表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

三岐鉄道北勢線 2

 8つ目の停車駅となる東員駅は、北勢線近代化事業の象徴とも言うべき駅である。ここにはかつて北大社や西桑名などに存在した乗務区や駅の集中管理センターと言った、北勢線の核となる機能が集中している。


 それだけではなく、それまで存在した北大社駅ならびに六把野駅を統合し、広大なパーク&ライド用駐車場やキス&ライドならびにバスの転回が可能な駅前ロータリーが逸早く設置されている。駅員も常駐している。


 またこの駅で時折車両交換もある。車両交換と言うのは、単線での行き違いではなく、列車番号は変わらないが、車両を乗り換えることだ。ここ以外でも、愛知環状鉄道などでよく見られる光景だ。


 東員駅を出てさらに西に向かうと、途中で北大社検車区の側を通り過ぎる。


 戦術したとおり、かつて北勢線には北大社駅が存在したが、その駅は名前の通りこの検車区の側に設置されていた。2面3線の設備を持つ駅であったが乗降客は少なく、そのため統廃合の対象となり駅は廃止となった。


 しかしながら、車庫はそのまま残り本線から検車区への分岐地点も北大社信号所となっている。ホームなどは全て姿を消し、線路も直線化されてしまったが、駅があったことがもっともわかり易い地点とも言える。


 東員からお隣の大泉駅までの距離は2,7kmと、私鉄線としてはかなり長い。これは間に、かつて北大社に加えて大泉東と言う駅があったためだ。大泉東も駅の統廃合で廃止された駅で、その代わりに設置されたのが大泉駅となっている。


 ただし、大泉駅も新設ではなくやはり阿下喜よりに存在した長宮駅を、西桑名よりに移転したと言う扱いになっている。


 利用者は大泉東と長宮駅を合算した利用者よりも大幅に増えたものの、現在は無人駅(開業直後は有人駅でその後勤務時間帯が段階的に短縮された)となっている。


 ただし駅構内には地元の野菜などを売る「ふれあいの駅うりぼう」があるので、興味のある方はここで下車するのもまた一興だ。


 東員の次の楚原駅は高校に近いため、平日の朝夕には多くの学生で賑わう。なおデータイムの列車の内半数はここ楚原の駅で折り返しとなる。


 2面2線の交換駅であり、駅前駐車場なども備えているが近鉄時代の面影をこの駅も強く残している。


 楚原を出ると、終点阿下喜までは後二つだ。乗客もまばらとなり、付近に広がる風景も田畑と山ばかりとなる。


 北勢線の写真や映像を撮る時は、この付近で撮影するといい画が撮れる。特に「めがね橋」と呼ばれる明智川拱橋と「ねじれ橋」と呼ばれる六把野井水拱橋は大正時代に架けられた歴史ある橋なので、時間に余裕があれば見に行き写真に収めるのもいいだろう。


 なお楚原から隣の麻生田までは、駅間距離が3,7kmもあるので、もし下車して写真を撮るのであれば、前準備をしっかりとしておこう。


 かつてこの区間には、明智川拱橋に近い位置に上笠田駅が存在したが、やはり近代化事業の中で廃止となっている。


 その昔には交換設備も備えて活気に溢れていた駅も、晩年は乗降客の大幅な減少に喘ぎ、あえない最後を遂げてしまった。


 北勢線は員弁川の北側を走る路線で、終点の阿下喜に近くなると直にその流れを見ることが出来る。そしてその対岸には三岐鉄道三岐線が走っている。


 三岐線と北勢線は長年に渡るライバル関係であったが、かつては桑名に乗り入れる北勢線の方が有利に立っている時代もあった。


 しかしながら三岐線はレール幅1067mmの通常鉄道であり、開業以来貨物輸送が好調であったことに加えて、近年は冷房付き車両の投入や列車の増発、旅客列車の近鉄冨田駅への直接乗り入れるによるホームタッチでの乗り換え可能などの施策を展開、様々な点で北勢線は遅れをとることとなった。


 もちろん、北勢線も近鉄時代には車両の新製などの近代化さくを行なってはいたが、特殊軌条鉄道ゆえの様々な制約などによって、劇的な改善を行なうことは出来ず、最終的に前経営者である近鉄に見捨てられてしまった。


 その後この北勢線を救い、運営を行っているのが三岐鉄道であるのだから、歴史とは皮肉なものである。しかもその三岐鉄道の元で、北勢線は急速に近代化が進んでいる。


 それまでの伝統や懐かしき風景は次々と消え去ってしまったが、北勢線は今当に生まれ変わりつつあるのだ。


 最後の中間駅である麻生田駅は森の中に佇むホーム一本だけの駅であるが、ここも駅舎の改築や駐車場の整備などが行なわれており、ローカル線の駅としては充実している。


 麻生田を発車すると、列車は林の中を抜けて行く。そして林を抜けると大きく左に弧を描きながら進む。付近には田園地帯が広がるが、舗装された真新しい道路が線路に平行し、スーパーを併設したビルが見えてくると、終点阿下喜駅に到着する。


 かつての阿下喜駅は、機回し線や転車台を有していたが1面1線の設備に、開業以来のレトロな木造駅舎を持つ駅であった。しかし現在は設備に関しては列車の増発に備えて1面2線に増強され、駅舎も自動改札機と自動券売機を備えた木造ながら近代的な駅に生まれ変わっている。


 また駅の南側には、かつて北勢線で活躍した220型226号が有志の手によって保存されている軽便鉄道博物館が設置されている。225号だけではなく、転車台や各種資料も保存されており、ミニ電車も運行されている。


 ボランティアによる運営のため、開館日は第一・第三日曜日のみとなっているため、訪問の際は要注意だ。なお第一日曜日であれば、三岐線の丹生川駅に併設されている貨物鉄道博物館の開館日でもあるので、両方見て回れるからお徳である。


 また入場は無料である。そして休館日でも外に置かれている226号車はいつでも見られるようになっている。すぐ隣が阿下喜駅のホームなので、三岐カラーの現用車両と並ぶ姿も見ることが出来る。新旧車両の対比をするのも中々に面白い。


 阿下喜駅からの列車はラッシュ時などは1時間あたり2~3本運行されるが、データイムは基本的に1時間1本なので、列車の待ち時間が長くなる。


 その時間を有効活用する方法としては前述した軽便鉄道博物館の訪問も一つの手だが、もう1つのおススメであるのが、駅の近くにある温泉施設「あじさいの里」でお風呂に入り休憩していくことだ。


 設備としては最近は良く見られる田舎の温泉施設であるが、広い湯船にささやかながら露天風呂もあるので、ここで一休みするのも悪くないだろう。また食事や買い物も出来るのも大きなメリットだ。


 なおこの阿下喜駅までの往復乗車券と「あじさいの里」の入場券がセットになったお得なセット乗車券も販売されているので、途中下車を考えず阿下喜駅への訪問だけを考えるなら、この切符がおススメだ。


 また阿下喜駅周辺にはスーパーや商店もあるので、ここで物資を調達することもできる。


 さあ、阿下喜駅での時間を満喫したら、選択肢は幾つかある。阿下喜駅から北勢線に乗り再び北勢線三昧の旅を続けることもできる。また阿下喜駅にはバスターミナルもあるので、本数と時間にさえ気をつければこちらに乗るのも一つの楽しみだ。


 また地図がいるが、三岐線の丹生川駅や伊勢治田駅まで歩いていくことも出来なくはない。ただし、田園地帯や雑木林近くを歩くので、防虫対策や夏であれば暑さ対策をしっかりしてから行こう。


 三岐鉄道北勢線について、私から言うのはここまで。後は皆さん自身で乗車して体験されると良いだろう。

 御意見・御感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ