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記憶とリラの花を君に。  作者: 有里 詩月
第一章  孤独な少女
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第一話  予兆

毛布の中は外の雪も関係なく、暖かい。台所では、ママがニンジンを切る音が聞こえる。タタタタタタタタ、ザクッ、ザクッ。コンコン、パキャ。シャカシャカシャカ。きっと今夜はニンジンと卵の炒め物だ。その予想は当たっていたようで、ジュウジュウという音とともにおなかがなってしまいそうないいにおいがただよってくる。夕飯はあと5分ちょっとでできるだろう。そしてあとだいたい1分30秒後くらいでーー。

「ただいまぁ。外、すっごい寒かった!!明日は雪合戦できるかも!!」

予想よりも結構早くねぇねはいい知らせとともに帰ってきた。

「ほんと!?」

思わず毛布からはいだしてねぇねに飛びつく。

「うわっ!!もう、フェリカ。いきなり飛びついてこないでよ~。」

ねぇねの鼻は赤くて、トナカイさんみたい。へへ、と笑うとねぇねは仕方ないなぁ、って私の頭をなでた。

「あ、いいなぁ!ママもいれていれて~。」

ママも来て3人でぎゅうっと抱きしめあった。毛布よりも暖かくはないはずなのに、どうしてだか、すごく暖かかった。

 ずうっと抱きしめあっているとジュウジュウと今度はちょっぴりこげくさいにおいと音がした。

「お母さん!!火、火を消し忘れてるっ!!」

「あらいけない!!」

どうやら今夜は少し焦げた炒め物になりそうだ。バタバタとしていると

「ただいまぁ。」

とやや疲れたようなパパが帰ってきた。さっき、ねぇねにしたみたいにぎゅうっとパパに飛びつく。

「おかえい、パパ。」

といってふにゃっと笑う。そしたら倍の力で抱きしめられた。苦しい。

「いたいの、やめて!!」

っていったらあわててパパは放してくれた。

「あ、パパがフェリカいじめてる。だめだよ。」

「ねぇね!!」

素早くねぇねの後ろに隠れる。するとパパはすこししょげて

「うちの娘がつれないよ~。」

とママにこぼした。

「ママも娘たち抱きしめたいんだから、抜け駆けなんてさせません。さぁ、ごはんにしましょう。」

あっさりママはあしらってみんなで食卓を囲む。すこし焦げたニンジンの炒め物はそれでもおいしかった。

「ニンジンしりしり、おいしいねぇ。」

聞きなれない単語が私の口から洩れた。あれ?ニンジンしりしりってなんだっけ?ひとりで混乱しているとママが

「フェリカは物知りさんね。これは東の方の食べ物で、ニンジンしりしりっていうのよ。」

と教えてくれた。私がなんでその料理を知ってたのかは分からないけど、パパやねぇねも

「えらいね、すごいね!!」

ってほめてくれたから嬉しかった。すこしおっちょこちょいなママとしっかりもののねぇね、かっこいいパパが私は大好きだ。


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