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こちらとあちら

 ほぼ説明回です。

 今までの変なところを説明できてたらいいなと思います。

「―――だから、前にちょっと戦ったことがあるぐらいだし、その件で少しお話しして、お帰り願っただけでしょ」

「お前も分からんやつだな!

 魔族にそんな事言って通用させられるお前は何者で、どうやったらそんなことができたのかを聞いているんだ!」

「人徳の問題でしょ」

「お前に人徳があるとは思えない!!」

 そういってさっきから机を叩きまくってるおっさん(聖国第三騎士団副隊長)。

「酷いなあ。人のことを人徳がないなんていって、おっさんこそ、そんなので人徳あるのか?」

 この台詞を聞いたとたんさっきから怒りで赤かった顔がさらに赤くなり、

「貴様、この俺を侮辱するのか!!」

「いや、先におっさんが言ったことだし……」

 自分から言っておいて何を言うか、いわれて怒るなら言うなって。

「フィリア様、この無礼者を殺す許可を!!」

「ローガス、あなたじゃ足止めにもならないわよ。

 それにね、先にあなたが言ったことをそのまま返されて怒るのはどうかと思うわよ」

 自らの主にまで攻められて少し勢いをなくすおっさん。

「それでもね、刈谷。あなたが何故あそこまで魔族に知られているかぐらいは説明してもらわないと、こまるの。いい加減に説明してくれない?」

 困ったな。正直、国のトップが知らなかったことにびっくりしたよ

「―――まさか本当に分からない?見当もつかない?」

「その様子じゃあ私たちに関係あったみたいね」

 どうやら本当に見当もつかないみたいだ。

「全ての国で微妙な地位の人間の一族が襲われたりしているだろう。

 それが魔族の仕業で、その一族に成り代わってることがあったりしてて、それを止めるために何度か関わってるうちにあっちでは僕のことを要注意人物とみなし始めたんだよ」

 これをトップが気付いていないとなるとかなりまずかったみたいだな。

「じゃあ、魔族の王と顔見知りの理由は?」

「そうとは知らずに、魔族に追われていたから助けて、怪我の手当てをした後いきなり自分は魔族だといって、いろいろ言ってきたから適当にあしらってそこに放置したんだよ」

 実際のところ、ちょうどそのタイミングで魔族に襲われ、それを撃退し、それを見たエルザに取引を持ちかけられたのだが、そこは黙っておく。

「そういえばずっと気になってたんだけど、あなたってどこ出身?と言うかあなたって何者?」

 刈谷が何者かと聞かれたとき、正しいのは異世界人だろう。だが、刈谷が名乗れるものはいろいろある。例えば冒険者、ほかには殲滅の魔術師、今大会の覇者、魔法研究者と言っても良いだろう。

「何者かと聞かれたら困るな。

 自分が何者なのかはいろいろと示すものがあるが、簡単に言って余り政治とかには関わらないほうがいい人物かな」

 刈谷の考えとして、その世界のことはその世界のものが決着をつけるべきだと思っている。故に、約束がなければ早々に帰るつもりだし、自分が関わってしまったから起きたことにはきちんと責任を持って後始末をする。だから聖国と帝国との戦争に参加したし、今回の魔族襲撃事件での行動もそれが理由だ。

「じゃあ、帰るからな」

 そう一言残し、その部屋から退出する。


「ちょうど良いところにいた。

 おーい、坂本!菊池!ちょっとこっちに来てくれ」

 部屋から出たところで、二人を見つけることに成功したため、呼び止める。

「どうしたんだ、刈谷?なんかあったのか?お前から声をかけてくるなんて……」

 何気に結構ひどいことを言っている坂本。

「帰る方法が見つかった」

「そうか、帰る方法が……って、ええ!!」

 なかなかにオーバーリアクションだ。この体勢でよく立っていられるな。

「どういうことだ?でも確かお前、方法はあるけど魔力が足りないって言ってなかったか?」

 その通りである。一年と半年経ったころ帝国の学園で資料を探し出し、方法は見つけていたのだ。

「知ってたか?一般的に魔法を発動させる方法は2通りだが、実際はもっとあるっていうこと」

「知らん」

 はっきり言うな。

「―――確か、一般的に私たちが使ってるのが極理式で、教国とかが使ってるのが詠唱式だったよね。それ以外にあった?」

「確かに人が使うのはその二つだ。だが、魔族はあと魔方陣を使うし、どっかの少数民族とかだと紙に文字を書いてお札みたいな感じで使ったりする」

「魔方陣?」

「簡単に言うと、極理式を物に書いて使うと簡単にその魔法が使えるだろう。それの発展で魔方陣として魔法を書いて魔力をこめればその魔法を使えるようにする方法を魔方陣式と言うんだ。

 前に書いた魔法式を魔方陣に書き換えてもらった。それに魔力をこめて、時間がかかってもある程度すれば帰れる。

 あと、前にレオナが気にしていたことだが、僕たちはよっぽどのことが無い限り魔力切れでは死なない。と言うよりも死ぬはずが無い。

 よく考えてみれば分かることだが、僕たちは簡単に言って、有機物を食べて、消化し、それによって得たエネルギーを使って生きている。

 しかし、この世界での食べ物を食べる理由は魔力の供給。

 確かに体力と同じく休めば魔力は回復するが、それは…早い話が体の一部に魔力をためているんだ。それを意識的には使えないが、無意識的にそれを引っ張り出してそれを使う。それに蓄えられる量と体を循環している魔力の量の合計をそう魔力量という。ちなみにデブになる理由は自分で魔力変換できない量の食べ物を食べたときになる。

 魔力切れは総魔力量の残りがゼロになることを言って、早い話が、僕たちの場合、体を動かすエネルギーをなくした状態だ。エネルギーが無ければ生きられない。だから死ぬ。

 僕たちは向こうから来たから魔力を循環させて生きてもいけるし、体にあるエネルギーを使っても生きられる。だから魔力と言うエネルギーが無くても脂肪があるから生きられる。ちょっと前に気になって調べたことだが、恐らく、この世界に来て…というか召喚されてこっちに来たときに僕たちの体が少しばかり変わってる。有機物を食べるやり方でも生きれるし、魔力を食べるやり方でも生きれる。

 この世界の人が呼吸し、心臓が動くのは魔力の循環のため、一度、息を止めてみたところ、しばらくしたら魔力を動かしにくくなって息苦しくなった。ほかの人にやってもらってもそうなったことからそう判断した。

 つまり、僕たちは、この世界の人の体のつくりとあちらの世界の体のつくりが混合している。だから……あまり言いたくないが、この世界の人と行為をしても子はできないし……坂本、お前こっちに来てから何回髪切った?」

 少し、一気に言われて戸惑っていた坂本が少しあわてて、

「えっと……あれ?まだ一度も切ってないな」

「そういうことだ。僕たちの髪がほとんど伸びてない。もっと言うなら、髭もほとんど伸びてないし、爪も同じだ」

「どういうこと?」

「たぶん、僕たちの体はまだあちらの世界の時間軸にいるんじゃないだろうか?

 そういうことなら、僕たちがこちらに来てまだそんなに時間がたってないことが分かる。

 それで……お前らは先に帰っててくれないか?」

 一瞬戸惑いの表情を浮かべ、

「何でお前は一緒じゃないんだ?」

「一応、魔方陣に直してくれた魔族の王と約束をしたからな」

「もしかして……」

「ああ、あそこにいた魔族の王とだ」

 はあ、とため息を吐かれ、

「お前は約束を破ってもとの世界に逃げてしまおうとは思わないのか?」

「思ったが、そうするとまず間違いなくこの世界の人は滅ぶからな」

 だから、相手が破るまでこちらも破らない。そういう刈谷。

「お前って本当にたまに思うけど、変なところで謙虚だよな。俺ならもう関係ない世界のことなんて考えずにとっとと帰るが……」

 たっぷりと間を置き、

「―――まあ、お前らしいか、昔から思っていたが、お前を表したかったら、規律と混沌。もしくは正義と悪を入れるべきだな」

 規律はルールを守ること、混沌は変なところでルールどころか人としてどうかと思うことまでやるところ。刈谷の考えは他人から見れば矛盾だらけなのだから。

 よく言ったものだ。天才と狂人は紙一重だ。刈谷もそれに当てはまるのだろう。一般常識を覆すことに一生懸命になり、非常識を当たり前ととり、時に残酷なまでに己のために行動する。

 基本行動としては自分のためなのに、時々みんなのために動く。

 ルールをしっかりと読み、しっかりと理解したうえでルールに触れるすれすれの行為をする。けれど、破るとなったらとことん破る。それこそルールなんて完全に無視してやりたい放題にする。

 ああ、たちが悪い。しかもその境界線が分からない。

 破る理由が腹が痛いからだったり、人が死ぬかもしれないからだったり……。

 守る理由が先生が見てるからだったり、常識だからだったり……。

 たとえその状況が同じようなことでもそれが一貫していることは無い。

 唯一、一貫しているのは先生にしかられないこと、それぐらいだろう。

「なるほど。分かりやすいな。

 話はそれたが、さっき言った通り、そういうことで魔方陣式なら元の世界に戻れる。と言うことで、お前らが帰れるようこいつに封じておいたから、行きたいところ……お勧めは裏山をイメージして少し魔力をこめれば発動してイメージしたところにつくはずだ。

 ―――あと、ついてから一日以内に僕がつかなかったら僕は死んだものとして扱ってくれ」

 この世界とあちらとの時間の流れる速度の差は約1000倍……こちらの一日はあちらだと2.73…年。簡単に言って、まだあちらでの時間は僕たちが消えてからまだ1日と少しぐらいしかたってないのだ。そして、刈谷はその3年以内に帰るつもりである。もっと言うなら、刈谷の予想だとこいつらが帰った後にはかなり大きな戦争が起きる。もう、知り合いに死んでほしくないのだ。

 それに、帰った後でも一悶着あると思っている。よく考えれば分かる。僕たちは魔力を持っていたからこちらに来るときに死なずにすんだのだと刈谷は考えている。それを前提に考えると、あちらに魔力があると言うことになる。

 魔法という概念があると言うことは、魔法が存在するからだと言えないこともない。

 なぜなら、無いから求めるにしてはほとんどの国や地域で古来より魔術に関する考えを記した書物が存在する。日本でも神やそれによる奇跡の存在が記されたものがあるし(有名どころだと卑弥呼など)、西洋のほうは皆も知っているだろう。

 そんなに昔からそんな存在が信じられてきた説明をそれが存在するからと考えればそれほど納得いくる理由は無いだろう。

 そう考えれば、現代日本にも魔法は存在する。西洋であった魔女狩りによってすべても魔女が滅ぼされたとは考えにくいため、今でも世界中に魔術師がいてもおかしくない。いたとすれば、まず間違えなく僕たちはそれらのことに巻き込まれるだろう。

「刈谷」

「どうした?」

「お前、何をどこまで考え付いた?」

「聞きたいのか?知らないほうが幸せだと思うが……」

「つまり、お前は知ったら俺たちが帰りたがらないであろうと思われることに気付いているわけだ」

「……」

「沈黙は肯定と取らせてもらう。何に気付いた?」

言うべきか、言わざるべきか、それは僕には分からない。だが、言わなかったらこいつらはきっと後悔するだろう。それに、こいつらにも関わってる問題だ。僕が帰らないのは、帰る意味がほとんどないから、約束うんぬんは本当はどうでもいい。

ただ、僕が言いたくなかった理由。それを言わなければ、きっとこのものがたりは終わらない。

坂本と菊池の顔を見る。二人とも、僕がいわなければ、きっと帰ろうとしないだろう。

―――決着は一人でつけたかったのだが……。

 これこそ、刈谷が魔族と取引してまでこいつらを帰そうと思い、こいつらの頼みを聞きこの大会で思いっきり暴れた理由。

「―――帝国は滅んでいない」


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