十一、島の全体像
こうして俺たちは、水を確保、食べ物も少量ながらなんとかなった。
寝床もあり、火種も絶やすことがなかった。
そこで頭をよぎるのが、島からの脱出だ。
「昨日食べたヘビって、美味しかったね」
田地が珍しく、素直に物を言った。
「鶏のささ身?みたいだったよね」
蒼空が言った。
「弾力があって、結構噛み切れなかったよな」
俺がそう言うと、「でも足りないよ!」と田地がまた文句を言っていた。
「貝なんて、ぜんぜん足しにならないし!」
「うるさい」
そこで飯島が、また小声でささやくように言った。
「え・・」
田地は引いているようだ。
「それ以上言うと、今後一切、貴様には与えてやらんから、よく覚えておけ」
「・・・」
おいおい・・飯島。
なんか板について来たぞ。
俺はおかしくて、下を向いて笑った。
「なに笑ってるんだよ!」
「まだ言うか」
飯島は田地を睨んだ。
「いや・・ごめん」
田地にはまだ、メッセージのことを話していない。
しかし今の現状では、チームワークがとれないまま行動しなければならない。
「問題児」の田地には、言って聞かせなければ、いざという時、俺たちが困る。
「なあ、飯島」
俺は飯島から話すのが得策と考えた。
そこで俺は、飯島を外に連れ出した。
「なんだい」
「メッセージの事なんだけどさ、田地に話した方がいいと思うんだ」
「ああ・・まあね」
「あいつのせいで、俺たちが酷い目に遭ったり死んだりしたら、目も当てられないだろ」
「うん」
「そこで、飯島から田地に話してくれないかな」
「僕が?」
「さっきの調子でさ。きっと上手く行くと思うんだよ」
飯島は積極的ではなかったが、仕方なく受け入れた。
「田地」
飯島は戻ってすぐに口を開いた。
「なに・・」
「今から話すことを心して聞け」
「え・・なんだよ」
「実はな・・」
飯島の話を聞いた田地は、呆然としていた。
「どうやって・・どうやって島から出るんだよ!」
「それを我々が考えるのだ。その際、貴様は我々の提案や決断に逆らうことは許さん」
「許さんって・・」
「逆らったり、邪魔立てすることがあれば、その時点で我々は貴様を見殺しにするゆえ、しかと承知せよ」
「ええ・・そんなあ」
「約束せよ」
「え・・」
「約束せよと言うておる!」
「わ・・わかった・・約束するよ・・」
俺と蒼空は下を向いて笑っていた。
やがて飯島は、武器の製造に取り掛かり、棒の先をナイフで削りだした。
手先が器用なのか、見る見るうちに先端は鋭利な形状に仕上がっていった。
「器用なんだな」
俺がそう言うと「そうでもないよ」と返してきたが、まんざらでもなさそうだった。
「飯島くん、すごいよ。僕にも作ってくれる?」
蒼空が言った。
「うん、いいよ。じゃ、適当な棒を拾って来てね」
「僕のも拾ってきて!」
田地がそう言うと「自分で行け。それからお前は浜へ行き船を監視しろ」と直ぐに飯島に突っ込まれていた。
田地は言われるがまま、昨日と同様、浜へ向かった。
俺と蒼空は棒を拾うついでに、獲物を探しに行くことにした。
それにしても、ゲームってもう始まってるんだよな・・
けれども、なにもそれらしき兆候がない。
単に島から脱出するだけでいいのか。
いや・・脱出そのものが、そもそも困難なのだが。
「なあ、蒼空」
「なに?」
「ちょっと上の方まで行って、この島全体の大きさとか確かめないか」
「どういうこと?」
「全体が把握できれば、脱出の方法も考えられると思うんだよ」
「ああ・・確かにね」
「それと、ここからは見えないけど、裏の方だと他の島の存在とか確認できるかも知れないし」
「そうだね。よしっ、山に登ってみよう!」
そして俺たちは、道なき道を進み、徐々に山頂へ近づいて行った。
「これ・・マジで道って言えないよね」
俺たちは木々を掻き分けながら、時には転んだり躓いたりした。
やがて一時間ほど経ったときに、一軒の小屋を見つけた。
「え・・小屋がある。うそ・・嘘でしょ!」
蒼空は半ば興奮していた。
「おい・・マジかよ。ここって無人島じゃないのか」
「どうする・・入ってみる?」
洞窟より小屋の方がいいに決まっている。
中を確かめない手はないだろ。
「行ってみるか」
俺たちは小屋の前まで進んだ。
もう何年も誰も住んでいないのか、小屋というより廃屋だ。
扉も壊れかけている。
ギィィ・・
ノブを回して扉を開けた。
中から冷たい空気が流れてきた。
「誰かいますか・・」
俺は小声で言った。
当然、返事などない。
「入ってみる・・?」
俺は「うん」と頷き、二人で足を踏み入れた。
すると中には、大きな材木や縄、斧、のこぎりという種類のものが置かれていた。
「ここって、住居じゃなくて材木小屋みたいな感じ?」
蒼空が言った。
「これって、いいんじゃないか?」
「とういうと?」
「だってさ、これでイカダが造れるんじゃないか?」
「イカダかぁ・・。でもさ、どうやって運ぶの?」
「あ・・そっか」
「歩くのだけでも大変なのに、ましてや木を持ってなんてムリだよ」
「あ・・じゃあさ、とりあえず縄と斧とのこぎりは後で持って行こう」
「うん、それはいいね」
そして俺たちは小屋を出て、更に山頂へ向かった。
けれども頂上へ辿り着くことは、無理だった。
そこへ行くには崖を上らないといけないからだ。
そこで蒼空は、一本の木によじ登り、出来るだけ島の全体を確かめることにした。
「蒼空、どうだ?なにか見えるか」
「うーん、全体は見えないけど、ここはあまり大きくない島だよ」
「そっか。他の島は?」
「ないねぇ・・」
蒼空は木から下りてきた。
「なんか、360度海だったよ」
「マジか・・」
そして俺たちは小屋へ寄り、道具を抱えて洞窟に戻った。




