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ぷろろーぐ(前編)

 この章では、状況説明と登場人物の紹介で終わっています。なのに、前編、後編と長いです。途中で飽きてしまうかと思いますが、後編まで読んで頂けると嬉しいです。

 外気温28度。紫外線たっぷりの強い日差しを、完全シャットアウトするスパイ大作戦並みの、全身黒尽くめのあたし。黒のニット帽に大きなサングラスに、お茶目な豚鼻柄のマスク。変装は完璧だ。あたしは、建物の壁にピタッとへばりついた。

「おい、あの変な奴、警察へ通報したほうがいいんじゃないか?」

「でも、ここに強盗に入る奴はいないだろ。それに、ここに来る奴は、かなり変わってるのもいるからな」

「いいや、あいつは特別変だ。外国人じゃないのか? だったら銀行と間違えて、ここに来る間抜けな奴もいたって、不思議じゃない。

 だって見てみろ。今時全身黒尽くめなんて、日本人じゃねーだろ。しかも、もう夏になるってのに……。見るからに暑っ苦しいし、見るからに間が抜けてる」

「確かにな。あんな日本人、いねーよな」

 路上でたむろしている、見るからリストラ失業オヤジ達のヒソヒソ声は、あたしには聞こえない。

 あたしは今日一日、必死で求人情報を集めた。雑誌、ケータイ、貼り紙。でもそれらの中には、あたしの希望する条件をクリアする職場は見つからなかった。それで仕方なく、あたしは生まれて初めて職安ここに来た。

 初めてって、なんだかドキドキする。しかも、その建物に入って行く人も出て来る人も、皆オヤジばっかだ。あたしと同年代の青少年は全くと言っていい程見当たらない所か、おばちゃんさえもほとんどいない。あたしはその怪しげな様子に、隣の建物の壁に貼り付いたまま動けない。

 ダメダメ、ここで負けちゃ。曾祖父ちゃんからの、代々の下町育ちの江戸っ子の名がすたる。あたしは勇気を振り絞って、堂々と大手を振り建物の中に一歩踏み込んだ。

 その時、中からぞろぞろとオヤジ集団が出てきた。ひぇ~。満員電車からかたまりで降りてくる乗客の様な人波に、あたしはあえなく建物の外に押し戻され、道路に転んで尻餅を搗いた。弾みで帽子とサングラスが外れ、マスクもずれた。

 あたしは慌てて、道路に座ったまま帽子とサングラスを拾い、マスクも着け直した。決死の覚悟で、勇猛果敢にハローワークに挑んだのに、出鼻をくじかれたあたしは、舗道に両手を突き、つら過ぎる現実にガックリとうな垂れた。

「恥の多い生涯を送って来ました。By太宰治……」

 あたしは、誰かにポンポンと肩を叩かれた。

「ねぇちゃん、若いのに苦労してるんだね」

 作業着姿の白髪オヤジが、あたしの横にヤンキー座りして、哀れんだ目で見ていた。

 ねぇちゃんって……。バレてる。あたしの完璧な変装が……。走れよメロスっ。


 あたしは今や、現役バリバリのホームレス女子高生だ。イェ~イ!

 でも、あたしは親に家を追い出されたワケでも、家が跡形も無く倒壊したワケでもない。あたしの家族4人は、全員無駄に元気だ。

 とりあえずあたしは、今、あたしの幼馴染&親友の沙紀ちゃんにいる。沙紀ちゃんには、あたしが親と喧嘩して家出した、って事にしてある。

 それでも、いつまでも沙紀ちゃん家に居るわけには行かない。あたしは何とかして、今日中に住み込みの仕事を見つけて、住所不定という、現状打破を図りたかった。

 ハローワークで、セッセと求人票を調べているあたし。あたしの隣では、ヤクザ風オヤジが眉間にしわを寄せ楊枝を咥えて、鋭い目付きで求人票を睨んでいる。あたりを見回すと、室内には似た様なオヤジばっかだった。派手なシャツを着ているオヤジもいる。怪しいサングラス男も、顔に傷がある奴も、スキンヘッドの兄ちゃんに、派手で悪趣味なアクセサリーをジャラジャラと着けている奴、タトゥ兄ちゃん……。

 ハローワークって、実は広域指定暴力団組事務所の表の顔か? きっとリストラオヤジには、日雇いの原発処理かなんかの仕事を斡旋し、女子にはフーゾク店を紹介し、仲介手数料を取りピン撥ねしてるんだ。実は運びやなんかも、ここで手配してたりして。

 あたしはゴクリと生唾を呑み込み、なにやら不穏な空気に包まれているハローワークに、一抹の不安を感じた。

 考えてみたら、小学校や子ども会やPTAとかの社会見学で、職安に行った覚えがない。リストラされた、半ばアル中、薬中患者の様な失業者で溢れるこの組事務所ばしょに、夢と希望に満ちた児童生徒が、引率の明るい先生の声にはしゃぎながら、ぞろぞろ見学に来る図は想像に難い。あたしは溜め息を吐きながら、室内を見回した。

 引っ切り無しに怪しい男達が出入りする建物で、互いに怒鳴り合う失業オヤジに職員達。あたしのやる気はすっかり萎えた。


 あたしの家は、東京下町の小さな町工場まちこうばだった。曽祖父ちゃんの代からずっと続いている、家族経営の機械部品工場だ。元々、人情で商売している様な工場だったから、不況の煽りをマトモに喰らう。元々起業当時から景気のいい話は何一つ無く、建物も設備も創業時と殆ど変わっていない。現在の建築基準法は何一つクリアしてないバラック状態だ。しかも、車が通る度に地震が起こり、棚から小さなネジやバネなんかが落ちた。

 あたしの大木家家族は、その油臭い工場の二階に住んでいた。家電は、何十年も換えられるは事なく、家具に至っては、戦前から代々受け継がれている。一定のリズムを刻む雨漏り音や、ゆらぎを再現する隙間風は、子供の頃からのあたしの子守唄だ。程よい湿気の効いた押入れでは、モヤシ栽培の他に、多種多様のキノコが自生している。哀れ、トタン屋根に落ちた雀の運命は……。そこは、天然の焼肉鉄板だった。

 昔ながらの木枠の窓の薄いガラスには、色取り取りのビニールテープで、甲羅模様もしくは、くもの巣模様が美しく施されている。しかもそれらは、台風の度に増ていった。

 家に遊びに来る、あたしの友人曰いわく。

「展示物(建物・家具・家電)だけじゃなく、生活水準までも忠実に再現する、オールウェイズ昭和30年代体験テーマパーク!」

 てめーら、入場料取ってやる!

 たまにTVに映っている、被災者や生活保護世帯。彼等は、大木家より遥かにいい暮らしをしている様に見えのは、きっと気のせいだ。

 大木家には、連日の様に金融業者の取立て屋がやって来た。暇なのかやる事ないのか、税務署の奴等までもが、連日納税の催促の電話を掛けて寄こす。

 銀行口座の残高は、常にマイナス。とっくに期限を過ぎてるのに納品先からの入金は無く、両親は、金融業者にも税務署職員にも、待って下さいの一点張りだった。それに電気ガス水道は、3ヶ月毎に止まる。

 昨夜、我慢に我慢を重ねたあたしの父親が、ついに切れた。

「(有)大木機械部品工場は今を持って閉鎖する。大木家は解散。今直ぐ逃げる」

 突然の社長おとうさんの解散宣言。あたしは慌てて自分の荷物を纏め、幼馴染で親友の沙紀ちゃん家に転がり込んだ。

 極貧の大木家の現状を、子供の頃からよーく理解している沙紀。とは言え、さすがにその時あたしは、夜逃げだとは言えなかった。

 一夜明けて、あたしは夜逃げした元大木家の視察に行った。早速工場は立ち入り禁止のロープが張られ、差し押さえの札が貼ってあった。

 まるでドラマの様な出来事に、それはきっとあたしに対する神からの試練なのだと、自分に言い聞かせ、あたしは一人黄昏たそがれて、住み慣れた工場を後にした。


 あたしはパラパラと、忙しく求人票を捲った。

 そうだよ。ここで、オヤジ如きで怯んでる暇は無い。今日中に、なんとか住み込みの働き口を見付けなきゃ。

 先生に相談? やだよ。だってなんて言えばい? 今時夜逃げなんて、きっと信じてもらえない。冗談言うなと、怒られるのがオチだ。

 あたしは、頭の中で腕組をしている担任を蹴り出して、求人票の棚から何冊も冊子を手に取った。

 旅館、家政婦、管理人、新聞配達―。でも住み込みとなると、身元が確かである事、年齢制限が条件として付く。

 今のあたし……。住所不定、年齢17歳、現役高校3年生。多額の借金を抱える両親は現在無職で夜逃げ中、兄貴は芸人志望の大阪の大学生、借金塗れの大木家に関わりたくない親戚とは、音信不通……。と、就活条件は最悪だ。

 とりあえず、手当たり次第ケータイを掛けてみた。旅館、新聞配達、家政婦―。

 当然の事ながら玉砕した。でも可笑しいよ。だって求人票には、経験・年齢不問って書いてあるじゃんっ!

 こうなったら年齢を詐称して、キャバクラでも行こうかと思った。

 ……考えてみた。学校にバレたら即退学。夜のお仕事じゃ、大学入試の受験勉強も出来ない。何より、2日酔いで登校する訳にはいかない。

 はぁ~。もう溜め息しか出ないよ。

 って、ダメダメ! あたしは気合を入れ直して、又電話した。旅館、家政婦斡旋所等々。就職先は学校の近くが良かったが、こうなったら多少遠くても妥協する事にした。気を取り直して、また電話を掛け捲くった。

「いいですよ。一度家にいらして下さい。住み込んで頂ける方のほうが、こちらとしても助かります」

 それは、神の声だった。

「今迄来てくださった家政婦さんが、突然辞めてしまって、とても困っていたところなんです。今迄お世話になった家政婦紹介所では、今直ぐ担当出来る方がいないとかで……。他も当ってみたんですけど、見つからなくて。

 1日でも早く来て頂けると助かります。経験や年齢は問いません。一生懸命やってくださる方なら」

「ありがとうございます! では今から直ぐ、面接に伺います!」

 あたしは早速、そのお宅に面接に行く事にした。雇い主さんの気が変わらない内に。

 その家の場所を確認し、連絡先をメモる。あたしは直ぐに、ハローワークを飛び出した。

 おっと履歴書! あたしはハローワークに戻って、履歴書の用紙を探した。

 履歴書の書き方? そんなのいいから、用紙本体はどこ?

“履歴書の書き方”は何十枚も束になって置いてあるのに、肝心の履歴書の用紙本体はどこにも無い。世の中そんなに甘くはなかった。

「全く、何の為に血税払ってると思ってんだよ! 履歴書くらい置いとけ! 税金滞納してやる!」

 あたしは渋々コンビニで履歴書を買った。ちなみに、大木家は税金を払った事がない。


 その家は、都区内にしてはかなり大きなお屋敷だった。立派な屋敷が立ち並ぶ高級住宅街の中にあっても、歴史を感じさせるその屋敷はかなり目立つ。ちょっとした公園位は有りそうな広さの敷地に、美術館か結婚式場の様な洋館が建っていた。

 道路に面している車庫も大きくて立派で、トラックだって何台も入りそうだ。きっとこの車庫の中には、ベンツやポルシェやロールスロイスなんかの高級外車が、ズラリと並んでいる。

 あたしは門の前で姿勢を正し髪を手櫛で直し、身なりを整えた。さっきの駅のトイレで、とりあえず持ち歩いていたリクルートスーツに着替えた。でも足元までは気が回らず、白靴下に赤のバッシューが光っている。

 一呼吸して、あたしは“藤代ふじしろ”と書かれた表札の下の、インターフォンを押した。

 こんな大きなお屋敷だもん。きっといくつも防犯カメラが有るんだろうな。再度姿勢を正して、正面のカメラに向かって笑顔で応答を待った。

「はい」

 柔らかい、女性の声がした。

「私は、先程お電話した大木奈夢おおきなゆめです。早速面接に伺いました」

 あたしはインターフォンに向かって、元気良くはっきりと答えた。

「お待ちしていました。お入り下さい。門は閉めて来て下さいね」

 同時に門の鍵が、ガチャっと外れた。あたしは恐る恐る、大きくて重い鉄の門を押して中に入り、言われた通りに、そーっとその門を閉じた。

 ガチャン。閉じると直ぐに、門は自動的に施錠された。

 あたしは前を向いて、もう一度シャンと背筋を伸ばした。胸を張って一歩入った。

「わぁー」

 目の前に広がる光景に、あたしは思わず目をみはった。塀の外からは少ししか見えなかったが、屋敷は、歴史を感じさせる様な中世ヨーロッパ風の、レンガ造りの洋館だ。壁に蔦が這っている所をみると、明治時代の建築だろうか。

 立派なお屋敷。まるでどこかの教会か博物館みたい。……入場料とか、取られないよね。あたしは感動して、辺りをきょろきょろ見回した。

 屋敷との違和感の無い和洋折衷の庭には、一面に咲く初夏の花達が来客を歓迎している。バラにアヤメに、牡丹、石南花しゃくなげ。ピンクの絨毯の様な芝桜。

 咲き競う花達のいい香りが、辺りに漂っている。あたしは思わず大輪のバラに寄って手を伸ばし、目を閉じて思い切り花の匂いを嗅いだ。

 敷きレンガも素敵! あたしはしゃがんで、幾何学模様にいろどられた足元の敷きレンガに触ってみた。

 あたしは、ここに何しに来たのかも忘れて、同じ色のレンガを選び、鼻歌交じりでピョンピョンと飛んで歩いた。

 ふと見ると、脇に置き物の様な大きなセントバーナードが寝そべっている。その犬の横に、ログハウスの様なお洒落な1坪程の立派な離れが……。いや犬小屋が建っていた。犬小屋なのに、デッキも窓もある。元大木家の工場より、遥かに丈夫そうで豪華だ。

「あんた何様? たかが犬の癖に超エラソーじゃん! 家なんて、隙間風が吹いて雨水がしたたって、キノコが自生する位が丁度いいんだから」

 ムカついたあたしは、犬に向かって指を差し吼えた。犬はあたしを、全く相手にしない。耳すらも動かさず、ずっと寝そべったままだった。

 ふん。所詮犬じゃん。人間様には叶わないって。

 あたしは気を取り直し、再び姿勢を正した。太い柱が立つテラスの様な広い玄関に立ち、アンティーク調の大きくて重厚な玄関扉をノックした。

 コツンコツン。……返事はない。

 でもさっき、インターフォンでお入りなさいって言ったよね。あたしは、もう一度ノックした。でも中からの返事はない。

 あたしは大きなノブを回し、立派な両開きの扉を、片方だけそっと引っ張った。

 ギギ―……。何これ、超重っ! 犬や猫でも開けられそうな、大木家の薄い引き戸とはワケが違う。

「失礼しま~~す」

 あたしは、背中をかがめて小さな声で言い、恐る恐る重い扉を引いた。そーっと30センチ程開けたところで、中を窺った。

 中も広い。学校の来客用の玄関より遥かに広い。それに豪華な絨毯に調度品。まるでちょっとしたホテルのロビーだ。扉の隙間から中をキョロキョロ見回していると、突然あたしの視界に、フワフワと何かが入ってきた。

 ひえ~っ! 妖怪!

 年齢不詳の妖怪、いや女性が立っていた。彼女は、聖歌隊の衣装の様なレースがひらひら着いた白いブラウスに、光沢のある黒のセミロングのフレアスカートを穿いていた。赤毛に近い茶髪を引き上げて、後ろで一つにまとめている。

 でも深く刻まれた幾つもの皺は、伸び切ってはいない。細い目には、かなり頑張ったアイメイク。その目と細い眉は、釣り上がっている。吸血鬼の様に真っ赤で薄い口はへの字。澄ましてはいるが、首より遥かに白い顔は所々ひび割れて……。

 彼女は顎を上げ済まして、干からびた手で“ごきげんよう”のポーズを取っていた。大昔からここに住み着いている、婆やか?

 あたしはその女性と目が合った。怨念なのか呪詛なのか、あたしは玄関の外に立ったまま、金縛りに遭った。

 ギギギ―……。ガチャン。

 扉はあたしの手から離れて、あたしの目の前で静かに閉まった。閉まった瞬間、あたしの金縛りが解けた。

 あたしは、くるっと扉に背を向けて、今来た道を戻ろうとした。

「お入りなさい」

 中から、身の毛も弥立つ恐ろしい声がした。あたしには、その声を振り払う霊力はない。妖術に掛かって再び重い扉を開けた。

「し、失礼します。お、大木菜夢です」

 あたしは目を合わせないようにして、頭を下げた。

 あたし、もういいですから。仕事は諦めます。家政婦の話も無かった事にして下さい。言いたいのに、呪縛に掛かって頭を下げたまま口も動かせない。

「私は、この家のあるじの母親です。お入りなさい」

 結構です! 帰ります! ……言えない。

「はい」

 あたしは靴を脱ぎ、彼女の後に付いて、とぼとぼ歩いた。


 あたしは、広く明るいリビングに通された。丸々教室2部屋分は有る広さだ。古風で趣の有る概観とは異なり、部屋はモダンでお洒落だ。古い家具と新しい家具、洋と和が上手く調和している。

 天井は高く、白を基調にした部屋だった。窓も大きく、出窓になっている所には、並べられた鉢植えが、色とりどりの花を着けている。他にも、淡いピンクの小花が、窓辺やテーブルにちょこっと置いてあった。

 窓のレースのカーテンが、庭から入ってくる初夏の風に少し揺れている。飾り物ではないレンガの暖炉に、レースのクロスが掛かっていて、その裾も風に微かに揺れていた。

 バラだろうか、安っぽい芳香剤とは違い、優しい生花の香りがする。奥様が弾くのか娘がいるのか、リビングの隅には、これまたレースのカバーが掛けられた白いグランドピアノが、インテリアの様に置いてある。

 リビングの一角に、カウンターテーブルがあった。ここでお酒を飲む事もあるんだろう。フローリングと同じ色調の、洒落たカップボードは、イタリアかどこかのメーカーにでも、特注で作らせたのだろうか。サイズも雰囲気もその部屋にぴったりだった。

 カップボードの中には、輸入物のウィスキーやブランデーの他に、沢山の紅茶やコーヒー豆の缶が並べてある。一緒に並んでいるグラスや、カップとソーサーも、あたしにも分かる高級ブランド品だ。

 それでいて、この部屋にはこれ見よがしな成金趣味の装飾品は何も無い。派手なペルシャ絨毯も無い。ごてごてしたシャンデリアや大きな油彩画、壺等は一切無い。シンプルで上品で、心落ち着くリビングだった。

 まるで、ディズニーワールドのお姫様の部屋みたい! ディズニーオタクのあたしの目が輝いた。

「お母さん、座っていらして。私が家に居る時位は、私にお任せ下さい」

 ドアに背を向けてソファに座っていた女性が、立ち上がった。あたしは、部屋の内装に気を取られて、彼女には気が付かなかった。

「お邪魔します!」

 あたしは慌てて頭を下げた。

 ソファから立ち上がったその女性は、奥様だろうか。お母さんって、この妖婆が? あたしはてっきり、使用人頭の婆やかと思っていた。同時に、一生この妖姑に仕える奥様に、同情した。

 奥様は、妖姑とは対照的な和み系お嬢様だ。年は30半ば位だろうか。すらっと背が高く、セミロングのウェーブのある明るい髪に、白い肌、整った目鼻立ち。シンプルだけど、趣味のいいベージュのスーツを着こなして、薄化粧であってもまるで女優かモデルだ。本当に、白百合の花の様な方だと、あたしは見惚みとれてしまった。

「ご苦労様です。あなたが大木さん? ごめんなさいね、こんな場所で。応接室は今ちょっと散らかっていますので……。

 どうぞ、お座り下さい」

 門の所で、インターフォンから聞こえて来た声だ。あたしはその鈴の音の様な声に、うっとりした。彼女の口調も子守唄の様に優しい。でも……。

「いいえ、結構です。私、もうおいとましますから」

 あたしは、手と首を振った。

「あら、どうして? 面接にいらしたんじゃないの?」

「はい、そうですけど……」

 あたしは俯いて、ちらっと大奥様を見た。奥様は、あたしの様子に気が付いて、笑って答えた。

「気にせずどうぞ。ねぇお母さん」

 奥様は、あたしが又チラリと大奥様を見る様子に、クスッと笑った。

「どうぞ座って下さい。大木さんのお話を伺いたいわ」

「あ―……そうですか? では少し」

 でもあたしは、妖婆に喰われたくはないし、さっさと帰りたい。早く帰って就活したい。

 あたしは複雑な思いで、学校バッグから履歴書を取り出した。奥様に手渡し、一礼してソファにちょこっと腰を掛けた。

 奥様は、手渡されたあたしの履歴書を見て、目を丸くした。その履歴書を、絶句して見詰めている。

 名前・大木菜夢、年齢・17歳、職歴・都立高校3年、家族・父無職母無職兄大学生兼芸人、住所・不定、連絡先・携帯のみ。バカにしている様な履歴書だった。

「あの、奥様……。学校の内申書も必要だったでしょうか」

 黙り込んでいる奥様に、あたしはこわ々尋ねた。奥様が、突然噴き出した。

「……。ごめんなさい。笑っちゃって。奈夢さんっておっしゃるの? 素敵なお名前ね」

「え? あー、はい。でも皆からは、ナムって呼ばれてます。ばーちゃん達からは、ナムナムって、手を合わせてからかわれてます。お念仏みたいに」

 名前を褒められて嬉しくなり、つい元気良く大きな声で答えた。

「元気のいい方ね」

「はい。よく言われます。それがあたしの取り得ですから。それにあたしバスケ部だったから、 声が小さいと怒られるんです」

 あたしは、うるさそうにしている大奥様をチラッと見て、言い訳するように言った。

「それで」

 奥様は、少し口調を硬くした。

「大木さんが、門からここまで来る様子は、モニタで見させて頂きました」

 げっ……。血の気が引いた。

 遠足に来た園児の様に、騒ぐ様子を見られていたなんて。どこに監視カメラがあったんだろ。あたしが犬に向かって吠えたのも、聞いてたのかな……。

「大木さんって、明るくて素直な方ね。こんな履歴書、真面目に書ける人なんて、そうそういません。あなたを信用しましょう。お仕事、お願いしますね」

 あたしに何かを感じたのか、奥様はほぼ即答だった。

 可笑しい。自分で言うのもなんだけど、あたしってかなり怪しいと思う。押し売り行商人みたいだし、履歴書はギャグだし。

 このあたしが合格? あたしは受けてもいないセンター試験で、高得点を得た気分だった。

「ところで、どうして高校生のあなたが住み込みなの? ご両親はご承知?」

 奥様の口調は優しいけれど、目は厳しい。あたしは一瞬、胡散うさん臭い言い訳が頭を過ぎったが、きっと直ぐにばれる。あたしは正直に話す事にした。

「両親には、未だ話をしてません。親に余計な心配掛けたくはないので、決まってから連絡するつもりでした。多分両親は、今夜寝る場所にも苦労してる筈だから。今は自分の事が必死であたしの事なんか、忘れてると思います。

 済みません、冗談みたいな履歴書で。でもそこに書いてある事は、全部ホントなんです」

 信じるワケないよ。あたしは俯いて、小さな声でぼそぼそ喋った。

「菜夢さんのご両親、今どこかに出掛けているの? 泊まる宿、決まってないの?」

「あ―……。実はその……。私の家族は一家で夜逃げ、いえ家が破産しまして、それで住居兼工場が差し押さえられまして、それで―。今は両親も私も、ホームレスです。

 私は臨時で沙紀ちゃん、いえ友人の家にお世話になってて、両親は多分公園の駐車場で軽トラ生活かな。えっと……。

 昨日の話です」

 説明している内に、なんだか悲しくなって来た。厳しい現実に、俯くあたしの頭も益々下がって行く。

 バサッ。奥様は呆気にとられて、手にした履歴書を落とした。大奥様はお茶を噴き出して、激しく咽せた。涙を流して苦しんでいる。

「ゴホ、ゲホ……。あなた、私を……殺すつもり、ゲホッ」

 大奥様は咳き込み続け、なかなか止まらない。でもこんな事位で死ぬんだったら、とっくにこの世にはいないと思う。大体、妖怪なんだから千年は死にゃしない。

「今時、こんな作り話に騙される人はいません。吐くなら、もっと上手な嘘になさい」

 大奥様の、今にも火を噴きそうなゴジラの目……。ガオォォォ! って、そりゃそうだ。あたしだって、信じらんないよ。

「そうですよねぇ……。でも、嘘じゃないんです、悲しいけど。冗談みたいですよね。ホントに冗談だったら、どんなにいいか……。

 面接、ありがとうございました。こんな素敵なお屋敷に、タダで入れてもらえただけでよかったです。それでは失礼します」

 あたしは自分の荷物を持ち、無理矢理笑顔を作って立ち上がった。あたしは深々とお辞儀をして背を向けた。

 第1ラウンド(面接1件目)KO負け。でもいっか。妖婆に喰われなくて済んだし。あたしはドアに手を掛けた。

「倒産―。事態は、何も珍しい事ではないけれど、女子高生が夜逃げでホームレス……」

 奥様は下を向き、声を殺して笑っていた。肩が小刻みに揺れている。あたしは振り返ってにっこり笑った。

「はい、現役です!」

 もうどーでもいいわ。いくらでも笑って下さいませ。

「あら、笑っちゃってごめんなさい」

 奥様は、目元をハンカチで軽く押さえて、ナムに向き直った。

「何も問題ありません。大木さん、仕事宜しくお願いしますね」

「は?」

 大奥様も、驚いた顔で奥様を見ている。

「大木さんの言っている事は、嘘ではないんでしょう。でもとても本当だとも思えないけど」

 奥様はまた思い出して、笑いを堪えていた。あたしは首を傾げたまま、奥様をじーっと見た。

 奥様は笑いが一段落した所で、あたしに質問した。

「どうぞ座って」

「あ、はい」

 あたしはワケも分からず、再びソファにちょこっと腰を掛けた。

「大木さんは高校生よね? ここに記述いてある都立高校って夜学じゃないんでしょ? 学校はどうするおつもり?」

「はい、お仕事は早朝と帰宅後とお休みの日にまとめてさせて下さい。勿論お給料なんか要りません。あたしはここに住まわせてもらえば、それでいいんです。

 あ、でも高校の授業料とか教科書とか、あたしのお小遣い分位は、お願いしてもよろしいでしょうか? 一生懸命頑張りますから」

 ってあたし何言ってんだろ。だってあたしは、ここで妖婆に喰われる気なんかないし。さっさと次の就活したいのに。いつの間にか、採用が前提に話が進んでいる事に、あたしは内心焦っていた。

「あら、お給料はちゃんとお支払いします。気になさらないで。

 昼間は、屋敷ここにはお母さんしかいないから、大木さんが昼間学校へ行っても、何も問題はありません。それから、卒業後は就職?」

「いいえ、進学です。だから、受験勉強も頑張ってます」

「そう、大変ね。それで学校には、この事お知らせしなくちゃいけないかしら」

「いえ、内緒にして下さい。えーっと、学校は残り後9ヶ月、実質6ヶ月しか行きませんから」

 あたしは頭の中で、残りの月数を指折り数えた。

「それにしても、一体どんな夜逃げだったの?」

 奥様は、夜逃げに至った経緯を訊いた。どうして夜逃げする羽目になったのか、と。

「はい、それはこんな風に」

 あたしは立ち上がって“夜逃げ”の実況を始めた。

「両手に紙袋、背中に風呂敷、それで、両肩にはたすき掛けのショルダーバッグで、無理矢理自転車に乗って、沙紀ちゃん家に……」

 あれ? あたし、何か変な事を言ったのだろうか。あたしの身振り手振りに、奥様と大奥様が必死に笑いを堪えている。

 自転車を漕ぐ真似をしていたあたしは、エアペダルを漕ぐのを止めた。奥様と大奥様は、耐え切れなくて、肩を揺らし始めた。あたしは、それ以上の説明を止めた。

「お、大木さん……。大変だったんですね。お察しします」

「いいえぇ、ぜーんぜん。でもありがとうございます。あたし、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします」

 あたしは、大袈裟なお辞儀をした。妖婆から逃げる筈だったあたしは、いつの間にか藤代家ここで働く事になっていた。

「じゃぁ大木さん、今日からいらっしゃい。早い方がいいわよね? それと、大木さんって言い難いから、ナムさんでいい?」

「はい、そう呼んで頂く方が、あたし的にも反応し易いので」

「それではナムさん、これから宜しくお願いしますね」

 奥様はそう言って、手を差し出した。あたしの手は、体育会系の部活に励み、家事や工場こうばを手伝い、ゴツくて傷だらけで油臭い。それでもあたしは両手で、奥様の白く綺麗な手を握った。

「麗子さん、いいの? こんな役に立ちそうもない子」

 姑の発言権はかなり強力な筈だ。あたしは大奥様の発言に凍った。

「ええお母さん。私はナムさんが気に入りました。一生懸命頑張ってくれそうだもの」

 奥様は、あたしのゴツイ手を見てそう言った。

「そう? 麗子さんがよければ私は構いません。でも」

 大奥様はあたしを横目でジロリと見た。

「いつ迄持つかしらね」

 喰われる? ニヤリと笑う大奥様の鋭い目に、あたしの背筋が凍った。

「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします。ご期待に副える様、精一杯頑張らせて頂きます」

 あたしは立ち上がって、奥様の気が変わらない内に、奥様に、奥様に、大奥様ではなく奥様に、深々と礼をした。

 その時、インターフォンから声が聞こえた。

「理事長、お時間です。お迎えにあがりました」

 奥様は、壁掛け時計をチラッと見た。

「あらそうね。もうそんな時間だったわね」

 奥様は、手際よくあたしの履歴書とお茶を片付け、大きなビジネスバッグを手にした。

「ナムさん、私はこれから仕事で出掛けて来ます。夜には主人と戻りますから、それまでお義母さんにー、この方に指示を頂いてください。

 ごめんなさい、私自己紹介も未だだったわね。私は藤代麗子と申します。主人は聖稜医科大学の学長です。私はそこの理事長をしています。この方は、主人のお母さん、私のお姑さんです」

 玄関から声が届いた。

「理事長ー、お急ぎくださーい」

「はーい。今行きまーす。

 ナムさんごめんなさい。詳しい事は、お義母さんに聞いてください。それでは、宜しくお願いします」

 そう言って、奥様は慌ただしくリビングを出て行った。

 パタパタと廊下を急ぐ足音、ガチャンという玄関扉の重厚な音、門の閉まる音。車のエンジン音が去った後に、藤代家に訪れる静寂……。超気拙い。

 あたしは立ったまま、チラリと大奥様を見た。大奥様は何事も無かったかの様に、ティポットからカップにコポコポとお茶を注ぎ、小指を立ててカップを持ち上げた。

 あたしは、大奥様が気取ったポーズでお茶を召し上がるのを、柳の下の幽霊状態で見詰めていた。大奥様からのお言葉を、死刑判決を受ける罪人の如く、じっと待った。

 大奥様はちらりとナムを見て、優雅にティーカップを置いた。

「そんなところに立たれたら、目障りです。お座りなさい」

「あっ、はい。済みません」

 慌ててソファーの隅に、ちょこっと腰掛けた。大奥様からは一番遠い所に。

「ナムさんは家政婦として来たのだから、当然家事全般は出来ますよね?」

 大奥様は、あたしを疑っているようだ。当然だ。一般家庭の女子高生なら、家事は全く期待出来ないと思う。

 幸か不幸か、あたしん家が貧…イヤ、躾の厳しい家庭だったお陰で、ナムは勿論兄も家事は完璧だった。しかも、大木家の家事は手動だ。箒、束子たわし、雑巾、たらいの使い方は、あたしも兄貴も熟知している。

「はい、何でも任せて下さい。どーんと来いって!」

 派手に胸を叩いたら、又じろっと睨まれた。

 あたしは、俯き加減で大奥様をチラッと見た。多分この人に、あたしのキャリアは通じない。あの妖婆をどうやって攻略しようかと、大奥様をチラチラ伺いながら、あたしはあれこれ思案に暮れた。

「まぁいいでしょう。それ程自信がお有りなら、直ぐに仕事をして頂きます。いらっしゃい。家の中を案内します」

「……いえ、自信はありません」

 不敵な笑みを浮かべる大奥様に、あたしは小さくなった。

 大奥様が、すっと立ち上がったのを見て、あたしも慌てて立ち上がった。大奥様は、身長160センチのあたしより、背が高かった。さっきは気が付かなかったが、大奥様の年代にしてはかなりの長身だ。しかも背筋がピンと伸びている。

 大奥様って、大方世の中を上から眺めて来たんだろうな。物静かなゴジラの威圧感だった。

「あの。大奥様、ここはこのままで?」

 あたしは、テーブルの上のティーカップをちらっと見た。大奥様の指示を仰ぐ。

 大奥様の、あたしをじろっと睨むその目は “そのままにしておきなさい”と言っていた。

「はい」

 あたしは、先生に叱られた小学生の様に、大奥様の後を大人しく付いて歩いた。


「ナムさん、ここがあなたの部屋です」

 屋敷1階の、北西角に位置するその部屋は、押入れ付き4畳半の和室だった。大木家では、3畳の板の間が自分の部屋だったあたしの顔が、綻んだ。

「わぁ、畳! こんな素敵なお部屋、あたしに使わせて頂けるんですか?」

 大木家でのあたしの部屋は、工場の部品倉庫にもなっていたので、油に塗れた歯車やネジ等が部屋のそこら中に置いてあった。あたしの部屋を仕切っていたのは、古着を繋げて作ったカーテンだった。そんな自分の部屋を思い出して、目の前の和室にあたしは泣けるほど嬉しかった。

 大袈裟に喜ぶあたしに、大奥様はやっぱりじろっと睨んだ。

「済みません……」

 この人は、いつもこんな風に人を見るのだろうか。あたしは、神妙な面持ちで、大奥様の後ろに控えた。

 一階屋敷内を案内された。応接室、2間続きの床の間、客室、台所、ダイニング、バスルーム、トイレ、パウダールーム、ランドリールーム、食料庫。大奥様の部屋にお茶室迄ある。一階だけでも迷いそうだ。

 特に照明スイッチは全然分からない。あっちこっちに着いているスイッチを、上を見ながらチャカチャカと入り切りしていた。

 えへん! ……睨まれた。

 地下には、何百本もの洋酒が並ぶワインセラーと、防音が施してある音楽室みたいに広いオーディオルームがある。

 オーディオルームの壁には、大きなスクリーンとスピーカ。隅にはアップライトピアノも置いてあった。更に、ドラムやギター、キーボード、アンプ、ミキサーまである。学校の音楽室と言うよりは、テレビでよく見るレコーディングスタジオだ。旦那様の趣味なのだろうか。

 地下から上に戻る。さっきは気が付かなかったが、広い玄関ホールは3階まで吹き抜けだった。玄関横の幅の広い階段には、飾りの洒落しゃれた手摺りが付いていて、学校の階段のように広い踊り場もある。2階に上がると、そこのホールも広く、ソファセットや本棚、観葉植物があって、リビングになっていた。

 2階には、トイレ洗面室は勿論、バスルームもある。1階はヒノキの純和風の“お風呂”で、2階は大理石の“バスルーム”だ。

 あたしは、大木家を思い出した。梯子はしごの様な急勾配の細くて抜け落ちそうな狭い階段と、背を丸め足を折り畳んでやっと入れるプラスチックの風呂桶。風呂釜のガスは出が悪くて時々小爆発を起し、その都度風呂の煙突が吹き飛ぶんじゃないかと、肝を冷やしていた。

 それに比べたら……。

 でもこんな広い家は、無駄だらけだと思う。何人家族であっても、お風呂も一つで充分だ。我が家の方が遥かに経済的でエコで、掃除もメンテも楽だと思う。

 あたしは、明るくお洒落な照明器具にも、一々感動した。丸いガラス窓にステンドグラス、大理石の柱に、可愛い出窓、映画に出てきそうなバルコニー。

「わぁー! 素敵ー! 超可愛い!」

 大奥様は、派手なリアクションで感動しているナムとは対照的に、無表情で2階の部屋の説明を続けている。

 書斎、夫妻の部屋、長男の部屋、次男の部屋、ゲストルーム……。

 長男に次男? って事は、ここの家の子って男の子2人なんだ。

 又、吹き抜けの階段を上がって、今度は3階へ行く。

 眩しい! 上がった途端、輝く陽の光りがあたしを照らす。3階ホールは、一面ガラス張りのサンルームだった。初夏の日差しが、ホール一面を照らしている。開けてある窓からは、爽やかな初夏の風が流れていた。

 ここに洗濯物を干したら、きっとすぐ乾く。あたしは、洗濯ロープが掛けられそうな場所をチェックした。

 3階にも、トイレと洗面室とシャワールームがある。大奥様は、3男の部屋、4男の部屋、物置部屋、と説明してくれた。

 3男に4男? 藤代家には男の子が4人もいるの? 外には?

 もう部屋はお仕舞いらしい。分かった? と、目で訴えている大奥様を見て、とりあえず家族はそれだけだと、あたしは判断した。

 男の子4人かー。奥様の見た目年齢からして、きっと小学生か幼稚園だ。悪戯好きな超悪餓鬼集団が、あたしの頭をぎった。

 でもここの子供だから、きっと皆お坊ちゃまだ。エスカレータ式の、付属の幼稚園とか小学校とかに通っているんだろう。蝶ネクタイで、わがまま生意気眼鏡餓鬼共かも。名探偵“コマン”みたいな。

 でもあたしは、タダの一家政婦。家庭教師でも召使いでもないんだから、別にどんなワル餓鬼だって関係ないし、あたしは家事だけやってりゃいいのよ。

 あたしの頭の中で、4人束になって掛かってくるお坊ちゃまを、おりゃー! と一気に吹っ飛ばした。

 今度は大奥様に屋外を案内された。車庫に倉庫に“TARO ”と書かれた犬小屋。

「太郎の世話も、お願いします」

 ふーん。太郎って言うんだ、このやたらでかくてぐうたらセントバーナード。宜しくね。あたしは太郎に向かって、ウィンクした。

 …………。

 シカトかよ。犬の癖に、尻尾振って挨拶せんかい! あたしは無駄に豪華な犬小屋と、無愛想な犬にムカついた。

「ナムさんちょっと。……これはムラサキクンシランと言って」

 大奥様は、庭先に屈んで薄紫色の小さなを指差した。

「ナムさん、この花はご存知よね。いい香りでしょ」

 大奥様は、今度はクチナシの花を愛おしそうに眺めている。でもあたしはその花の名前を知らなかった。

「ナムさん、これは……」

 大奥様は花がお好きなのだろうか。次々と、庭の草木の説明をして下さる。あたしには、どれも大根やほうれん草の葉っぱにしか見えない。

 大きな桜の木には近付きたくない。きっと毛虫がいる。イチョウと松は判る。もみじとかえでは区別が付かない。他の木はさっぱり。

 池には定番通りの鯉が居る。小便小僧は見当たらない。

 大奥様の説明を受けながら、藤代家の庭をキョロキョロ見回しているあたしは、ガイドさんの後をくっ付いて歩く観光客だった。

 ここは避暑地の別荘だ。レンガ塀の向こうの、車の音や人の声が聞こえて来るも、まるで気にならない。木立の、風に揺れる音だけが耳に届く様な、穏やかな空間だった。


 一通り大奥様の説明を受けた後、あたしは自分の荷物を取りに、大急ぎで沙紀ちゃんの笠原家に戻った。

 お昼を過ぎたばかりだったので、沙紀は未だ学校から戻っていない。あたしは今日は、学校を休んでいた。

 こんな時間に汗だくで、1人だけ、しかもリクルートスーツ姿で戻ってたナムに、沙紀の母は不思議顔だった。が、沙紀の母に理由を説明すると長くなる。

「沙紀ちゃんのお母さん、一晩お世話になりました。ありがとうございました」

 あたしはそれだけ言って、救世主の家を飛び出した。鍋釜茶碗に、教科書参考書アルバム、夏冬衣装にその他ガラクタ。幾つもの袋に分け詰めて、昨晩ここに来た時同様、それらを全て身体にくくり付けた。

 あたしの笠原家滞在時間3分。何か訊きたそうな沙紀の母に、何も聞かないでオーラを発し、あたしは一礼してその場から離れた。

 カラーン。背負った布団袋から何か落ちる音がしたが、あたしは沙紀の母に呼び止められ振り向くのが怖くて、無視した。

 あたしは落し物に気が付かない振りをして、声を掛けられる前にその場から逃走した。

 沙紀の母は、ナムが落としていった片手鍋を拾って、呆然とした。まるで台風一過。

 昨夜遅く、突然家にやって来たナムは、娘の沙紀の小さい頃からの友達で、ずっと同じ学校に通っている。ナムが、突然家に泊まりに来る事はよくあるが、昨夜の彼女は顔も見えないほどの荷物を抱え、汗だくでやって来た。

 ナムとは、小さい頃から沙紀と一緒に動物園や遊園地に出かけたり、子供同士で互いの家に泊まりっこしていたので、家族同然のナムの事は良く知っている筈だった。

「ナムちゃんって、あんな子だったかしら?」

 沙紀の母は、片手鍋とナムの後姿を交互に見ながら、首を傾げた。


 あたしは、再びあのお屋敷を目指した。あの夜逃げ大荷物を再び担ぎ、自転車で、しかもリクルートスーツで。

 1時間後、あたしは汗だくになって藤代家に到着した。

 さぁ、これからあたしの第2の青春だーっ! て何か違う気もするけど、気にしない。自転車から降りて気合を入れて、門の前で仁王立ちした。

 この門の中で、あたしの青春が今始まる! 卒業までの9ヶ月間、大学入学までの10ヶ月間、頑張るぞーっ!

 エイエイオー! と勝ちどきを上げたいところだが、手にした荷物が重過ぎて、上がらなかった。

 あたしは門の前で立ちつくし、10分、20分、30分が経過した。屋敷の中にいるのは、妖婆一人だけかと思うと、門を叩く勇気が出ない。あたしはインターフォンを睨みながら、そのままずっと立っていた。

 額の汗が蒸発して、塩になった。紫外線が痛い。あたしは頭にハンカチを広げて乗っけた。

「あんた、誰?」

 突然、あたしの斜め後方から可愛い声がして振り返った。勢い良く後ろを向いたら、背負っていた大きな荷物が門にぶつかった。中は衣類なので双方損傷は無かったが、声を掛けた男の子の目は点になっている。その子は、ランドセルを背負った、小学5~6年位の男の子だった。

「あーっ! 悪質訪問セールス!」

 男の子に指を指されて、あたしはぶんぶんと首を激しく横に振った。

「ううん。全然違う! あたし、この家に用があるだけだから。決して怪しい人ではありません」

 統一性の全く無い荷物を、これでもかとまとい、リクルートスーツにスニーカー。盗難車の様な通学チャリに、髪はボサボサで汗だく。誰が見ても怪しい。

「ふーん。怪しい奴って、自分から怪しいなんて言わなくね?」

「そんな事無い。あたしは言うし。全然怪しくありません、って宣言する」

 あたしは、うんうんと強く頷いた。男の子は、呆れて口をあんぐり開けている。

「じゃその大荷物、何? 偽物売り付けに来たんじゃね? 幸福の壷とか」

「幸福の壷? そんなの持ってないよ。鍋ならあるけど。でもこの荷物は全部あたしの私物。大金積まれたって、一個も売れません!」

「100万!」

「売った!」

 小学生の餓鬼に、乗ってしまった。

「えへん!」

 あたしは咳払いで誤魔化した。

「ってさぁ、君小学生でしょ? こんなとこで遊んでないで、早く家に帰んな。不審者とか、怪しい奴に声掛けられるよ」

 男の子は、又口をあんぐり開けた。

「はぁ? 怪しい奴? あんたじゃん」

「あたしは怪しくないって言ったでしょ! 一緒にしないで」

 突っ込んでくれと、言わんばかりのボケを言った事に、あたしは気が付かない。あたしはその男の子から、大袈裟に顔を背けた。

 こんなことしてる場合じゃない。あたしは餓鬼には構わず、大きく息をして御屋敷の門に向き直った。

 姿勢を正し、インターホンを押そうと恐る恐る指を伸ばした。妖婆、いや大奥様の顔が目の前にチラついて、あたしの指先が若干震えている。

 これはきっと武者震いだ。決して怯んでいるワケじゃない。あたしは、キッと唇を引き結んだ。

 その時、まるでタイミングを計った様に、男の子が横で門に向かって叫んだ。

「ただいま~」

 次の瞬間、門の鍵が外れ、男の子は中に入った。

「じゃぁね」

 ガチャン。インターフォンに指を伸ばして固まっているナムを尻目に、男の子はさっさと門を閉め、中へ走って行く。男の子は途中で足を止め、振り返ってあたしに“あかんべー”をした。

「あ、ちょっと」

 男の子は、屋敷に消えて行った。

 赤んべー? あたし、あの子に何かした?

 蜂が、ナムの背中の荷物に止まった。風がサワサワと流れて若葉が一枚飛んで来て、ペタッとナムの顔にくっ付いた。

 じゃない! ここで固まってる場合じゃない。あたしは顔に着いた葉っぱを、ブンブンと首を振って落とした。

「ちょっと待ってー。君ーっ、ねぇ、ここ開けてよー。この門開けてー。ねぇってばーっ!」

 とっくに姿を消した男の子に向かって、あたしは叫び続けた。門を掴んでガシガシやった。あたしの声は、屋敷に空しく木霊するだけで、他の反応が帰って来る気配はない。

 あたしは門から手を離し、長い溜息を吐いた。

 あの子、ここの子だったんだ。……サイアク。もっと素敵な出会いを想像してたのに。こんな風に……。

 あたしは“素敵な出会い”を想像した。

『私は大木菜夢です。よろしくね』

 薔薇の咲く庭園で、あたしはお嬢様風に小首を傾げ、ニッコリ笑う。

『お姉さま』

 走り寄って、あたしに抱き付く男の子。薔薇の花びらが舞い、微笑みあう二人……。

 ぎゅーっ。あたしは荷物を抱き締めた。

 しゃーない。あいつあの大奥様の孫だから、ミニ妖怪でミニゴジラなんだ。あたしは気を取り直し、姿勢を正した。

「よーし。見てろ、あのクソ餓鬼。あたしを舐めた事、後悔させたる。待ってろ」

 インターフォンを押そうと指を伸ばした。……あれ? インターホンはずっとONのままだった。あたしの様子はずっと見られていた。

 インターホンの向こう側で、クスクスと笑い声がした。あたしは、聞こえないふりをした。

「失礼します!」

 あたしはドスドスと大股で門をくぐり、ムッとしながら玄関の重い扉を開けた。中には、さっきの男の子がニヤニヤ笑って立っていた。あたしは、咳払いをした。

「う、うんっ……。あー、さっきは怒鳴ってごめんなさい。私は―」

「おおきなゆめって言うんだろ。さっき祖母ちゃんから聞いた。変な名前」

 あっそ。

「宜しくお願いします」

 一応、ご主人様だ。あたしは適当に言い、形式だけのお辞儀をした。

「俺は雪弥ゆきや、小5。宜しくね、お・ば・ちゃ・ん」

「だれが、おばちゃんだよ。マジでこいつ、可愛気無っ」

 あたしは顔を背けて、聞こえない様に小声でブツブツ呟いた。

 それでも雪弥は、あたしに握手を求めて、手を差し伸べて来た。

 なんだ、意外と可愛いとこも有るじゃん。あたしは、右手をスカートでこすって汗を拭い、にっこり笑って差し出した。

 ぐにゅっ。雪弥と手を繋いだ瞬間、あたしに伝わるヌルッとした感触。

 何? あたしは反射的に手を引いて、慌てて掌を見た。

 バッチーン。自分で自分の顔を叩いた。何が手にくっ着いたのか確認する間も無く、雪弥がその手をあたしの顔に押し付けたのだ。あたしの顔に、何かがべちょっと着いた。

「やーい、引っ掛かった! 引っ掛かった!」

 雪弥は飛び上がって喜んでいる。

「今時、幼稚園児だって引っ掛かんないのに。たーんじゅん!」

 あたしは掌を見た。掌には朱肉がべっとり着いていた。って事は?

 慌ててポケットティッシュを出して、顔を拭いた。そのテッシュにも、朱肉がべっとり付いた。あたしは焦って何度も顔を拭き捲くった。しかし拭けば拭く程、朱肉の赤が顔中に広がって、雪弥は床に倒れて笑い転げている。あたしは、自分の顔を見たくなかった。

「玄関で、いつまでもうるさいわよ」

 大奥様が玄関先に出てきた。予想通り、あたしの顔を見て噴き出した。

「まるでお猿さんね」

 あたしは、笑えない。

「すっ、済みません、失礼します!」

 あたしは慌てて靴を左右に脱ぎ捨て……。大奥様の鋭い視線に戻って靴を揃え、大荷物と共にそそくさと自分用の部屋に逃げ込んだ。

 部屋に入り荷物を放り投げ、畳にペタンと座り込んだ。早速手鏡を荷物の中から引っ張り出して、鏡を覗き込んだ。……真っ赤に染まったあたしの顔。

 手鏡の中に浮かび上がるのは、血糊べったりホラー映画のおぞましいゴースト……ではなく、顔一面朱色の猿。

「うきっ」

 思わずやってしまった。見れば見る程猿。孫悟空より猿。高崎山の猿より猿。この際だからやってみた。猿真似って奴?

「キキッ。ウキッ。キ――」


「仕度が出来たら、台所へいらっしゃい」

 大奥様の声が、廊下に響いた。

「はーい!」

 あたしは真っ赤な顔のまま、戸の方へ振り向いて返事をした。いつからそこに居たのか、戸口で立っていた雪弥と目が合った。雪弥は声を押し殺して笑っていたが、ナムの顔を見ると堪らずその場にしゃがみこみ、お腹を抱えて大声で笑い出した。半泣きで、床をドンドン叩いている。

 バン! あたしは自分の部屋の戸を、勢い良く閉めた。クレンジングオイルで、急いで朱肉を落とした。その後、放り投げた荷物を押入れに押し込め、真っ赤なバスケ部ジャージに着替えた。校名入り。

 部屋には、予め布団と小さなコタツと扇風機が置いてあった。貸してもらえるらしい。あたしは親に頼んで、軽トラに積んである布団を運んでもらおうと思っていたから、ほっとした。

 沙紀からメールが来ていた。しまったぁ、連絡忘れてた! 慌てて携帯を開いた。

 件名:鍋

 本文:家に鍋を置いてくな! ナムは鍋が変わると寝れないんじゃないの? 親と仲直りしたんだったら、ちゃっと報告してよね。心配掛けるな!

 昨夜沙紀に、何で家出如きで鍋釜まで持ってくるのかと追求され、咄嗟に鍋と寝てる、と答えてしまった。あたしは、鍋が変わると寝られない! って力説したのに、きっと沙紀は信じてない。

 Re:鍋

 本文:今日は鍋無しで寝る。親とは仲直りしました。だから家出も終わり。心配掛けてごめんね。鍋は一夜の宿のお礼です。使って下さい。

 母親にも連絡した。住み込みの話をしたら、藤代家ここに挨拶に来る、と言い張った。冗談じゃない。今は絶対ダメだ。小太りの母親を思い出し、屋敷には体重制限が有るから、と遠慮させた。


 あたしは、派手なバスケ部ジャージで台所へ行った。肉体労働の基本はやっぱジャージだ。

 台所には、大奥様となぜか雪弥もいた。

「ナムさん、その格好はちょっと。今はいいけど、お願いだからそれで玄関には出ないで下さいね。お客様に驚かれます」

「そうですか? ちょっとカッコ良過ぎたかな。NBAみたいですよね。あたしのポジションは、ポイントガードです。シュッ!」

 あたしは、ワンハンドでフリースローを撃つ真似をした。

「うん、レスリング部の主将に見える」

 ドキッ。大木家の近所や商店街を、この格好で頻繁に歩いていたあたしは、未だにあたしが強豪レスリング部の部長だと思われている。

「えへん! ナムさん、お料理は私がします。あなたは片付けと、私の補佐をお願いします」

 驚いた。こんな大きなお屋敷だったら、沢山の使用人がいると思っていた。料理は当然一流シェフで、服の管理は全て仕立て屋、とか。なのに、大奥様が自ら家事をするなんて、あたしは思いも寄らなかった。

「あー、はい」

 家では家事一切を任され、弁当屋や引越し屋、クリーニング店のバイトにいそしんで来たあたし。家事一般はお手の物だ。

 食器棚の扉をあちこち開けて、大奥様はどこに何の食器が仕舞ってあるのか、教えてくれた。ホテル並みの沢山の食器、それらはいかにも高そうな、有名窯元やブランドの陶器やガラス食器だった。

 見た事も無い大きくて奇妙な形の鍋釜や、何十種類もある金銀スプーンにフォークにナイフ。棚にはびっしり並んだ、読めない文字の調味料の瓶。美術館に展示してあるような、透かしや金細工が施された漆器。

 この食器って、一体何十人分有るんだろう。どんな人が来るんだろう。お正月とか、お客様が大勢来るんだろうか……。考えたくない。

「食器の扱いは丁寧に、慎重にして下さいね。一ヶ所ヒビが入っただけでも、あなたのお給料無くなるわよ」

 あたしは、透き通る程真っ白でバラの模様の入った皿に手を出そうとして、引っ込めた。

 ヒビもダメ? 皿をじーっと見詰めるあたしの様子に、雪弥は笑い転げている。あたしは横目でジロッと雪弥を睨んだ。

 大奥様は、キッチン内にある戸棚や収納庫の説明を一通り終え、あたしに次の指示を出した。

「それじゃぁ、夕食の支度の前に、先に太郎の散歩に行って来て下さい」

「俺も行く!」

 来るな! あたしは、ばっと雪弥に振り返り、横目で睨みつけた。

「あー、やっぱやめよっかなぁ」

 雪弥は、両手を頭に当ててニヤっと笑った。

「ナム、迷子になるなよ。太郎って、結構放浪すっから」

 え? 放浪? きちんと区画整理された閑静な住宅地、散歩ルートの地図を渡されても、あたしはきっと道に迷う。

「雪弥ー、君、さん……、散歩、あたしと一緒に、行って、下さい」

「様!」

「……雪弥様」

 このクソ餓鬼~!

「どっしよっかなぁ~」

 雪弥はニヤニヤ笑っている。あたしはキレそうになった。

 ふと、両親の顔が浮かんだ。今後のあたしの生活を考え、拳を握り締めてぐっと堪えた。

後編に続きます。

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