君と僕との物語
僕は君を愛してる。
なのにこの思いは届かない。
一体何故なんだろう。
愛してるのに届かない。
これはある1人の看護師とその幼馴染の物語
あの日世界は光り輝いていた。だが今はもう、何もない。光なんてものはどこにも存在しない。あるのは絶望だけだ。
4月25日、彼女が死んだ。享年 22歳。短すぎる命だった。命というのは実に儚い。
そんなことをわかりすぎるくらいわかっていたはずなのに。天を仰げば君の笑顔がいつだってそこにあるような気がしていた。誰かを愛することはこんなにも痛くて苦しくて。僕は一体この先どこに向かえばいいのだろうか。
世界は鈍色よりもさらに暗い色につつまれていた。
心電図アラーム音とナースコールと人工呼吸器のアラームが頻繁になり続ける。
ナースステーションの隣の 200号室。ここが彼女がなくなった部屋であった。急性期病棟。
そこは生と死のはざまでもがき苦しんでる人たちを対象に僕が働いている。
そう。ここは彼女の最後の場所であると同時に僕の職場でもある。看護師。
それが僕の仕事である。尊い仕事なのかもしれない。だけど僕は時々この仕事が嫌になるときがある。もちろん仕事はとてもハードで忙しい。ただそんなことでいやになるというわけではない。問題は死が身近にあり過ぎてしまうということなのだ。当たり前のように人は生き、当たり前のように人は死んでいく。
当たり前っていったい何なんだろうか。
自分の中でいろいろなものがマヒしていく。そんな感じがしていた。そんなこと思いつつ、今日も僕は働く。彼女との記憶を置き去りにして。僕は当たり前のようにまた死と向き合って生きていくのだ。いろんな後悔を残しながら。