君と僕との物語7
それから僕たちはすぐに仲良くなった・・・と言いたいところだがそう簡単ではない。
なんといったって正真正銘の人見知りだからだ。
特に女子に対しての免疫はほとんど持ち合わせていない。あいにくのところ。
ダメな人間まっしぐらの人間が早々変わるわけではないのである。
中学の時と同様、相変わらず僕は帰宅部であった。僕には部活で汗を流して熱くなる青春物語は似合わないのである。なぜならば僕は人と接するのが苦手な人間だからだ。
人間というのは、本当にいろんな人間がいるものだ。僕のように陰のような人間もいれば、後ろの席の彼女のようにクラスの人気者で、男子の羨望も目でみられるような人間もいる。正直僕が席の後ろの方がいいのではないかと思ったりもする。
でもそんなこといってもすぐに席を変えてくれそうでもなさそうだ。この様子ではしばらく席替えはなさそうである。席替えのも段階がある。生徒からはちらほら不平不満があらわれだす。たいがいどんな席であろうと不満はでる。皆が満足する席なんてない。
目が悪いもしくは勉強好きの優等生は、前の席へ行きたがる。その逆もしくは僕みたいなタイプは後ろの席へ行きたがる。寒がりの人間は窓側を。暑がりの人は廊下側を希望する。
だから1ヶ月くらいたったら必然的に席替えの流れになるのだけれども。ここのクラスはなぜかそういう流れにはならなかった。不思議と。皆絶妙にこの席が好きなのか。それとも自己主張が苦手なのか。
そんなことを考えている5月初頭のあるけだるい5時間目のこと。
ツンツン。
背中に人差し指でつつく感触が。振り返ると彼女が、笑顔を浮かべた。こんな笑顔を向けられたことを他の男子が知ったら嫉妬されるだろう。
どうだ。うらやましいだろう。
しかし今はそんなことはともかくというところだ。
「何」
「部活入らないの」
でた。そのひとこと。いつかだれかがこのことを聞いてくるだろうなとは思ってはいたが、やっぱり彼女だった。なるべくならこの3年間何もふれられずにこの3年間を過ごしたかったが、そう簡単には世の中うまくはいかないか。
「めんどくさいから」
僕は嘘ついたりとりつくろうとすることなく、正直に言った。
というかそれ以外に理由はあるものならぜひとも教えてほしいものだ。ということで、正直にいったのだが、、、「嘘、そんなことはない」
君は一体何者なんだっていいたいけれども。
「きっと君は逃げているんだよ」
「はい?」
「人生というものの中で青春時代は終わるの。ほんの一瞬しかないのよ」
「え?何がいいたいの」
彼女は大きくため息をついた。僕のほうが大きくため息をつきたくなる。ここまで僕と正反対の考えの人が僕のすぐ後ろの席にいるなんて」
「ねえ、今日ひま?」
「ああ」
まあ、暇といえば暇なのだけれども。僕は帰宅部なので年中暇人みたいなものなのだけれども。
「じゃあ決まりね。部活が終わるまで待ってるね」
げっ!マジかよ。
「楽しみにしててね」
いったい何を楽しみにして待つんだと思いつつも、このときの僕はそんな彼女のわがままに乗ってみようとも思った。
僕にとってこれはフランス革命以来?の革命だった。
人のわがままを聴こうと思うだなんて。一体僕はどうしてしまったんだろう。
この僕が文句も言わずに人のいうことを聞くだなんて。
自分でも自分自身に驚いている。