君と僕との物語6
クスクスクス・・・。再び彼女が笑いでした。
「なにがそんなにおかしいんだ」
「だってあなた変わってるんだもん」
「なにが」
「すべてが」
「へ?」
なんじゃこのやりとりはと我ながら思うのだけれども。まあ確かに僕は人とは違う何かをもっていると思うし、たいしてほめられるような人間でもない。
成績だって下の下だし。性格もどちらかというとねじ曲がっている方だと思う。だが何も会って初日にそこまで笑わなくてもいいだろうとも思ってしまうのであった。
「ねえ君」
「君っていう名前じゃない。坂野だ」
「いちいち細かいことを気にすると嫌われるよ。坂野君はさあ」
「その一言がいちいちイラッとするんだよなあ」
「もう、話が進まないじゃない。」
「君が余計な一言いちいち言うからだろう。んでなんだ」
「ええっと・・・坂野君はさあ・・・ってあんたも私のことさっき、君っていったじゃない。お互い様よ」
「もういいからさあ、話進めて」
「もう・・・そうそう、坂野君ってさあ、・・・何を言おうとしたっけ」
「何?ど忘れしたの」
「あんたが余計なことをいうから話が進まないでど忘れさせたんじゃないの。あ~何を言おうとしたのかすっかり忘れちゃったじゃないの」
「俺のせいか」
「そうよ」
「あ~悪い悪い」
「なによ。その謝り方」
何で俺ここまで怒られなきゃいけないんだ。これ。と思いながらもここは彼女の流れに任した方が安パイな気もした。女性を敵に回すと怖いことくらい、この年になればわかる。女性は好きだけれども敵に回すと群となって攻撃する厄介な生き物だからだ。そんなことを思っている僕自身もどちらかというとひねくれた厄介者であるのだけれども。
「ねえねえ」
「何」
「何って何よ。いいから続けて」
「私まだ自己紹介してなかったよね」
「そうだけど」
「何それ。その反応」
「興味ないって感じ」
「いや、こういうときの反応の仕方を心得てないてえいうか」
「ぷっ・・・へんなの」
「変かな」
「変よ」
そこまで言われたらやっぱり変なのか。
でもこんなくだらない変なやりとりがなんだか無性に楽しかった。
「ところで自己紹介?」
「あっそうだった」
彼女はイタズラな笑みを浮かべた。
「桜井美緒です。よろしくね」
彼女の笑顔はとてもまぶしかった。
これが彼女と僕との出会いだった。きっとこの時初めて暗闇に光が差し込んだんだと思う。