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異人~こととびと~  作者: 橋比呂コー
第1部 出会い~エンカウンター~ 第2章 能力の発現
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第20話 聖奈の恥辱な秘密

「顔つきが変わったね」

 聖奈が尻尾を伸ばして威嚇する。通じるかどうかは分からないがやるしかない。俺は地面を蹴って、再び空の世界に旅立った。尻尾もそれに追随する。前回は、呆気にとられて捕まったが、同じ手が通じると思うな。俺は、ジグザグに飛行ルートを変更し、尻尾を惑わしていく。

 相手は尻尾のコントロールに夢中なせいで、体自体は無防備だ。この一撃が決められれば十分に勝機はある。天井まで高度が達したところで半回転。聖奈の懐めがけ、急激に落下した。しかも、ただ落下しているのではない。右足を突き出し、さながら蹴りをぶち込もうとしているみたいな体勢になる。この攻撃はかの有名なあの必殺技と酷似していた。

「ライダーキックとは懐かしいことしてくれますね」

 所長さんはちょうどその世代だったらしく、手を叩いて喜んでいた。意図してあの改造人間の必殺技を出そうと思ったわけではない。落下の際の勢いを攻撃に転嫁する方法で思いついたのがこの飛び蹴りだったというわけだ。

 これには聖奈も動揺したようで、慌てて尻尾を戻す。防御される前に蹴りを叩き込めば勝てる。俺は拳を握りしめた。


 やがて、俺の蹴りが聖奈に到達する。かと思われたが、その直前で俺は横やりに殴られた。殴られたという表現はおかしいかもしれない。なにせ、俺を薙ぎ払ったのはまぎれもなく、尻尾だったのだ。

 体勢を崩された俺はそのまま不時着する。

「飛び蹴りとはやるわね。ご褒美に、お手本を披露してあげるわ」

 そういうや、聖奈は尻尾の反動を利用し、空高く舞い上がった。聖奈もまた、高度からの急速落下による攻撃を得意としているわけだ。俺がロープを掴んで半身を起こした時にはもう遅い。聖奈の飛び蹴りがすぐそこまで迫ってきたのだった。


 真正面からその一撃を目撃することになった俺。しかし、ここでよく考えてほしい。聖奈が着用しているのはタンクトップとミニスカートだ。別に問題がないって。いや、このミニスカートというのが肝だ。こんなのを穿いている状態で飛び蹴りなんか放ったらどうなるか。


 ましてや、真正面からそれを拝むことになった場合、その視線が捉えるものはあれしかない。


 攻撃を繰り出してからその重大な事実に気が付いた聖奈は顔を赤らめた。しかし、時すでに遅し。俺は意図せずとも眼福を賜うことになった。


 結局、俺は飛び蹴りの直撃を受けてノックダウンした。しかし、後悔はなかった。


 あの後、盛大に鼻血を噴出してしまったため、鼻にティッシュを詰め込み、ベンチに座らされている。おまけに、羽を抑えるために背中に冷却シートを貼っているというなんとも情けない姿だ。

「勝負には勝ったけど、大切なものを失った気がする」

 聖奈もまた落胆していた。あんなものを目撃したせいで、スカートの裾を抑える仕草がやたらと扇情的に思えて仕方ない。この鼻血は、絶対肉体的ダメージによるものだけじゃないと思う。

「あんた、どうしようもない変態ね。私の下着に飽き足らず、聖奈の下着まで覗くなんて」

「今のも完全な事故だから仕方ないだろ」

「マジショック。これだけは見られたくなかったのに」

 聖奈は涙目になっている。事故とはいえ、そこまで落ち込まれるとかなりの罪悪感がある。えっと、ここはフォローしたほうがいいな。

「あ、いや、でも、いいと思いますよ。なんというか、意外性があって。なかなか目にすることないじゃないですか、ピンクの紐パ……」

「皆までいうな!!」

 聖奈の正拳突きがクリーンヒットし、ティッシュが吹っ飛んだ。鼻の穴から血の滝が流れる。慌てて所長が鼻の穴にティッシュを突っ込んだ。大丈夫か、俺の鼻。

「断っておくけど、私は好きでこういうのを穿いてるんじゃないからな。この尻尾は、その、なんだ、お尻から生えてくるんだ」

 頼むからもじもじしながら言わないでくれ。ティッシュが紅に染まる。

「だから、そう、あんたと同じ理由だ。こういうのじゃないと、その、尻尾を出した時に、なんだな、えっと」

「パンツが破ける」

 脳天にとんでもない重圧を受けた。それは、冬子のチョップだった。

「聖奈、お仕置きしといたわよ」

「グッジョブ」

 二人でサムズアップしてんじゃねえ。


 尻尾が生えるって可愛らしいと思ったが、尻に湿布を貼らなくてはならないし、挙句の果てには普通のパンツが穿けないって、いろいろと苦労してるんだな。この後、所長が「そういえば、一時期ノーパンで生活することになるのかって悩んでましたよね」と失言したため、女性陣のお仕置きを受けることになった。所長、ご愁傷様です。


「それにしても、聖奈さんけっこう戦闘に詳しいんですね。戦闘中もいろいろとアドバイスしてくれましたし」

「いや、そうでもないわよ。ほとんどがボブさんの受けよりだし。異人の能力を受け継いで、戦いに参加するって決めた時に、ボブさんから戦いのイロハについて教えてもらったんだ」

 プロレスラー直伝だったのか。通りで説得力があると思った。

「ヘイ、ボーイ。鍛えたくなったらいつでもカモンね」

 ボブがウィンクする。よしよしじゃない方の意味で可愛がられそうなので遠慮しておきます。


 練習戦に負けはしたが、なんとなく俺自身の異人としての能力は分かった。とはいえ、全体的に身体能力が向上し、単に空が飛べるだけという地味すぎる代物だったが。アブノーマルならどうにか退治できるだろうってなんとも心ともない評価だ。冬子の炎と氷の能力や、聖奈の伸びる尻尾みたいな派手なやつがほしかったな。

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