エピローグ
十二月二十五日。クリスマス。
この日は、僕にとって、あまり喜ばしくない日でもある。今年は、滅多に降らない雪が降っていた。買い物を済ませた僕は、自分の住むアパートへ、帰る途中だった。体は寒さで震え、手は悴む。息を吐くたびに白い息が舞い上がり、寒さを増大させた。街中は、クリスマス一色で、それはもう、たくさんのカップルが、お互いの愛を確かめるかのように、手を繋ぎ、体を寄せ合っていた。
直斗でも良いから、体を寄せ合って、温かくなりたい。そんな直斗は彼女と、クリスマスパーティだって。生クリーム漬けにしてやろうか!
アパートに到着し、鍵を開け、自分の部屋に入る。
部屋は、外と同じように寒く、暖房をつけた。部屋が狭いこともあり、すぐに部屋の中は暖まった。現代の家電製品は素晴らしいね。最高だよ。
机の椅子に座り、早速、買ってきた物をとりだす。
“どたばた!美少女戦士Loveカーニバル(夏目美香編)”
パソコン用ゲームソフトだ。決してエロゲームではなく、実に健全なるRPGだ。
美少女戦士と力を合わせ、悪の組織をやっつけるのだ!というのが、このゲームの主旨だ。
夏目美香編だけじゃなく、この他にも、各ヒロイン毎にソフトが作られ、同時発売となった。だが、僕は、この夏目美香編だけで良い。だって、僕は夏目美香にしか、興味はないのだからね。いやぁ、とても待ち遠しかった。この日を、どれだけ楽しみにしていたことか。パッケージを眺める。そこには、夏目美香の格好良く、なんともセクシーなイラストが描かれてあった。それを見て、自然と笑みがこぼれてしまう。おっといけない、早速プレイしないとね。『ゲームは“して”なんぼ』これが、僕のモットーである。
パソコンの電源を入れた。静かに響く起動音。パソコンが立ち上がる時間を有効活用し、パッケージからソフトを取り出す。それは、もう慎重に。
パソコンが立ち上がるのを確認すると、CD-ROMを、パソコンに読み込ませた。
“一部、ダウンロードしますか?それとも、全てダウンロードしますか?”
という文字が、パソコンのモニターに現れた。解説しよう。一部ダウンロードというのは、セーブデータだけをパソコンに記憶させ、ゲームはCD-ROMで毎度読み込ませるというものだ。その分、パソコンにかかる負担は少なくなる。反対に、全てダウンロードというのは、ゲーム内容の全てをダウンロードさせることによって、CD-ROMで読み込ませなくても、すぐにゲームができる。だが、パソコンにかかる負担は大きい。
だが、僕は迷わず“全てダウンロード”にした。この寒い寒い冬休みを僕は、このゲームで乗り切るのだ。夏目美香と一緒に、冬を過ごす。僕と夏目美香の甘い時間だ。羨ましいだろ?
ゲーム音が流れ、早速、ゲームをプレイする。まずは、主人公の名前登録か。
“恭祐”
毎度の事ながら、ゲームの主人公の名前は、いつもこれにしている。自分の名前をつけた方が、感情移入しやすいからね。
戦闘スタイルや髪型、顔の形などを決める。自分の分身体を作るように、なるべく僕に近いものを選んでいく。戦闘スタイルは、もちろん素手さ。僕の拳に敵う奴は誰もいないんだぜ?そして、次に髪型や顔の形。格好良いパーツは選ばず、なるべく地味なパーツを選択していく。イケメンにしてしまうと、僕じゃなくなってしまうからね。
だいたいの設定が終わり、次の画面に進むと、今度は、ヒロインの名前を、登録する画面が現れた。初期設定では、“夏目美香”と入力されていた。もちろん、これで良い。夏目美香と、恭祐のハチャメチャバトルで、この寒い冬休みを乗り越えるのだ。
だが、僕は、知らず知らずのうちに、夏目美香という文字を消し、ある名前を打ち込んだ。
結構、長い名前だ。やっぱり、夏目美香の方が良かったかな……でも、なぜか、この名前の方が、しっくりとくる。なぜだかは、分からない。でも、これで良い。この名前でゲームを進めよう。
“ルイ・シュタインハルツ・マークベル”
これで、決まりだ。
この度は“この世は素晴らしき世界かな”を読んでいただき、誠にありがとうございます。本来ならば、25日の今日、全話投稿をしようと思ったのですが、想定していた以上に、早く書き上げることができまして、24日に投稿させていただきました。
恋愛小説としては、二作目。ちょっと変わった小説としては一作目となりました。とても勉強になりましたし、何より、とても楽しかったです。小説を書き上げた達成感というのは、やはり格別でした。
文法のことに関しては、まだまだ分からないことが、たくさんあり、読みづらかったり、ちょっと変だな……と、思ってしまう部分が、少なからずあったかと思います。それでも、最後まで読んでくれた読者の皆様。この場を借りて、心から感謝いたします。
今度、小説を書くときは、もっと読みやすく、テンポの良い作品に仕上げていきたいと思っておりますので、また読んでくださいね。約束ですよ?(笑
それでは、次回作まで。メリークリスマス。良いお年を。
本当に、ありがとう。