君と僕との物語2
彼女との出会いは高校時代にさかのぼる。桜の花が満開であった。あたりは春の香りに包まれていた。春眠暁を覚えずとは昔の人はよくいったものである。そりゃあ眠くもなるさ。ていってもすべては言い訳になってしまうのだけれども。そう、僕はそんなことを悠長に言っている場合ではなかったのだ。
確かに実施を予定時間に目覚ましをセットしたはずなのだけれども。
入学式早々なんて日だがと言いたくなってしまう。なんで起してくれなかったんだよ!
その学園ドラマでよく言うセリフを言いたくなるのだがいう相手はとっくに共働きでいない。まったくもって調子のいい奴らなのだ。だが、そんなことを言っている暇はない。
急いで新調の制服を着がえる。こう、焦っている時でなかなか服は袖に入らない。もちろんワイシャツのボタンをとめるのもかなりおっくうになる。
ズボンと靴を履く。靴もかかとがなかなか入らない。外は春うららかな気持ちの良い天気とは裏腹に、僕の心はまるで嵐の中の大海原のようだった。電光石火のごとくママチャリにまたがり、ペダルを漕ぐ。久しぶりのチャリなもんだから、やけに漕ぎ出しが重い。
それか、入学までの春休みのグータラ生活のために、身体が鈍ってしまったのだろうか。
息もたえだえである。地球上の酸素ってこんなにうすかったっけ。心臓も今にも張り裂けそうなくらいバクバクいっている。
行きつくまでに果たして僕の心臓は持つだろうか。
学校についた。案の定、校門、そのほかありとあらゆる学校の外には一人もいなかった。
異様な静けさ。それもそのはず。
ふつうは全校生徒は皆各自の教室でホームルームをしているはずなのだから。ふつうでないのは僕の方で、本来この場所のこの時間は僕はここ(学校の外)にいるべきではないのであって、むしろ善良な生徒であれば、いや善良な生徒でなくてもふつうの生徒であれば、僕は本来いるべき教室の
自分に与えられているであろう席に着いて担当となるであろう、教師に出欠をとらえていなければならないはずなのだから。