1個目
掲載日:2016/08/08
目を覚ますと、そこは見慣れた浴室ではなかった。とっさに右手首を見たが、傷などない手首だ。なぜだ?その疑問もすぐに消えた。ここはどこかのオフィスの会議室のようだ。どこだ?大きなガラス窓からは辺りを一望できたが、あのださい駅ビルや、糞みたいな学校は見えない。また目を覚ましてしまっただけでも不本意だが、訳のわからない場所にいるというのも気分が悪い。混乱してると、ノックの音がして俺より少し年上のスーツを着た女性が部屋に入ってきた。
「こんにちは。」どこか気だるげな声だ。
「はあ。ここはどこですかね?」
「『なんで僕が生きてるのか?』ってこと?」女性は単刀直入に訊いてきた。
「……」
「先に嬉しいお知らせ。ここはいわゆる『死後の世界』。あなたはきちんと死ねました」無意識に俺は安堵の溜息をついた。
「そして残念なお知らせ。あなたは次、相当不幸な人生が確定してるわ。」呼吸が止まった。どういう事だ?
「あなたは人生に自ら終止符を打った。だが、天界ではキャリーオーバー方式をとってるの」
「宝くじみたいだ」彼女は頷いた。
「あなたは、それまでの人生における善行を全く貯めてきませんでした。なのであなたのこれからの人生はいわゆる幸運というものがありません」彼女は淡々と言った。




