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第7話 盗賊団討伐作戦 前編

ここから本編ストーリーが三分割されます。

まあ、一纏めにしたらとんでもない長さになってしまうので当たり前なんですが。

「…………」


「久しぶりですね。こういう光景を見るのは……」



零治達の視線の先にあるもの、それは城壁の下を慌ただしく動き回り、各装備品の数の点検や、各部隊の指揮系統の確認などをしてる完全武装の兵士達である。



「久しぶりかもしれんが、あっちの世界とは違う点が多すぎるだろ。主に装備品とか……」


「それは言わないお約束でしょう……」


「あんな鎧を着て走り回るのは大変でしょうね……」


「うん。絶対重いよね、アレ……」



奈々瑠と臥々瑠も城壁から身を乗り出して、下で慌ただしく動き回る兵士達を見ながら言う。

なぜ彼らはここまで慌ただしく動いているのか。理由は簡単だ。もうすぐ戦が始まるからに他ならない。とはいっても、国と国がぶつかる大規模な戦ではなく、周辺の村や街などを襲っている盗賊団の討伐である。ただの賊討伐とはいえど戦は戦だ。それも、これからこの大陸に覇を唱える華琳の第一歩となる戦なのだ。だからこそ、無様な戦いはできないという事である。



「そういえば……零治、あの計画書の話は憶えてますか?」


「あぁ? 確か、『城の治安維持向上草案』……だったか? あれがどうかしたのか?」


「この前、アレを二人で本案に仕上げましたよね? あの後すぐ華琳に計画書を渡してきたんですがね……」


「ああ」


「そのおかげで、私と貴方は街の警備隊に配属される事になりました。よかったですね~。役職が決まって」


「オレとお前が警備隊ねぇ……」



警備隊に配属という事は街の治安維持が主な仕事となるが、正直ガラじゃないと零治は言いたげだ。

元居た世界で彼は真逆の事をしていたのだからそう思うのも無理はないだろうが、自身の置かれてる状況を考えれば贅沢は言ってられないのもまた事実だし、華琳に拾われた身である以上は従う他ない。



「ちなみに私は副隊長、貴方が隊長ですよ。頑張ってくださいね、隊長殿」


「はいはい……。所で、オレとお前が警備隊に配属として、コイツらはどうするんだ?」



零治が奈々瑠達に視線を向ける。

自分達には役職が与えられたのに、奈々瑠と臥々瑠が手持ち無沙汰という事はまず考えられないだろう。他の部署に配置となるか、あるいは自分達と同じように警備隊の配属となるのか。零治としては願わくば同じ警備隊の配置であると考えたが、だが残念ながらそうはならなかった。



「彼女達には華琳の親衛隊を務めてもらうそうですよ」


「マジかよ……? ……二人とも聞いてたか?」


「はい。……正直不安です……別の意味で……」


「ん~? 何が不安なの~?」



奈々瑠は華琳が同性愛者だという事は初めて会った時に理解しているので表情に不安の影が差すが、精神年齢が幼い臥々瑠はまったく理解出来ていないので首を傾げる。

説明してみてもいいのだが、面倒だと判断した零治は適当にあしらっておく事にした。というか、説明しても臥々瑠の頭では理解できないというのが零治の見解だった。



「お前は気にしなくていい」


「ほえ?」


「まあ、流石の華琳も仕事中にそんな事はしないと思うが……二人とも身の危険を感じたら全力で逃げるんだぞ」


「はい……」


「ほえ? よく分かんないけど、は~い♪」


「はぁ……頭痛がしてきたぜ……」



「また貴方はそうやってすぐタバコに走る。まあ、気持ちは分かりますがね……では、私も……」



零治が頭を抱えながら気を紛らわす意味も兼ねてタバコを懐から取出し、火を点けて煙を吹かし始めたので、亜弥も苦笑しながらも零治に習い、彼同様に煙草を取り出して火を点け、揃って煙を吹かし始めた。

辺りにはタバコの紫煙が漂い、独特の甘い香りが広がっていく。零治も亜弥もフレーバータイプのタバコを愛煙しているのだが、二人のタバコは銘柄も香りも違うため、二つの香りが混ざり合い、人によっては吐き気を催すかもしれない甘ったるい香りがその場に煙と一緒に漂っていた。



「「フーー……」」


「……二人して何をしてるの」


「ん? あぁ、華琳か。何って……なぁ?」


「ええ。見ての通りタバコを吸ってるんですが?」


「貴方達……これから何をしに行くか分かってるんでしょうねぇ……?」


「分かってるさ。盗賊団の討伐だろ?」


「そうよ。なら零治、糧食の最終点検の帳簿は、ちゃんと受け取って来てるんでしょうね?」


「ああ、それならここに……ほら」



零治はコートの下から帳簿と思われる草色の表紙が当てられた紙束を華琳に手渡し、それを受け取った華琳はすぐにペラペラとページをめくり、ちゃんと計画通りの物なのかを確認し始める。



「フーー……」


「…………」



亜弥は華琳がタバコの臭いを気にすると思い、携帯灰皿にタバコを捨てたが、零治は相変わらず煙を吹かしている。

零治も喫煙者として最低限のマナーは守ってはいるが、亜弥と違いいささか周りへの配慮に欠ける部分がある。現に今も、零治が吹かしている煙は風に乗って華琳の方へと流れているのだ。その甘い独特の香りも一緒に。



「零治……」


「何だ?」


「その甘ったるい匂いはどうにかならないの……」


「無理だな。このタバコはそういう匂いがする物だからな」


「なら、今すぐ火を消しなさい。気になって集中できないわ」


「はいはい……」


「…………」


(まるでテストの採点をしてる教師みたいだな)



零治がタバコに火を消した事で、華琳は再び帳簿の確認を始めた。ページをめくり、ささっと眼だけを動かして書き記されている内容に眼を通し、すぐに次のページをめくる。それの繰り返しである。その一つ一つの挙動は確かに学校の教師を彷彿とさせる姿である。

一通り帳簿に眼を通した華琳だが、その表情は険しい物に変わっており、どうも何やら問題が発覚したようである。



「……秋蘭」


「はっ」


「この監督官というのは、一体何者なのかしら?」


「はい。先日、志願してきた新人です。仕事の手際が良かったので、今回の食糧調達を任せてみたのですが……何か問題でも?」


「ここに呼びなさい。大至急よ」


「はっ!」



華琳に命じられた秋蘭は監督官を呼びにダッと走り出した。

今の華琳は間違いなく怒っている。しかも個人的な理由でではなく、軍務に関する事での怒りなのだ。出来れば零治は今すぐにこの場を立ち去りたいと思っているが、自分達もこの戦に出撃する以上はそうもいかない。

仕方なく、零治はこの居心地の悪い空気に耐えながら秋蘭が戻って来るのをジッと待つのだった。


………


……



「…………遅いわね」


「遅いですなぁ……」


「すぐ戻ってくるだろ」



まだそれ程時間は経っていないが、華琳は相当苛立ってる様子である。

零治はさり気なく華琳からそっと距離を取った。利口な者なら今の華琳と進んで関わり合いたいとは思わないだろう。触らぬ神に祟り無し。君子危うきに近寄らずだ。



「ありゃ相当キてるな……」


「ええ……。正直居心地が悪くて堪りませんよ……」


「そうですね。何事も無ければいいんですが……」


「なにが~?」


「はぁ……。アンタの性格が時々羨ましく思うわ……」


「ほえ? 何の事~?」


「何でも無い。お前は良い子だなって事さ」


「ん~? よく分かんないけど、褒められてるの?」


「ああ」


「にへへ~♪」



臥々瑠は零治に褒められたと思い、その表情を綻ばせた。

零治に褒められる。いや、実際は褒めてないのだが。精神年齢の幼い臥々瑠にとって、零治に褒められることは何よりも嬉しい事なのだ。まあ、そのせいで上手く扱われてしまっているのも事実なのだが、それでも零治も彼女の事を大切にしている事に変わりは無かった。



「相変わらず扱いが上手いですね?」


「フッ……言ってろ」


「所で、零治……」


「何だよ?」


「貴方、その例の監督官には会ってるんですよね?」


「ああ。帳簿を受け取る時にな」


「どんな人でしたか?」


「…………」


「零治?」


「一言で言えば……生意気なクソガキだ……」


(これは……また何かあったみたいですねぇ……)



と、零治は亜弥の質問に仏頂面をして答えた。そして付き合いの長い亜弥は即座に理解した。零治がこういう表情をする時は、大抵なにか気に入らない事があった場合である。どうも華琳だけでなく、ここにも別に不安要素という名の火種が存在しているようだ。



「まっ、会って話してみれば分かるさ……」


「はぁ……」


「華琳様。連れて参りました」



そこへ監督官と思われる、茶髪の小柄の女の子を連れた秋蘭が戻って来た。

華琳は険しい表情のまま監督官に落ち着いた足取りで歩み寄り、静かに口を開いた。



「お前が食料の調達を?」


「はい。必要充分な量は、用意したつもりですが……何か問題でもありましたでしょうか?」


「必要充分って……どういうつもりかしら? 指定した量の半分しか準備できてないじゃない!」


「何……? 半分だと?」


「なるほど。そりゃ華琳が苛立つのも当然ですね……」


「このまま出撃したら、糧食不足で行き倒れになる所だったわ。そうなったら、貴方はどう責任を取るつもりかしら?」


「いえ。そうはならないはずです」


「何? ……どういう事?」


「理由は三つあります。お聞きいただけますか?」


「……説明なさい。納得のいく理由なら、許してあげてもいいでしょう」


「兄さん。納得がいかなかったらどうするんでしょうか?」


「ん? そりゃお前……コレだろ?」



零治は奈々瑠の疑問に答えるべく、右手を使って自分の首をかっ斬るジェスチャーをしてみせる。その際に、零治が楽しそうな表情をしていたのを亜弥は見逃さなかった。



「……ご納得いただけなければ、それは私の不能のいたす所。この場で我が首、刎ねていただいても結構でございます」


「……二言は無いぞ?」


「はっ。では、説明させていただきますが……まず一つ目。曹操様は慎重なお方故、必ずご自分の眼で糧食の最終確認をなさいます。そこで問題が有れば、こうして責任者を呼ぶはず。行き倒れにはなりません」


「ば……っ! 馬鹿にしてるの!? 春蘭!」


「はっ!」


「落ち着け、華琳。まだ二つ理由があるだろ。判断するのはそれを聞いてからでも遅くはないはずだ」


「音無の言う通りかと。それに華琳様、先程のお約束は……」


「……そうだったわね。で、次は何?」


「次に二つ目。糧食が少なければ身軽になり、輸送部隊の行軍速度も上がります。よって、討伐行全体にかかる時間は、大幅に短縮できるでしょう」



監督官のその説明を傍らで聞いていた春蘭はふと疑問に思う。彼女はこれまで、いくつもの戦を経験している。だからこそ疑問が浮かんだのだ。監督官の今の説明の内容に対して。



「ん……? なあ、秋蘭」


「どうした姉者。そんな難しい顔をして」


「行軍速度が早くなっても、移動する時間が短くなるだけではないのか? 討伐にかかる時間までは半分にはならない……よな?」


「ならないぞ」



そう。確かに荷物が少なければ当然その分移動速度は速くなる。だがそれはあくまで移動にかかる時間が短くなるだけで討伐にかかる時間まで短くなったりはしない。

討伐に時間がかかれば、当然その分糧食も必要になってくるから、先程の説明だけでは糧食を半分の量に減らした理由の説明にはならないだろう。



「良かった。私の頭が悪くなったのかと思ったぞ」


「そうか。良かったな、姉者」


「うむ」



自身の考えが間違ってないと知り、春蘭は安堵の笑みを浮かべながら満足げに頷くが、それを傍らで見ていた零治は、春蘭に呆れた視線を向けていた。

いくら大の大人も字が書けない者も居るような時代とはいえ、仮にも国に仕えている将がこんな単純な計算になぜ自信を持って言えないのか、それが疑問でならなかったのだ。



「……なんでアイツは、あんな単純な答えも自信を持って言えないんだ?」


「さあ?」


「……亜弥。お前、あのガキの考えが分かるか?」


「いえ。全く……」



現時点では監督官の説明は、糧食の量を半分に減らした理由こそ説明しているが、まだ核心には触れていなかった。となれば、最後の理由がその核心の部分という事なのだろう。

一体どのような答えを出すのか、その点には零治も亜弥も興味があり、事の成り行きを静かに見守った。



「まあいいわ。最後の理由、言ってみなさい」


「はっ。三つ目ですが……私の提案する作戦を採れば戦闘時間はさらに短くなるでしょう。よって、この糧食の量で充分だと判断いたしました」


「提案する作戦……!?」



監督官の出した三つ目の理由を耳にし、亜弥は驚きを露わにした。

戦での作戦を提案する。それは軍師である人間の役目。つまり、この監督官は己にそれだけの知識が備わっている事を自負している事を意味しているのだ。



「曹操様! どうかこの荀イクめを、曹操様を勝利に導く軍師として、麾下きかにお加えくださいませ!」



荀イクと名乗った少女はその場で跪き、頭を垂れ華琳に申し出る。

彼女、荀イクにとってはこれも計算の内なのだろう。より位の高い役職に短い時間を費やして重用してもらうなら、仕えるべき主君に直接進言するのが一番だが、それには実績が必要だ。確固たる実績が。荀イクは今回の糧食の件だけでなく、この戦を通してそれを証明するためにこのような事を仕組んだという事なのだろう。



「な……っ!?」


「何と……」


「このガキが……荀イクだと……!?」


「ほぉ。彼女が王佐の才と言われたあの……」


「…………」


「どうか! どうか! 曹操様!」



華琳は黙ったまま荀イクを見つめ、荀イクはなお力強く声を発しながら懇願を続ける。しばらくして、華琳は不敵な笑みを浮かべながら静かに口を開いた。



「……荀イク。貴方の真名は」


「桂花にございます」


「桂花。貴方……この曹操を試したわね?」


「はい」


「な……っ! 貴様、何をいけしゃあしゃあと……。華琳様! このような無礼な輩、即刻首を刎ねてしまいましょう!」


「貴方は黙っていなさい! 私の運命を決めていいのは、曹操様だけよ!」


「ぐ……! 貴様ぁ……!」



荀イクの台詞に対し、春蘭は怒りながら愛刀を抜刀し、今にも斬りかかろうとするが、彼女の言う事に間違いはないだろう。荀イクをどうするか、それを決めるのは華琳なのだ。



「やめろ春蘭。気持ちは分かるが、ここは我慢しろ」


「ぐぅぅ……」


「桂花。軍師としての経験は?」


「はっ。ここに来るまでは、南皮で軍師をしておりました」


「……そう」


「ん? 秋蘭。南皮とは……」


「南皮は袁紹の本拠地だ。袁紹というのは、華琳様とは昔からの腐れ縁でな……」


「腐れ縁……? 亜弥、曹操と袁紹ってそんな関係だったか?」


「どうでしょう。学友だったという話は聞いた事がありますが……この世界だと色々と事情が違うのかもしれませんね」


「……だろうな」



零治はそう短く答え、宙を睨みながら考えてみる。

何しろ相手は、あの華琳こと曹操の腐れ縁なのだ。興味心が湧くのも当然かもしれないが、この世界の袁紹がどういった人物か零治は知らないので、すぐに考えるのをやめ、華琳の方に視線を戻し会話に耳を傾ける。



「どうせアレの事だから、軍師の言葉など聞きはしなかったのでしょう。それに嫌気がさして、この辺りまで流れてきたのかしら?」


「……まさか。聞かぬ相手に説く事は、軍師の腕の見せ所。まして仕える主が天を取る器であるならば、そのために己が力を振るう事、何を惜しみ、ためらいましょうや」


「……ならばその力、私のために振るう事は惜しまないと?」


「一目見た瞬間、私の全てを捧げるお方と確信いたしました。もしご不要とあらば、この荀イク、生きてこの場を去る気はありませぬ。遠慮なく、この場でお切り捨てくださいませ!」


「…………」


「華琳様……」


「春蘭」


「はっ」



自らの得物でもあり、愛用してる大鎌、絶を傍らに控えている春蘭から受け取り、その刃を荀イクの首筋に突きつける。

傍から見ているとこの流れは華琳が荀イクの首を刎ねるようにしか見えない。しかし、今ここで彼女を処断すれば、彼女が考えているという作戦の実行も不可能になる。まあ、そうなった場合は糧食を予定通りの量に増やして出撃すれば済む話なのだが、現時点では華琳の陣営には突出した才を持つ軍師が一人も居ないのだ。そういう意味では荀イクをこの場で切り捨てるのは惜しいのではないかと秋蘭は考えていた。だからこそ、華琳を止めようと思い声を張り上げた。



「華琳様……っ!」


「零治……これは止めた方がいいのでは……?」


「決定権は華琳にある。オレ達が口をはさむ権利は無い……」


「桂花。私がこの世で尤も腹立たしく思う事。それは他人に試されるという事。……分かっているかしら?」


「はっ。そこを敢えて試させていただきました」


「そう……。ならば、こうする事も貴方の手の平の上という事よね……」



そう言うなり、華琳は振り上げた鎌を荀イクに目掛けて一気に振り下ろした。

そして、その場に漂う沈黙。一同は息をのみ荀イクに視線をやるが、荀イクは無傷のままその場に立っており、血は一滴も飛び散ってはいなかった。



「……寸止めですか」


「チッ!」


「ん?」


「…………」


(気のせいでしょうか? 今、零治が舌打ちをしたような気が……)


「当然でしょう。……けれど桂花。もし私が本当に振り下ろしていたら、どうするつもりだった?」


「それが天命と、受け入れておりました。天を取る器に看取られるなら、それを誇りこそすれ、恨む事などございませぬ」


「……嘘は嫌いよ。本当の事を言いなさい」


「曹操様のご気性からして、試されれば、必ず試し返すに違いないと思いましたので。避ける気など毛頭ありませんでした。……それに私は軍師であって武官ではありませぬ。あの状態から曹操様の一撃を防ぐ術は、そもそもありませんでした」


「そう……」



小さく呟いた華琳は、荀イクに突き付けていた大鎌をゆっくりと下ろし、突如声高らかに大笑いする。その表情は実に満足げな物であった。

あれだけ怒り心頭だったのに、今の姿は完全に真逆である。その姿を前にその場にいる全員が、華琳に怪訝な表情を向けていた。



「……ふふっ。あはははははははっ!」


「か、華琳様……っ!」


「最高よ、桂花。私を二度も試す度胸とその智謀、気に入ったわ。貴方の才、私が天下を取るために存分に遣わせてもらう事にする。いいわね?」


「はっ!」


「ならまずは、この討伐行を成功させてみせなさい。糧食は半分で良いと言ったのだから……もし不足したならその失態、身をもって償った貰うわよ?」


「御意!」


「零治、貴方にも期待させてもらうわ。貴方の武がどれ程のものなのか、この眼で確かめさせてもらうわよ?」


「フッ……好きにしな……」


「なら、そろそろ出撃するわよ。ついて来なさい」


「ああ……」



零治達は先を進む華琳達の後を追うように歩き出す。いよいよ出撃との時が来たのだ。戦闘自体は初めてではないが、この世界での本格的な戦闘はこれが初。ある意味では初陣になるという訳だ。だが、零治にとってそれは些細な事。戦場が変わろうが戦う世界が変わろうが、結局やる事は元居た世界でのソレと変わらないのだ。



「いや~……一時はどうなるかと思いましたよ」


「…………」


「どうしたんです、零治。さっきからずっと黙ったままですが?」


「いや……あのガキの首が刎ね飛ぶ所が見れなくて残念だ……っと思ってな」


「何サラリと物騒な事を言ってるんですか……。あぁ、だからさっき舌打ちをしたんですか?」


「ああ……。あのガキは好きになれん。生意気でムカつく……」


「ひょっとして、帳簿を受け取りに行った時の事を言ってるんですか? 一体何を言われたんですか?」


「口にしたくない。思い出すだけでも腹が立つからな……」



零治はそう言いながら、懐からタバコを取り出し火を点け、それをくわえたまま乱暴に煙を吹かす。内に抱えている怒りを紛らわすかのように。



「フーー……!」


(はぁ……。また、私の苦労が増えそうな気がする……)



嫌な予感を感じ取った亜弥は、その胸中で大きな溜め息を吐く。

そしてその予感は、この後の行軍の際に見事的中する事となるのだった。

作者「そういやさ」


零治「なんだよ?」


作者「以前はここで、お前らオレの事をバカ呼ばわりしてくれたよなぁ……」


亜弥「何を言ってるんですか。あれは貴方が言わせたんでしょうに」


奈々瑠「ええ。私達は何も悪くないですね」


臥々瑠「そうそう。全部アンタが悪いの」


作者「うわぁ……そういうセリフってリアルでもよく耳にするよなぁ。誰とかどことは言わんがよ」


零治「以前といえば、後ゲームの話が話題にもなったな」


亜弥「当時はキルゾーン3でしたね」


奈々瑠「最近は何をプレイしてるんです?」


作者「……おっぱいゲー」


臥々瑠「何それ? 新しいエロゲー?」


零治「閃乱カグラの事を言ってんのか……?」


作者「そう、それそれ」


亜弥「なら普通にタイトルを言えばいいでしょう。おっぱいゲーだけじゃ何の事か分からないでしょうに」


奈々瑠「それに、おっぱいゲーだけじゃ該当するタイトルが他にもあるのでは?」


作者「言われてみれば……確かに」

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