


俺は飯島を立たせ、ロープを身体に巻いた。

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