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近鉄内部・八王子線 1

 近鉄内部・八王子線は三岐鉄道北勢線と同じく、現在は数少なくなった軌間762mmの所謂ナローゲージの路線である。この路線も近年乗客数が減少したことに加えて、昭和20年代製の車両の交換もあることから、運営する近鉄は2013年に廃止とBRTへの転換を四日市市に伝達。しかし四日市市の反発で、最終的に車両・設備の保有と運営を分離する上下分離式での存続が決定した。


 このため、2015年の春からは新たに発足する「四日市あすなろう鉄道」の路線となるため、近鉄としての内部・八王子線に乗れる時間は限られている。


 路線は内部線が四日市から内部までの5,7km。八王子線が内部線の日永駅から西日野駅までの1,3km。両線合わせてわずか7kmのミニ路線である。


 起点である四日市駅は、近鉄名古屋線と湯の山線が交わるジャンクションの駅であり、また四日市市の中心部でもある。


 かつて内部・八王子線はナロー・ゲージであった湯ノ山線と直通運転を行なっていたが、湯ノ山線は前身の三重交通から近鉄へ譲渡後に標準軌への改軌が行なわれ、内部・八王子線は孤立する形となった。


 現在の内部・八王子線は名古屋線と湯ノ山線の高架ホームの下にある地上の9・10番線より発着している。名古屋線のホームからは一端改札外に出て、再度9・10番線側の改札を通る必要があり、完全に分離されている。


 内部・八王子線のダイヤは平日のデータイムの場合、基本的に内部行きと西日野行きが交互に発車するダイヤとなっており、それぞれの30分ヘッドとなっている。このため、四日市から日永までの2駅だけではあるが、実質的に15分ヘッドとなっており、名古屋線や湯ノ山線よりも普通電車が多いという現象が生じている。


 使用される車両は先頭車両として260系電車と、制御車のク110系、それに挟まれたトレーラーのサ120系などとなっている。


 かつての内部・八王子線では北勢線と同じく、先頭の電車が数量のトレーラーを牽引し、終端駅で機回し線を使って電車を付け替えて運転する方法を採用していた。しかしこの方法は終端駅に機回し線と連結時の要員を必要とするなど面倒かつ、安全面でも総括制御出来ないなど問題が多かった。


 そのため、昭和50年代に車両の近代化が行なわれることとなり、動力車として260系が新造され、それに挟まるトレーラーには既存車両からの改造が行なわれた。またク110系もそのトレーラーに運転台を設置した改造車だ。


 このク110系とサ120系はいずれも種車が昭和20年代以前の製造である。これらの旧式化と置き換え費用の問題も、内部・八王子線の廃止理由の一つとされた。


 作者としては、同じナローゲージの北勢線と協力して新造車を造るべきだと思うのだが。


 さて、では四日市駅から内部・八王子線の乗ってみよう。


 主力である260系電車は、北勢線の270系と同じ15m級のナロー・ゲージとしては大型の車両となっている。車体構造も同型と似たものとなっているが、270系が両開き扉にロングシートであったのに対して、こちらは片開き固定クロスシートなっている。そのため、車内の印象は先頭部の料金箱と運賃表と合わせて、どことなくバスを思い起こさせる。


 この260系2両、もしくは中間にク110系などのトレーラーを挟んだ3両編成が基本的な編成となっている。これは北勢線と同じだが、一部の車両は北勢線の最古参車両よりも古い昭和20年代製なので、外観に古めかしさが付きまとう。


 車体色は少し前までは近鉄のマルーンレッドに扉部などにオレンジの配色をされていたが、現在は編成別にカラフルな単色となっている。


 また北勢線の車両は三岐鉄道移管後に車両の高速化に加えて床置き式のクーラーを設置するなどしているが、内部・八王子線はそのような工事をしていないため、未だに全車非冷房車となっている。なので、夏の時期に訪れる際は要注意だ。


 四日市駅を発車した電車は、小さな線路と大きな架線柱の不釣合いな設備の線路を走って行く。ナローゲージの車両は車体サイズと線路幅は小さいが、パンタグラフは通常車両と同じ程あるため、車体に比べての印象が大きく感じられるだろう。


 名古屋線の高架を離れて四日市の市街地を抜けて行くと、出発してからわずか1kmで最初の駅赤堀駅に到着する。1面1線の停留所タイプの駅であるが、平成10年までは有人駅であり、現在も駅舎が残っている。


 同じナローの北勢線と内部・八王子線の違いは総延長も然ることながら、駅間距離が内部・八王子線の場合かなり短いことである。北勢線が郊外線の印象が強いのに対して、内部・八王子線は市街地線と言う印象が強い。


 乗客も四日市駅を出る際にはそれなりに乗っており、鉄道としては少ないかもしれないがバスのそれに比しては多い感じだ。(作者が2013年10月に訪問した際の印象である)


 近鉄が当初バス転換ではなく、専用道路を要するBRTを勧めたのはこのあたりにあるかもしれない。

 

 2つ目の駅である日永駅は、内部線と八王子線の分岐駅である。この内内部線ホームは相対式に2面2線の交換可能駅となっている。一方八王子線は内部線の四日市方面ホームと同じホームの反対側にカーブしながら停車する。こちらは1面1線であるが、かつては2面2線であり使われなくなったホームが今も残る。


 ホームの配置は2方面に別れ、片側がカーブしているなど名鉄の吉良吉田駅に近い物がある。


 この駅から四日市側は交換可能な場所が無いので、電車は一度この駅で交換する。


 ではここから西日野行きの八王子線の電車に乗っていこう。日永駅を出た電車は同駅の右カーブを曲がりきると、そのまま直進して走る。この付近には田園もあるが、住宅も多い。


 そして、大して時間も掛からぬうちに終点の西日野駅に到着する。同駅は1面1線の停留所タイプの駅である。このわずか一区間が、八王子線全線となる。


 電車を降り、小さな駅舎を潜り一段高い築堤に上がると県道と天白川が走る。昭和49年まではこの築堤上に西日野駅が置かれており、線路はさらに県道沿いに1,7km延びていた。途中に停留所式の室山駅があり、そして終点には立派な駅舎を構えた伊勢八王子駅があった。


 八王子線の路線名は、この伊勢八王子から来ていた。しかし、昭和49年7月の集中豪雨で路線沿いを流れる天白川が決壊、八王子線全線で運転が休止された。


 既に旅客の減少が始まっており、近鉄は八王子線全線の廃止を検討したが、地元からの反対により復旧が困難な天白川沿いの区間、西日野~伊勢八王子の区間が昭和51年に廃止となった。この際に、西日野駅も築堤上から100m日永よりの一段低い現在位置に移転している。


 これまで多くの鉄道が、集中豪雨などの自然災害の前に甚大な損害を被り、復旧が出来ないままに廃止に追い込まれたが、八王子線もその例外ではなかった。


 現在路線跡は県道となり、その県道にはJR四日市駅等を結ぶ路線バスが走っている。


 八王子線の被害は、ちょうど天白川の護岸工事が始まった頃に起きた悲劇であった。もしこの工事がもう少し早ければ、八王子線は現在も伊勢八王子まで結ばれていたかもしれない。


 約40年後の現在、再び廃止の話がでたが、地元の熱意で再び存続へ向かったことが、せめてもの慰めかもしれない。


 では、旅を続けよう。乗ってきた列車で折り返し、再び日永駅へ向かっていこう。

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