第1話 柊はみた!そして思う。世界樹と睡魔への考察
この話より主人公交代です。
僕は柊大和、異世界【グンザン】の元騎士見習いで、今は転生者としてこの世界で過ごしています。
前世で、剣においては敵なしと、人の世では言われていました。
初陣で魔物に殺されるという無様をさらしてしまいましたが…。
転移の際、僕がもらったチート。
それは世界をわたる力です。僕の居た世界であるグンザン、そしてこの世界。
それは世界樹という1本の巨大な樹木より産み出されています。
まるで実のように…、というより実なんでしょうね。たくさんの枝に、枝よりたくさんの実が実っています。
その実は絵本になっていて、最後のページをむかえると樹より落ちます。
僕が死んだとき、大量の魔物が街を襲ってきました。
勇者という存在はおらず、初陣であった僕も死んでしまいました。
もしかするとグンザンももうあの樹より落ちてしまったのかもしれません。
世界をわたる力を持っている僕からは、このページを見てくださっている読者のみなさんの世界がよく見えています。
この世界樹、枝1本に実る世界は人物が共通していて、文明等がちがう、という感じになっています。
枝が変わればもちろん人物も変わるのですが…。
僕がいいたいのは、みなさんの世界と同じ枝にあるみなさんも見えるということです。
今の世界でパソコンを扱っている人が魔法をつかっていたり。
はたまた、プロレスラーの人が剣闘士になっていたり…。
中には性別の変わっている人、人外になっている人もいます。
ここまで来ると個体名だけでだれがだれやらわかりませんけれど…ね?
さて、話を戻します。
僕がはじめて楓と会った入学式、そこで彼は睡魔に襲われていました。
睡魔は夢と現実を渡り歩き、誘惑によって対象の思い出を消したり、書き換えたりすることができます。
普段は、世界樹から落ちた実を食べて暮らしています。
魔物のなかで唯一、世界の外へ出られるため、人間との交流の機会も多く、次第に彼らは知能をつけていきました。
知能があるため、中には人間と友好的な睡魔、そして対立する睡魔もいます。
入学式に参列している他の学生たちに、彼の耳元でささやく睡魔は見えていなかったようですが、魔力を保持している僕には丸見えです。
(まぁこの世界自体に魔力がないので使ったら補充もできず、僕ひとりでは身体能力や五感を上げるくらいしか使い道がないんですが…。)
とりあえず椅子を下から蹴って目を覚まして貰っておきました。校長の話の前と後で、起立して礼をするのですが寝ていた彼は周りから失笑されています。
まぁそのくらいの被害ですんだのでよしとしましょうか。
入学式が終わって、その日より、僕は楓に付き添う日々を送るようになりました。
あの日、彼を襲った睡魔を狩る。
前世において、僕を殺した魔物をやっつける力をつけるため。
それが、元騎士見習いであった僕の転生した理由でありチャンスだと信じて…。
さて、なぜ主人公が変わってしまったのでしょうか?