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本戦 3 魔族の王

「あ………ああ……………あああぁぁぁぁ」

 なり損ないは今起こったことを最初認められなかったようだが、どうやら徐々に理解し始めているようだ。

「あああああああああああああ」

 約束どおり殺しはしなかった。精神的にどうなるかは知った事ではない。

 どういうつもりかは知らないが、あの王女は何を考えているんだろう。

「―――ジャッジメント・ライト―――」

 すぐデスペルで消し去る。

「俺は…あのこのために……負けるわけには………いかないんだ」

 ああ、本当に何を考えているんだ。

 確かに僕はこのなり損ないが気に入らない。理想論ばかりを語り、現実として何ができるか、何がどうなっているか、なぜできないのかを考えず、自分の考えを自分の価値観や他人の価値観こそが絶対の善だと心から信じて止まず、ましてやそれをこちらに押し付けるなど言語道断としか言いようがない。

 その考えが気に入らなくてもともと潰すつもりだったが……。

「フィリアに頼まれたんだ……」

 ―――他人の心をもてあそぶやつだとは思わなかった。

 己の持つ聖剣を切られ、自らにできる最強の魔法は消し去られる。心にはきているだろう。まあ、このぐらいで精神が崩壊するなら英雄とはいえない。(これは持論であるが)人としてはさほど間違ってはいないと思う。だが、英雄はそんなことで精神を崩壊させてはならない。逆境から立ち上がってこそ英雄だ。流れに流されるものはただの木偶に過ぎない。つまり、いきなり拉致されて(召喚されて)あなたが勇者です。みたいな事を言われてそれをそのまま信じ、自分は勇者なんだ。と舞い上がりそれを信じて疑わず、自らよりも強いものを『守る』や『成敗する』と言った台詞はおかしい。まあ、あいつは守ると言ってないがそのぐらいの気持ちはあっただろう。守ると言うのは「相手が弱いからそれを強い私が保護しましょう」と言うような意味が多少なりとも含まれる。そんな気はないにしろ、みんなそういう意味があることを無意識に自覚しているだろう。そうでなければ守ると言う言葉が成立しない。弱いものが強いものを守っている描写を考えれば分かると思うが、なかなかに笑える。それに成敗すると言う言葉は「私は正しい。お前は間違っている。だから正義のためにお前を倒す」と言う意味が伺えるだろう。つまりここには絶対に自分が正しく、また相手が間違っているというのが大前提だ。しかし、少なくとも僕はティッグの件で法の下に裁かれることはないだろう。なぜならこの大会はそういうのは自己責任だからだ。覚えていないかもしれないし、死ぬ人も少ないため、あまり記憶に残らない人も多いが、少なくともこの大会に出ている人は皆誓約書にサインしている。それに、恐らくティッグのしたことをなり損ないは知らないだろうし、それに伴いどのような被害が出たかなんてことも知らないだろう。少なくとも、フィリアが20万なんていう大軍を出さなければもっと市民のほうの被害は防げただろうし、もっと言うならばティッグは聖国のほうに行くときに罪のない…関係のないというべきだな。市民に大きく被害を出している。これは悪ではないのだろうか?それに、帝国では確かにそのような非人道的なこともされてきたが帝国市民のほとんどはそんなことは知らなかっただろう。それなのにそのことで殺されたりするのはあまりにも理不尽だ。

 閑話休題


『お前何を吹き込んだ?』

 念話でフィリアに聞く。

『私はただぜひ優勝してくださいって上目遣いで言っただけよ』

 こいつ……。

『全世界の男性に誠意ある謝罪を要求する』

『別にそんなことで謝る必要はないわ。勝手にやって勝手にやられてるだけだし』

 この点についてはなり損ないに同情するな。

『それだけ?』

『ああ』

 それで念話を切り、

「終わりだ。降参しろ。勇者様」

 と言い切ったところで気配を感じ、すぐに剣を投げた。


 投げられた剣は音速に届くのではないかと言う速度を持って観客席の…貴族の座っている席に飛びかかる黒い髪と真っ赤な目をした魔族に突き刺さった。

「ゴボッ!!ガバッ!!!何故、気づかれた……」

「隠れているやつらは出て来い。相手してやる」

 すでに死亡の確定している魔族は放置して、いまだ隠れている魔族たちの声をかける。

 ぞろぞろとたくさんコロシアムに出てくる魔族たち。その数は11。

「もう一人いるだろう出て来い」

 いまだ隠れているやつを呼び出し、もう一度剣を創りだす。

「貴様、まさか……」

 真眼をまったく抑えようともせず、魔族たちを見据える。

「刈谷…こいつがそうか……こいつを捕らえればケケケ幹部入りは……」

 その魔族はそれっきりしゃべらない。しゃべれない。

 剣を量産する。その数、総計150本。

 ―――舞い踊る無限の刃。

 固有魔法を発動。その光景は圧巻である。

 ―――魂の具現化、形状は刀。

 また魂を刀にして構える。

「―――魔剣技 焔―――」

 横に振りぬき、その場で一回転するように剣を振るう。

 炎が壁となり、刈谷を中心に広がっていく。

 一斉に飛びかかろうとしていた魔族はその炎に一瞬焼かれ、しかし、すぐに炎の内側に入ることに成功する。

「刈谷からはすぐ逃げろと言われていたがこんなの効きやしねえ!」

 その慢心が命取りだった。

 正確には炎の内側に閉じ込められてしまったのだ。

 炎が刈谷と魔族を中にいれ、まるで決戦場を作るように彼らを包み込んだ状態で炎は厚みを増し、火力も強まり、触れたものを焼き尽くす業火へと変わっていた。

 そして、この空間ならば先に発動した能力で一気に終わらせることができる。

 ―――魔力を剣に変換。総数500本。

 150本の剣は届かないだろうという気にさせるためのフェイク。作り出した剣は合わせて650本。この決戦場を埋め尽くすには十分すぎる数だ。

 さらにその中で威力を増させるために、

「―――魔剣技 旋風―――」

 当たり前だが、この決戦場は暑い。中心である刈谷の位置はそこまで暑くないが、魔族たちの位置も相当に暑い。それを旋風が周囲から熱を持ってきて魔族たちの位置を相当の高温にしている。それはすでに魔族というほかの種族より体の丈夫な彼らでも熱中症になるぐらい。

 しかも旋風によってカマイタチが発生しており、その体を切り刻む。

 悲鳴すら出すことのできぬ状態の地獄が終わり、刈谷の作り出した決戦場を取り囲む炎が消えるとそこには灰すら残っていない魔族たちの血のみが乾いて残っていた。


 地獄のような光景はそれほど長く続きはしなかったが、その場にいる人たちに刈谷をただの人と見るものはすでにいなかった。

「あいつは…何者なんだ……?」

 誰かのつぶやき、それは静まり返ったその場を包み込む。

「審判、もう僕の勝ちでいいか?」

 勇者はすでに死んだ。生きてはいるが心が死んだ。己の信条を貫けずに……。

「……」

 審判は答えられない。否、答えるだけの余裕がない。

 それもそうだろう。魔族というのはこの世界の人々にとって畏怖の対象でしかない。

 子供に『そんなに悪いことしてると魔族が来るわよ』と言う脅し文句があるぐらいだ。

 早い話、一般論で考えて魔族が13人も現れたらそこは地獄と化すのだ。まあ、確かに地獄とする人が違ったがそのとおりにはなっている。だからこその『あいつは何者なんだ?』と言う疑問が出てくるわけだ。

 何者かと言う質問に対しては答えずらい。異世界人、殲滅の魔術師、最弱の中級者となんだかんだと言って刈谷を表せる言葉は多い。刈谷と魔族の因縁はいろいろあるが、

「―――そろそろ動く気か?エルザ……」

 声は小さく、誰も聞き取ることはできないが、刈谷はそうつぶやいた。因縁の相手の名を……。


「勝負は見ての通りだ、どう考えても刈谷の勝ち、優勝は狩谷だろう?審判」

 はるか上空から声が響く。

 その声は人を恐れさせ、平伏させる。そんな気がする。王の声。

「―――呼ぶより謗れとはよく言ったものだ。畜生」

 まさかちょっと声に出したからってくるとは思わなかった。タイミングが悪いとしか言いようがないな。

「だれだ!?」

「どこからだ!?」

 昔の人はよく言ったものだ。噂をすれば影とはまさにこのことだろう。

 先ほど主たちを守れそうになかった兵士たちが騒ぐ。

「聞きたいなら答えよう。私は上だ」

 声の主ははるか上空からこの地を見下ろし、その身を包むドレスをはためかせる魔族の女王。

「誰だ!名乗れ!!」

 兵士たちは答えてくれるからと言って質問していく。これはまずい。

「私はエルザだ。魔族の王をしている」

 ちっ、名乗りやがった。

『フィリア、今すぐ人を非難させてくれ、あいつは名乗ったら即刻、行動に移る』

『分かったけど、知り合い?』

『あれは知り合いとは言いたくない』

 そういって一方的に念話を切る。

「これで名乗ったから、もう始めるわよ。だって、そっちの名乗りを聞いている時間はないから」

 もう時間がないな。

「皆さん、避難してください」

 あたりから兵士たちの避難を求める声が聞こえる。

「魔力を使いすぎたが、ストックでも使うか……」

 あらかじめ魂に変換しておいた余剰魔力を再び魔力へと変換…剣二本分だけ残し、魔力へとかえる。

「やりたくなかったが、―――全封印一時解除」

 あまり守りながら戦うのは得意じゃないんだが……やるしかない。

「じゃあ、行くわよ」

 エルザは手を振り上げ、雲に隠れていた魔法陣に魔力を流し込む。

「―――スターダスト・ストリーム―――」

 天より流星群がこのコロシアムめがけて降り注いでくる。

 ―――魂を剣に変換。

 両手にロングソードを作り出し、構え、跳びあがり、

「―――魔剣技 覇王―――」

 一瞬のうちにすべての流星をその剣を振るった衝撃で叩き落す。魔方陣による魔法発動はデスペルできない。

 大きく飛び上がっているので飛行魔法を使いつつ、女王の前に立つ。

「久しいな、刈谷。どうした?告白にでも来たのか?」

「いいな、それも。せっかくだし告白でもしてみるか?」

 ここでの告白は…少なくとも刈谷の言った告白は愛の告白などではない。

「じゃあ、せっかくだ。プロポーズでもしていけ」

「やってみてもいいが、少なくともこんな戦々恐々としたところでプロポーズしても雰囲気とか何もないからな。場所を考えてそういうのは言うよ」

 一応言っておくと、刈谷はエルザに対してプロポーズするような気は一切ない。

「場所を変えても言う気などさらさらないくせに、まあいいだろう。

 今のうちに言っておこう。お前は私のものだ。誰にも渡さん」

「僕は僕のものだ。勝手に自分のものにしないでくれ」

「お前のものは私のものだ」

「ジャイアニズム……」

 ジャイアニズムを知らないであろうエルザは小首をかしげ(少なくとも漫画ならクエスチョンマークが出ているだろうと思われる)、不覚にも少しかわいいと思ってしまった刈谷がいたりするのだがどうやらエルザは気づかなかったようだ。

「それにしてもこれは何のまねだ?確か僕の記憶だと互いに戦場に出るとその地に少なくないダメージが出るから出ないようにするという話だったと思うんだが?僕の気のせいかな?ここにエルザが来て、スターダスト・ストリームなんて使っていたような気がするんだけど……気のせいかな?でも、ここにエルザがいるって言うことは……」

 話している途中から少しずつ心なしか小さくなっていくエルザ。

「す…すまない。思わず……」

「認めるか、それも良いんじゃないか?しかし約束を破られたんだからこっちも約束を破って良いんだよな?」

 鏡を見なくてもわかる。今僕はきっとすごく悪い顔をしているんだろう。

「ま、まて!早まるな」

 ちなみに言っておくと、刈谷がこいつらとした約束は、

『互いに戦場に出ない。互いに互いと争わない。互いに戦争を起こさせないようにする』というものがあって、そこにそれぞれへの要求が付き、

『エルザは刈谷の元の世界に戻るために必要な魔法式を魔方陣に書き換える。だが、刈谷は元の世界に返ってはいけない』

 とあり、刈谷は帰る方法をもうすでに見つけている。方法はあるが、約束は破るような気はないため、いまだ帰っていない。しかもそれは最近のことだったのでまだ坂本たちに知らせてもいない。

 ここで刈谷が約束を破るとなると、恐らく刈谷は迷うことなく元の世界に戻り、このものがたりは終わることだろう。まあ、刈谷としてはこの大会が終わるとともに姿を消し、帰るつもりだったため、エルザが先に約束を破るとなると刈谷も心置きなく帰れる。

「こ、この子に父親なしですごせというのか」

 おなかをさすりながらそういうエルザ。だがな……。

「何がどうなったら僕とお前の間で子供ができるんだ……」

 いろいろとおかしい。まず、刈谷とエルザはそのような行為をしていない。次に、刈谷とエルザが出会っていまだ3週間しかたっていないからこの世界では少なくともどのような手を使っても妊娠していると分かるはずがない。最後に、刈谷たちあちらから来たものとこちらの人の体の構成が違う。簡単に言って、刈谷は元の世界に戻るため、あの召喚された部屋に入ったことがある。そこにはいまだ片付けられず、白骨化した死体がたくさんあった。その死体を調べていくとその死体には魔力がこもっていなかった。

 この世界の人々が死んだら、その死体には魔力がこもる。だが、あちらから来た刈谷たちの死体には魔力がこめられない。

 あちらでは、体を作るのは原子、分子、素粒子といった粒である。だが、こちらの世界では物体は魔力が元となって構成される。故に、あちらとこちらでは体の構造が違う。

 子供ができるのも、あちらでは男と女の遺伝情報が出会い、女の体の中でその情報同士がくっつき会い、それが成長して子供となる。だが、こちらでは男と女の魔力が混ざり合い、お互いの魔力の波長や性質が反応しあって一つの魔力と化し、それが神の手によるものか、一つの魂となる。それが女の体の中で成長し、肉体を持って生まれ出てくるのだ。工程がぜんぜん違う。

「出会ったときにくれたじゃないか」

「最初に会ったときにやったのは回復薬だけだ」

 最初にあったとき、エルザは魔族内の抗争でひどい怪我をして追われており、それを見かけて刈谷が助け出したのだ。そのとき刈谷には何の打算も、何の考えもなく、ただ男が集団で女を追いかけていて良心が痛んだからだが、そのときに怪我がひどく、うまく薬を飲むことすらできなかったので口移し(そう要求された)で与えたのだ。

 また、後で知ったことだが、魔族内での口付けは婚約や既婚者同士でのみする行為で、それを要求されそれに応えるというのは一種のプロポーズとそれに対する肯定の返事である。

「まあ、そのあたりの話は置いておくとして、さっき場所を考えていうといっていたな。せっかくだ、場所を変えよう。いろいろと話したいこととかあるからな」

「残念ながら、現在進行形で邪魔されているが今僕は大会に出てるんだ。こちらの都合を考えてくれ」

 下のほうに意識を向ける。

 どうやらそろそろお帰り願ったほうがよさそうだ。

「約束を破るのが目的じゃないんだったら、そろそろ帰ったほうが良いと思うが、それとも本当に約束を破るつもりなのか?」

「まさか、そうだな、そろそろ帰るとするよ。

 ―――はじめてあった時みたいに……」

「―――そうか、どうやら本当に約束を破るつもりだったらしい」

「じゃあな刈谷。また会おう」

 そういって転移していった。下のほうでは兵士が集まってきている。……いろいろと状況説明させられると思うけども……まあ、いいか。


 少しずつ手直し中。

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