EXランク
8月中に完結させます
―――理解はできる。なぜ今からだが動かないのか分かる。
―――確かに、これも固有魔法だ。少なくとも僕には擬似的なものしかできない。
―――まずいな。これはかなり相性が悪い。
思考はまだ続いている。一度にいくつかのことを考えるのはあまりしたくないが、するしかないだろう。どうすればこれを防げるか、どうすればこれから回復できるか……。
エキシビションマッチだというのに、大勢の人たちがこのコロシアムに集まってきている。
声援は圧倒的に相手側に多い。
―――当たり前か、僕は化け物で、あちらは幻とも言われるEXランクの冒険者だ。
相手の観察を始める。魔力はほかに比べ、かなり多い部類だろう。腰にあるレイピアからも魔力を感じるが、どちらかというとそちらより反対側につけられている鞭に目が行く。鋼鉄製のようにも見えるがそうではないようだ。防具のほうは軽装なのにすべて金属製……あそこに使われている金属を手にできるなら、ほかの革でできた物の方が圧倒的に軽いし、丈夫だろうに……。
これだけでは断定できないが、熱関係だろうか?髪の色は緑だから風系統だと思ったのだが、魔力を見る限り他に火と水に適正が強い。
「さて、前置きはもういいでしょう。それではエキシビションマッチ……始め!!」
とりあえず、刈谷は魔力で剣を30本創り、それらを舞わせえる。
そして、手に双剣を持ち、しっかりと待ちの姿勢で構える。
ここで、刈谷をものすごくいやな予感が襲った。
とっさに伏せると頭上でバンッ!と爆発音ともとれる音が聞こえ、少し焦げ臭い。しかし、解せない。魔力はまったく見えなかったのだが……。
顔を上げて、刈谷はさすがに驚きを隠せなかった。
「なっ……!!」
舞わせていた剣が粉々に砕け散っている。そんな簡単に壊せるものではないはずなのだが……。
「はっ!」
「くっ!」
背後からの突き、それを条件反射で防ぐ。そして、
「ぐああああ」
すさまじい痛みが全身を襲った。
ここで冒頭での心境に至った。
ああ、理解できる。知識としてなら持っていた。納得だ。そりゃあたしかに普通なら何をされたかわからず、理解できずに殺される。だってそうだろう。普通に考えて、今のこの世界の技術力で、電気を操るものに抵抗する手段はほとんど無い。しかも、こちらの剣を通って電気は伝わるが、それに電気が引き寄せられてはいない。やはりこの世界とあっちの世界では法則が違う。
現実化のスキルならおそらく電気を作れるだろう。
―――だが、僕の知っている電気の持つ性質を持っているだろうし、そのイメージをそんなにすぐに変えることはできない。つまり今まで強敵相手に使ってきた方法は使えない。
「―――相性が悪いな……」
今まで、こういう手を使う相手には攻撃を現実化のスキルで同じ攻撃を使い相殺し、その隙に攻撃魔法などで相手を叩きのめすというかなり強引な手を使ってきたが……。
―――今回ばかりはできない。同じ攻撃で無いからだ。同じじゃないから相殺できない。
起き上がる。金属の武器を使っているのは伝導性がこちらにもあると考えられる。
「奥の手なんだが……」
相手は起き上がったことに少々驚いているが、もう一度攻撃しようとしている。もう時間が無い。
―――現実化のスキルで作るものにかかる魔力などの量はそれの大きさと硬さに比例する。
大きく硬いものなら多く、小さくもろいものなら少ない魔力で創れる。
つまり数は関係ない。創造できる大きさならどのサイズでも創り出せる。
刈谷の周りに銀に輝くものが漂いはじめる。
その数はどんどん数を増し、より激しく動き始める。
サラサラという音を立てると思ったら、高い音を発している。
「―――舞え、無限の刃」
これが奥の手、刈谷の固有魔法“舞い踊る無限の刃”はほとんど自動で動く。一応狙ったりすることはできるが、別にそんなことをしなくても勝手に刈谷の周りを舞う。
刈谷は一立方センチ無い刃を作り出した。刃のみだ。もち手の部分は無い。
硬さは他の今までに出したものより硬く、使用した魔力はさっき出した30本の剣より少ない。
「? 目くらまし?」
この世界の常識で考えて、そんなに小さな剣を作り出すとは考えない。
それにそこまで小さいと目くらましのようにも思われる。確かに、目くらましの意味も存在する。だが、その本質は他にある。
ゴウッっと言う音はしなかったが、まさにそんな感じの速度で銀に輝く煙…無数の刃は敵に迫る。
「そんなの関係ないよ」
案の定勘違いしている。これは目くらましではなく、立派な攻撃。そんな風にこの煙を油断すると……。
「あっ―――――」
―――一瞬で身体をバラバラと言うより粉々に切り裂かれる。
―――考えればわかることだ。同じ力の場合、圧力は面より線、線より点のほうが大きい。
同じ能力で動かしているので力は同じだ。そこで線の攻撃から点の攻撃に変わったため、威力も上がり、また、それが密集しているため身体はバラバラになると言うことだ。
正直、本当はそんな数はいらない。せいぜい百か二百ぐらいの量を頭に飛ばせば簡単に殺せる。ここでわざわざ数を増やした理由は……。
「あっ……。――――――あぁ」
―――殺さないように手加減するためだった。
さすがに刈谷に殺す気は無い。
そもそも、最初の一撃で刈谷は死んでいた。これが殺し合いならば……。
だが、彼女は刈谷を殺さず、大会のエキシビションとして戦い、そして殺さなかった。今回大会と言うことで勝てたが、これがそこらへんでの殺し合いなら間違いなく死んでいるのは刈谷である。だから生かした。生かされたから生かした。これでいい。
そう思いつつ、審判の声を聞き流して会場から歩み去った。
刈谷が立ち去った後の会場ではまるで嵐の後のように静まり返っていた。
刈谷は去る直前にアイリスを治療して立ち去っているし、別に刈谷が勝ったからとかではない。静かなのはそれが理由ではない。
『去った後か……』
一人の人間がいきなり現れ、その雰囲気に呑まれたからだった。
『まったく、封印するためとはいえ私を口説こうとしたのはあいつが初めてだったよ』
否、人間ではない、そいつは……。
『まあ、責任ぐらい取らせるか……気配は無いな。後でもう一度探そう』
―――そいつは漆黒のうろこを持つドラゴン…伝説によれば太古の昔、帝国の帝王……それの化身だと言われているものだった。




