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君と僕との物語8

そんなこんなで放課後。

僕は彼女の部活が終わるのを図書室で待っていた。ほかに過ごせる場所がなかったからである。余談ではあるが、彼女は入学して1か月はいろんな部活からオファーがあった。そこそこ美人だし、運動神経いいし、勉強もできるし。僕が女性だったら、嫉妬してしまうだろう。

で彼女が結局選んだ部活はバレーボールだった。ブラスバンド部と悩んだみたいである。

以上。余談であった。

それにしても僕には待つという行為が苦手であるようだ。まったくもって。

やっぱり慣れないことをするものではないとも思った。本当に。

だから待つ時間がとても長く感じた。

なんとなく古典文学を手に取ってみたけれども活字を見ると文字の多さに頭が痛くなる。

そもそも想像性の欠如している僕には物語に引き込まれることなく、文字は文字できかないのであった。

そもそもがめんどくさがり屋であるから、想像に脳を使うことすらも、効率的な面倒な作業なのである。

まったくもって。そんな僕がガラにもなく、本を手にとったところで急に文学青年になるような科学反応を起こすわけでもない。

まあ、ここでこうして待っている時点で、ある意味科学反応を既に起こしてしまったのかもしれない。

とりあえず持ち込み禁止のケータイをこっそりひらく。

特にメールも入っているわけでもなし。そんななんともなしのけだるい時間を過ごした中、

「キンコーンカンコーン」

チャイムが鳴る。辺りも少し暗くなってきている。

町内放送で聞きなじみの「七つの子」のメロディーが流れる。それと同時に校内放送も流れる。

始まりの合図とともに、聞き覚えのある声が。

「下校の時間になりました。。用事のない方は速やかに下校してください」

速やかに下校したいものだが、あなたが、待っていなさいっていうから待っているんですよ。

というどうでもいいつっこみを入れたくもなったが、本人がまだ目の前にいないのだから、今ここで一人でツッコんだところで僕は単なる変質者でしかない。夜間のコンビニだったら近くに警察がいたら明らかに職務質問を受けるレベルだ。そしてしばらくまつと「お待たせ」声の主が現れた。

「待ちましたよ。そりゃあ」

レディに嫌みをいってしまう自分は情けないとつい思うのだが。

「じゃあいきましょうか」

「行くってどこに行くの」

彼女はイタズラにほほえんでこういった。

「ひ・み・つ」

校門をでるときには空はオレンジから深い紺色のグラデーションがかかっていた。そういえば空をこうマジマジと見上げたのは何年ぶりだろうか。

彼女だけが知っている行先に向かって歩みを進める。足取りは軽いような重いようななんだかよくわからなかった。


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