表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の怪盗夫婦。消えた財布はどこへいった!  作者: 久悠ふみ
第2章 柊と転生した者たち。(柊視点)
9/11

第2話 知らない者 知らせない者

お待たせいたしましたぁ♪

ではでは、柊大和編第二話、お楽しみくださいませ~

楓と入学式で出会った日より10年としばらくたった。


平和でのんびり、時に楓が起こすトラブルを解決しながら過ごしていた柊たち。

そんなある日、楓が1冊の雑誌、その特集ページを見せてきた。



『都会からは目立たない。高台ある田舎の絶景展望台に迫る!!』


柊大和個人としては、どちらでもよかったのであるが、楓が行きたいのならばと、ついていくことにしました。きびだんごはもらっていません。

入学式の時の睡魔にまた襲われてもいけないしね!

ちなみにあの時の睡魔は、逃げたままいまだに姿を現していない。


電車を乗り継ぐこと数時間。

街の明かりも遠ざかり、トンネルを抜けるとそこは別世界だった。


田舎ということで、田畑の広がる質素な民家がぽつぽつと立っているというイメージを持っていた大和であったのだが、トンネルの先にあったのは広々とした地、そしてそこを来た人たちに印象ずけさせようとするかのように植えられている、キレイで色とりどりの花たちだった。

さらに見渡すと、ロープウェイが周囲より隆起した高地に向けて走っており、その周囲には緑の色濃い木々。きっと秋には素晴らしい紅葉が見られることであろう。

広場に入って花畑を抜け、まるで花畑の保護者のように点在している木々の中に、ひっそりとガーデンテーブルが置かれていたので、そこでしばらく休むことにした。

長期休暇中の会社員たちが、ここでバーベキューでもするためのテーブルなのかもしれない。


「楓? ここまでほとんど休みなく来たし、荷物は見ておくからちょっとでも仮眠して置いたらどう??」

「おまえも疲れているだろ?俺はまだ大丈夫だしまだ進んでも…」

「大丈夫だよ。こういう遠足みたいなのは僕、結構慣れてるからね?」

「そっか…。じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。」

「そうしろそうしろ~。」


言うが早いかすぐさまうつぶせになる楓に苦笑していると、ほどなくして寝息が聞こえ始めた。

無事に眠ってくれたようだ。


魔法。

それはこの世界の住人にとっては馴染みがなく、聖霊の見えない彼らには使えない技術。

人間の気力を信管に、聖霊の魔力を火薬にして、混ぜ合わせることによって爆発させる。それが魔法。

この世界の出身でない僕はこの魔力と気力の両方を持ち合わせている代わりに、常人が持つ気力の量が半分しかない。

その魔力にしても、転生のさいに使ったきり大きな補充もできずに現在に至る。


「なぁ、ヤマトは何でこいつをそんなに大事にしてるんだ?」


唐突に聞いてきたのは転生の際より行動を共にしている聖霊(相棒)のミリア。土を司る下位聖霊だ。

下位聖霊とはひとつの属性しかあつかえない聖霊で、属性が増えるたびに位階が上がり、使える術式もハイスペル→デュアルスペル→ユニオンスペルへの順に進化していく。


「特に理由はないよ。あえて言うなら大事だからかな。」

「人間とは、げに難解な生き物じゃな。」

「まぁまぁ…。【我と誓いをくみし地の聖霊ミリアよ、気力を編みて彼の者へと防壁とならん!】」

「【誓いをここに、吾が魔力を汝の気力と同調せん!】」

「「【コンセントレーション!】」」

ヤマトの式句に応じて、ミリアが式を組み立てる。


コンセントレーション。

それは対象の周囲に1種の結界を張り、周囲より隔絶させる基本的な防御系のシングル魔法だ。


【見えなかったら困るんじゃないか?】

【抜かせ! 吾が見ておる!】

【【インビジリティ】】

寝ている楓のまわりを囲むかのように張られたコンセントレーションに重ねる形で、認識阻害魔法を使っておく。

念には念をいれてから、テーブルの周辺に何があるのかと散策を始めるヤマト達であった。


実はこのインビジリティの魔法にはひとつ欠点がある。

対象の相手が消えているわけではないので、万が一にでも現界との境界に触れられてしまうと結界が解除されてしまう。

というものだ。

それは術の対象者も例外ではなく、仮に楓が起きて魔法の範囲外に出ようものならキャンセルされてしまう。

なので本来はとても扱いにくいのであるが、キャンセルさせると術者にも伝わるので駆けつけやすくなる。だからヤマトはちょくちょく護衛対象であるヤマトに使うようにしていた。



僕が魔法を使えること、それを知って楓は怖がるかもしれない。

それはこの世界で唯一の人間の友達である楓を失ってしまうということである。

「だからせめて、君が行く先で迷わないようにこうして下調べをすること。それが騎士見習いでもあった僕の責であると思うんだ。許してくれ…。」


誰に聞かれているわけでもなく、そう言葉を残し、ひとり木々の中へと足を進める大和。


「人間とは、げに難解な生き物じゃな。」

そんなヤマトを追いかけるように、苦笑まじりにボソッと告げて、ミリアも契約者を追いかけるのであった。























近ければ近いほど、言いずらくなることってどうしても出てきてしまうんですよねぇ…。

早い段階で伝えられるのであれば、それに越したことはないんでしょうけど、そううまくいかないのが人の感情ってものです。

一般人と違い、魔力のある大和。

大和に魔力がなければ気付けたはずの最良の選択肢。

逆に魔力があるからこそ見えてくる選択肢。

この楓と大和、2人の見えるもの・見えないものがあるからこそ、彼らはここまでともに歩んでこられたのかもしれません。


そんな彼らが互いに隠しあう秘密…。

それを打ち明けあえる時、それがきっとこの物語の最期を締めてくれるものと思うこの時点でのセリカなのでした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックマーク・評価よろしくお願いします!

本当にありそうでなかった怖い話

上記連載作品も、どうぞよろしくお願いいたします♪

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ