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一休み


 時は二年前にさかのぼる。

 刈谷は帝国がなにやらやるであろうと予想し、帝国の首都に行きそこで何が起こるかを探っていた。

 否、探ろうとした。

 刈谷が行ったときにはすでに市民の方々は生け贄として使われており、巨大な魔力で帝王の化身を呼 び出そうとしていた。

 刈谷が首都につくころにはすでにそのドラゴンは呼び出されており、刈谷がつくとそのドラゴンはこちらを向き、

『小僧か?』

 といきなり言ってきた。

 理由としてはドラゴン曰く、『帝国の帝王は私が力を貸してやった異能の持ち主である』と。要は帝王がドラゴンを従えたというより、ドラゴンが異能の持ち主に少し力を貸したと言った感じである。それを知らなかったため、城にいた帝国の重臣たちは怒りを買い、食い殺された……らしい。

 また、刈谷を小僧と言って帝王と勘違いしたのは刈谷の目とその魔力の波長が似ていたからと推測される。

刈谷の言う『帝国は滅んでいない』と言う発言はこのドラゴンこそが帝国そのものであり、そのドラゴンはまだ死んでいないから滅んでいないと言ったわけである。

 また、刈谷が口説いたと言う発言は正確には帝王がやったことであり、刈谷は一切やっていない。刈谷はこちらを帝王と勘違いしているうちにもてるすべての魔力でその土地ごとそのドラゴンを封印したのだ。ドラゴンだけを封印しなかった理由はそのドラゴンのもつもはやチートとしかいえない能力――スキルと言うべきか――のせいである。そのスキルは虚実化(刈谷命名)効果は現実化と反対の能力――現実を虚実に魔力を持って変えるものである。

 このスキルはパッシブで現実化より効果は弱いが魔法と名のつくものはまったく効かないし、もちろん刈谷の現実化で創ったものも消える。

 倒すには魔法をまったく使わずに物理的に攻撃するしかない。

 それなら封印も無理だと思うが、これが色々と難しいらしく自分に触れたものは効果が消えるがそれ以外はまったく消せないようだ。それゆえに刈谷はその土地を封印し、そこにいたドラゴンを一緒に封印したのだ。ちなみにこれに気づくまでに約半日かかっている。


 ドラゴンが去った後のコロシアムに現れたことなど知らない刈谷は宿に戻ってゆっくりしようとしていた。

 そう、ゆっくりしようとしたのだ。

「送り返す。そんなものはいらない。難だったらお前にやる」

 目の前には首輪をした女二人。

「そういわずに、もうすでにあなたの名前までありますから」

 その隣には、何とかして受け取らせようとする少し太った貴族の男。

「見ろ、どう考えてもおびえてる。それに僕は一人のほうが気が楽でいいんだ」

 向かい合っているのは呆れ半分怒りがその半分に残りが嫌悪感で占められている男。

「そうとは限らないでしょう。本人たちに聞いてみないと」

 そういって貴族の男は隣にいる二人の奴隷に聞いている。いや、正確には一緒にいたいと言わせようとしている。

「はあ、ならこっちのほうが早い」

 そういうと男……刈谷はその首輪に手を当て、真眼を使い、

「―――これ作ったのって絶対あの皇女だな……」

「よくお分かりで」

「こんないやな効果をつけるやつなんてそうそういない」

 本来奴隷の首輪には隷従と首輪への攻撃の禁止ぐらいの魔法しかかけられていない。だが、これには……破壊したら使用者を呪い、眠らせ、永遠に悪夢を見せる魔法がついていた。たちが悪い。気づかずに破壊したら面倒なことになっていた。

 真眼を使い、魔法を解いてから破壊し、その二人に金貨を一枚ずつ渡してとっとと去れと言う。二人は少々戸惑いつつも言われたとおり去っていく。金貨一枚あれば4人家族が楽をして1年暮らせる。それほどの大金なのだ。

 貴族の男は苦虫を噛み潰したような表情をしているが、無論無視する。

 これで終われば正直よかったのだが……。

 階段を上り、自室に入ろうとしたときに殺気を感じる。もう疲れたから勘弁してほしいのだが……そんなこと襲撃者にとってはどうでもいいことだろう。だが、それが無関係とはいえない。疲れてるところを襲撃すれば殺せる確率が数倍上がる。だが、今回言いたいのはそうではない。要は疲れてるところに仕事を増やしてきたらどう思うか、考えるまでも無い、むかつく。幸い?襲撃者に人権は無いので……。

「っくらえ!―――ディバイン・セイバー―――」

 光属性局地型中級攻撃魔法、漢字だけで表記するならこうなる。ちなみに、局地型の条件は範囲が大体3×3×3メートルの範囲に収まるもので、これは結構ぎりぎりの部類に入る。何が言いたいかというと……たかが宿の廊下でそんなものを使えば宿がただじゃすまないと言うことで、そこは刈谷が借りた部屋の前なのだ。もう言いたいことはわかるだろう。


「イイカゲンニシロヨコノヤロウ」

 少々、頭に血が上ってしまった。現在ディバイン・セイバーを放った馬鹿の顔を持ち、こめかみに親指と中指がしっかりフィットしている。そのまま馬鹿の顔を握った手に徐々に力をこめていく。

「イタイイタイイタイイタイ」

 筋力は刈谷の能力値の中でも最低だが、それでも結構強い。剣を振るので握力は少し強いのだ。

 ふと部屋を見る。そこには中が丸見えになった部屋がひとつ……。

「………………」

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

 そろそろ骨がやばそうなので手を離し、部屋から自分の荷物を持ってきてロープで馬鹿を縛る。しっかりと厳重にあくまでも厳重に。

 宿の主人に事情を話し、部屋は残りが無いと言うことで……。

「どうしよう」

 そもそも家を持たない刈谷が宿に止まれない場合どうすればいいのだろう。

 別の宿にいつもなら行くが、今はどこも満室、高いところも安いところも満室なのだ。公園で野宿する人までいる。

「刈谷?」

「宿確保」

 声で誰だか判断し、その手をつかみ振り向きざまにそう言う。

「どうしたの?」

 不支持そうな顔をするレオナに事情を説明し、

「で、私にどうしろと?」

「いや、レオナなら泊まるにしても大きいところで部屋が余ってそうだし、家に帰るんだったらだったら少々お邪魔しようと思って……」

「野宿すればいいじゃない」

 ごもっともな意見である。

「それが…今寝るとたぶん3日は寝続けると思うから魔力使いすぎたし、そうなると野宿はできなくて……」

 刈谷はまだ魔力のコントロールが絶対量に対して下手である。刈谷がコントロールできる魔力を刈谷の総魔力量は大幅に越しているので、ストックが無くなった状態で寝るとなぜかは知らないがしばらく眠り続けてしまう。

「はあ、わかった。じゃあ転移するからつかまって」

「ありがとう」

 そういうとレオナは目を閉じ、転移する場所を思い浮かべる。さすがに遠距離転移は時間がかかるのだろう。と、思いながら肩に手を置く、つかまれというが触れるだけで十分なのだ。

「じゃあ行くよ」

 視界がゆがみ、ふと目を開くと森の中にきていた。一度来たことがある。帝国領の――いや、旧帝国領の――森の中、学園を調べたときに一度通った。

「ここだったのか」

「悪いが、入り口を知られたくない。どうせ寝るのなら今のうちに寝ていてくれると助かる」

 エルフの秘儀とかだろう。真眼を使えばどうせわかるが、わざわざ秘密を探るつもりは無い。おとなしく今のうちに寝ておこう。

「じゃあ、後は任せた」

「ああ、おやすみ」


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