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花の学園化計画始動!!



 その帰り、俺たちは入る部活を検討しようということになり近くのファミレスによった。テーブルの上に勧誘のチラシを広げていろいろ検討する。

「この錬金同好会って。何してるんだ?」

「オリハルコンの生成、金の錬成って書いてあるぞ」

 金が錬成できたら入部させてもらおう。

「大樹は空手部に入らないの? 入ったら全国大会に行けるんでしょ」

「高校生がでるような大会にはでない、というかじっちゃんからでることを禁じられてるんだ」

「レベルが違うってことかよ……」

 恐ろしい男だな、大樹。

「そういう夕輝は何か決めてるのか?」

「うーん? 今のところは中学と同じで水泳部かな? でもそれほど速くなかったから迷ってるんだー。なろなろは?」

「俺か? 俺は……」

 けっこう興味あるのはあるんだよね。

 弓道部とか、映画研究会とか、軽音部もいいかもしれない。音楽やってる男はモテそうだし。そう考えるとバスケ部も検討したい。

「ダメだ。決まらない」

「そうだよねー。いろいろありすぎだよー」

「それが御神高校の特色の一つだからな」

 三人でうーうー悩んでいると、山吹だけは部活動紹介でもらった部活動案内をジッと見つめている。

「何か気にある部活でもあったか、山吹?」

 気になって聞いてみた。

「え、いえ……」

 だが山吹は言い淀んだ。何か気になってるけど、言いだせないそんな顔だ。

 だが大樹の顔を見たとき、山吹は意を決したように口を開いた。

「早瀬くんは御神高校のことに詳しかったですよね?」

「まぁお前らよりは詳しいな」

「じゃ、これはどうしてかわかりますか?」

 と持っていた部活動案内をテーブルにおいて指差した。そこは園芸部の欄で、活動内容と顧問の先生の名前が書かれていた。

「これがどうかしのたか?」

 別に変哲もない園芸部の紹介だけど。

「なるほど」

 だけど大樹は何かわかったらしい。

「何がなるほどなんだ?」

「園芸部は部活動紹介に参加してなかっただろ」

 あれ? そうだっけ。

「でも、全部の部活が参加してるって説明してなかったっけ?」

「されてたな。でも園芸部は紹介されなかった。考えられるのは、三つ。部員が欠席して参加できなかったか、部員がいなくて部活動案内に紹介文を載せるだけに留めたか、去年の部費の削減で廃部になったが何かしらのミスで乗ってしまったか、だ」

 どっちにしても俺は別にどーでもいいけどな。

 けどそんなこと口にだせなかった。山吹の顔がやたらと深刻そうだったのだ。たぶん園芸部に入部したかったんだろう。

「でも、花壇を見る限りちゃんと活動してる感じはしませんでした」

 確かに園芸部があるのに花壇は何も植えられていないどころか、結構荒れていた。

 正直、去年の部費削減で廃部になっていない方がおかしい。たぶん大樹が言った三番目の予想があっているんだろうな。

 そのことを山吹も理解しているのだろう。

「私、あきらめたくありません」

 山吹が何を呟いたと思った瞬間、バンッと机を叩く音が店に響いた。

 もちろん叩いたのは山吹。店中の客の視線が集まっているのがわかる。

「実はみなさんにお願いがありますっ!!」

 まるで壇上の上で力説する政治家のように声を上げる。

 もうなんというか。

 唖然だ。

 沈黙の時間が十秒、二十秒と続くと、山吹も冷静さを取り戻したのか、辺りを見回して顔を真っ赤にしてゆっくりと席についた。

「落ち着いた?」

 と聞いてみると、

「……はい」

 耳を澄ませないと聞こえないぐらいの声が返ってきた。

「それでお願いってなんなんだい、のえのえ?」

「あ、はい。実は私、園芸部に入ろうと思うんです」

 特に驚きの声はない。みんな予想していたんだろう。

「それで、早瀬くんが最初に言ったように部員の方が欠席だったらいいのですが、その、いない場合は、その……」

 言い淀む山吹。最初の勢いが嘘だったかのようだ。

 だけど山吹が言いたいことはここにいる全員がわかってる。まだ短い付き合いだけど、そのぐらいは察しられる。

 園芸部か。

 園芸には俺も少しだけ心得がある。なにしろ我が妹は園芸が趣味でベランダは見事に緑化され、いやされすぎて花の置き場がないくらいだ。

 俺もその手伝いをよくする。だから、園芸が嫌いなんてことはない。むしろ好きだ。

 だったら答えは決まったな。

「俺、どうせだったら誰かと一緒の部活に入るかなぁ」

 俺がそう切り出すと、なぜか大樹には溜息を吐かれて、夕輝には満面の笑みを向けられた。

「そうだねー。私もそうしよっかなぁ。みんなと離れるの嫌だし」

「え?」

 山吹は話題を変えられたことに戸惑ってか、首をかしげる。

 それを見て大樹が口を開く。

「お前ら回りくどいぞ。かっこつけないではっきり言ったらどうだ」

「ぶーぶー、大樹はぜんぜんわかってないよー。こういう時にかっこつけないでいつかっこつけるんだよー」

「だけど、ま、山吹が気付けてないから、結局はっきり言うしかないけどな」

 そう言うと、全員の視線が山吹に集まった。

「え、なんですか?」

 察しが悪い。いや鈍感なんだろう。ここまでくれば気付くだろう。

「山吹、言いたいことを言ったらどうだ?」

 大樹が助け舟を出す。

「そうだよー。私たちまだ友達歴短いけど、気遣う仲じゃないと思うよ」

 夕輝の一声。

「さて、そろそろ良いんじゃないか?」

 もうお膳立ては済んだだろう。

 山吹は俺たちの顔を順々に見つめると、覚悟を決めたかのように言葉を紡いだ。

「あ、あのっ、私、園芸部に入って、あの学校にある花壇を全部花で埋め尽くしたいんです。でも、私一人の力じゃ卒業までに出来るかどうかわかりません。なのでみんなに手伝ってほしいんです。他の部活のかけもちでも構いません。やりたい部活の合間でもいいんです。どうか手伝ってくださいっ」

 山吹はテーブルに額をぶつけるんじゃないかと思うほど頭を下げた。

 まったくいちいち礼儀正しい奴だ。

「決まったね」

 最初に夕輝が口を開いた。

「そうだな。ま、目標は学校中の花壇を花でいっぱいにすること、だな」

「長いよー。そうだなー。花の学園化計画だねっ」

「御神高校は学園じゃないぞ」

 と冷静な大樹のツッコミ。

「細かいことは気にしない。目指せっ、花の学園化!!」

 夕輝が天井に向けて高く手を突き出す。

「みんな……ありがとうございますっ!! ――痛ッ!!」

 再び山吹が頭を下げると、今度は勢い余って「ゴン」という音をたてて額をテーブルにぶつけた。

「おいおい大丈夫か?」

 大樹が苦笑いぎみに聞く。

「はい、大丈夫です」

 真赤になった額を擦りながら、涙目で山吹がそう言う。

「みんな、これからよろしくお願いします」

 と今度は控えめにお辞儀。

「任せてくれ。何かわからないことがあったらツバキに聞けば万事オッケーだ」

「そういえば花里くんの家のベランダには綺麗な花が咲いてしましたね。それはツバキちゃんが?」

「おうっ。我が妹の趣味だ」

「そうなんですかっ!! 良かったです、近くに経験者の方がいて」

「ふっふっ、園芸など私たちにかかれば朝飯前なのだよっ」

 と胸を張る夕輝。

「ま、朝飯前かどうかはやって見ればわかる」

「それじゃ、花の学園化目指して、エイエイ」

「「「オーー!!」」」

 と大樹以外、手を天井へと突き上げる。

 なんてノリのわからない奴だ。優雅にコーヒーなんて飲みやがってっ。普通高校一年生がブラックのコーヒーを普通に飲むかっ? 苦いだろ、飲めないだろ。頭がおかしいんだ。

 などと、大樹に心の中で文句を言っていると、店員さんがやってきた。

「あの、他のお客様にご迷惑になるので、もう少しお静かにしていただけますか?」

 怒られてしまった。

「当たり前だろ」

 とコーヒーを飲む大樹から一言。


 約一週間も更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。


 ようやく園芸部編も、園芸部編らしくなってきました。この次はついに武士系大和撫子(?)会長・蓮宮美此と翌檜たちとの対面です。美人の美此を前にした翌檜のテンションの上がりっぷりが異常です。と言ってもまだ訂正を終えていないので、もしかしたら異常じゃないかもしれません。そこら辺はどうしようか考え中です。

 そして次の更新ですが、早ければ二日後、遅くて三日後を予定しています。旅行で待たせてしまったのに、さらに待たせてしまって申し訳ありません。これもより良い『あすなろ』を読んでいただくためとご理解いただけると幸いです。

 それではまた数日後に。

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