本戦 2 vs英雄のなり損ない
刈谷は第一戦の帰り道に武器屋によった。
―――さすがに徒手はまずい。
「いらっしゃい」
店を見渡すと声をかけてきた女性と奥にゴツイおっさんがいる。
ほしいものはおいているようだ。
「槍と短槍あとはロングソードとショートソードを見せてくれ」
「いいけど、そんなに使いこなせるのか?」
「大丈夫だ」
どうやったら大丈夫なのか……。とつぶやきつつも持ってきてくれるようだ。
「こんなんでどうだい?」
見せてくれたものはなかなかにいい物ばかりだった。
「じゃあ、これと……」
槍に短槍を一本ずつ、ロングソードを二本、ショートソードを四本選ぶ。
「こんなに……。まさか一遍に使う気じゃあないだろうな」
「まさか、(使えるけども)そんな使い方をするはずがない」
「そうだよな。えっと総額だと、金貨三枚かな」
「高いな。そんなに買ってるんだ。もう少し負けてくれ」
「確かに、じゃあ、金貨二銀貨三十」
「まだいけるな……」
その後、十分かけて半額まで値を下げた。
もちろんその夜は一通りの武器に加工を加えて寝た。
せっかく出たんだ。ある程度まじめにやろう。
「これより、第二戦が始まります!」
その後簡単な選手説明を加え、
「――なお、今回の優勝者にはEXランクの冒険者とのエキシビションが急遽決まりました!!!」
すごいな運営側。EXランクはこういうの嫌いだって聞いていたんだが……面白いものでも見つけたのか?
「それでは張り切っていきましょう。第二戦の最初の……」
少しの間はフリーだ。EXランクなんて見たことないからな。魔力探知で探せるか?さすがにこの人数いたらそれも難しいか。
「それでは、次の……」
さて行くか。
「お前がティッグを倒したのか。
だが、俺をあんな飾り物と一緒にしないことだな。この盾とこの鎧で防げないものはない。そして、このランスで貫けぬものなどない!!!」
すげえ、感動した。こいつ大真面目に矛盾言ってるよ。
「行くぞ!!!」
今回の戦いでは何の加工もしていない槍で挑む。
恐らくこいつ程度なら問題ないと思うが、いざとなったら魔法で殲滅しよう。
相手は自慢のランスで突撃をしてくる。それにあわせてこちらは地面に槍を突き刺し、棒高跳びのように相手の上空に消えた。
「ど、何処に行った!?」
相手はフルフェイスだから視界が狭い。しかも上はそんなのを抜きにしても万人の死角となる。
上に上がると同時に槍を引き抜いているため相手は隙だらけでこちらからの攻撃が容易にできる。
魔術展開をして槍に付加。
「―――虚無を貫く魔槍―――」
虚無を貫く魔槍…闇を槍に付加して鎧などを無視して魔力でのみ止められる投げ技。
その威力と汎用性から対人や対城での使用が多い。だが大体の場合鎧を完全に無視することはできないし、投げた槍が砕け散ってしまうコスト面や、それほどまでに闇の魔法の使える人のいないという問題であまり使われない。
刈谷の投げた槍は男の盾と鎧、そして腕と腹を貫いており、今すぐに治療しないと命にかかわる。
「勝者、刈谷!! 担架持ってきてください!!!!」
審判は気の毒だ。
大体今回と同じ感じでショートソードを二本残して決勝へと進んだ。
「刈谷さん。手紙ですよ」
宿で部屋に戻るときに女将に止められる。
「どこからですか?」
「いや、それがよく分からなくてね。
見た感じ兵士っぽかったけどよく分からないんだ。すまない」
一応その手紙を受け取り中身を確認してみると、
「―――そこの二人組、お前らの主には了承はしたがそっちに行く気はないと伝えてくれ」
その二人組は何で俺たちがばれたんだ?といったようすで帰っていく。
手紙には要約すると、『勇者出るから殺さないでね。あのゲームのことはいったん止めて一度会わないか?』といったものだった。
―――勇者?
「誰がこの組み合わせを予測したでしょうか?
なんと決勝は巷で『最弱の中級者』と言われている刈谷慎吾。
もう片方は『聖国によって呼び出された勇者』の今枝善末。
善末の決勝進出は決まったようなものだと言われてきましたが、まさかの刈谷。ここで泣く人も笑う人もいることでしょう……」
長いな。うるさいな。黙ってろ。
「―――さあ、長くなってしまいましたが、決勝戦開始です!!!」
ゆっくりとした動作でショートソードを抜く。相手は華美とまでは行かないもののきれいな装飾のされたロングソード…真眼で見てみたところ恐らく聖剣と言われる類の物のようだ。
「ティッグさんが何をしたかは知らないが、手足を切り飛ばすのはやりすぎだ!
この俺が、勇者である俺がお前を成敗してやる!!」
所々で黄色い声援が聞こえる。
「どうでもいいが、僕としてはあいつを殺さなかっただけ良心的だと思うんだがな」
そう一言言うと、
「どうでもいいだと!!
あの人の行動は常に正しく……」
その正しくのところで何か切れた。
「―――なら正しくとは何だ?」
相手の台詞を断ち切って聞く。
「正しいこと、そんなことは簡単だ。誰かを守り、助けることだ」
「―――そうか、なら聞こう。人を殺すことはいけないことか?」
「もちろんだ」
即答。
「なら、牛を殺すことは?豚を殺すことは?木を切ることは?虫を殺すことは?」
「――別にそんなこと……」
少し遅れた。しかも尻すぼみだ。
「同じ生物だ。それでも人は殺してはいけない。そのほかの生物は殺していいのか?」
「そうとは誰も……」
「同じことだ。人は根っからの強奪者だ。自らの生命のためという理由をつけてそのほかの生物を殺して奪う。それが相手を人間とした瞬間殺してはいけない?何をふざけたことを言っている」
空白の時間。そして、
「そんなことは聞いていない」
「話を変えるな。問いに答えろ。人以外の生物は殺していいのか?何の罪もない生物を?ただ生きようとだけしている。それ以外に望みのないものの命を奪うのか?」
「うるさい!うるさい!うるさい!!!
俺は間違っていないんだ!悪いのは俺じゃない。俺はただ人を救いたいだけなんだ!!!」
「それはただのお前のエゴだ。お前がそうしたいからそうする。
はっきり言ってやろう。お前がされたのは誘拐だ。ただ聖国が勇者と言う存在として、言うことを必ず聞く手ごまとしてお前を呼び出しただけだ。お前は聖国が悪といったものを信じるだろう。それが真に悪かどうかも考えず、否、真に悪なんてものは存在しない。立場が変われば考えなどが変わる。そんなものに客観的に見て絶対の悪なんてものは存在しない」
そういい終わると、
「黙れ!黙れ!黙れ!!!うわああぁぁ!!!」
そのまま剣を振りその聖剣の能力か、それともそいつの魔法か、勇者補正なのかどうかは知らないが光の帯がこちらに向かってくる。
「――っは!」
ティッグに使ったのと同じ手で聖剣に攻撃を入れる。
さすがに破壊はできなかったが、吹き飛ばすことはできた。
ショートソードが砕け散る。すぐさま同じ物を作り出す。
「なんで、何でそっちの剣が砕けないんだよ!」
砕けてはいる。ばれない位すばやく新しい剣を作り出しただけで、
「くそっ!」
もう一度同じことを繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
相手は満身創痍。こちらはまだまだ余裕。
「くそ、何で、こんな……」
呆れて物も言えない。
仕方ない。あの剣を砕くのは正直忍びなかったが、仕方あるまい。
「―――第1封印まで解除」
目は正面を捉えているが、意識は内に飛ばす。
手を心臓の近くへと持ってくる。
―――魔力の一点集中。
魂から魔力を作り出す方法があるならば、その逆も可能のはずだ。
―――魔力を魂へと変換。
僕は大きく勘違いしていた。僕の固有魔法は舞い踊る無限の刃に顕現する英雄の武と人々が夢みし理想だ。この中にしっかりと武器を創造することを表す言葉は入っていない。何故か、簡単だ。最近になって???から変わったから気づいた。ものすごい思い違いに、
―――スキルの使用…現実化。
現実化…魔力などの目には見えない力の類を具体的な形を持たせてこの世に作り出すスキル。そう、僕ははじめから銃も剣も同じ形をしたものを創っていても同じものは作っていなかったのだ。それが自由に使えたのは顕現する英雄の武と言う固有魔法によるところだ。魔法創造も魔法改造もこれが完全に機能していなかったからスキルとして出ていただけでこのスキルから出た副産物に過ぎない。
このスキルは確かあの戦争の後に出ていた。多少なりとのあのときに成長できたのだろう。想像さえできれば何でもできるスキル…これは人の手には余るものだ。だが、それでも使う。それが人間だ。それが刈谷慎吾と言う人間の考えだ。
―――魂を剣に変換。
現れたのは無骨な日本刀、いや、精錬されたと言うべきか?まったく無駄がない。ただ切るための物。波紋などの日本刀を美しく見せるものすらない。
もって来た右手を少し開き創りだす剣の分のスペースを空ける。
―――固有魔法…人々が夢みし理想。
剣に意味を持たせる。装飾など必要ない。ここからこの剣の本質が決まる。断罪を、そう断罪の剣。善も悪もないこの世における絶対の審判となる剣。名付けるならば断罪の剣。
「終わりだ。英雄のなり損ない」
この一言は、このコロシアムに響いた。決して大きくないが、その声は何かを変えるような機がする声。
「―――ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
なり損ないは悲鳴のように声を出しつつこちらに向かってくる。それこそ何かに立ち向かわなければ自我が保てないような感じがするほどに。
「―――無―――」
無…言ってしまえばただの居合い切り。鞘はないが、動きとしてはそれそのものだった。無それはそれにかかる時間を表し、相手との距離を表し、その斬激の後に残るものを表す。
ここで、この剣が普通ではないことに気づいたのはごくわずかの者たちであった。
ほとんどの人は何も考えずに見ている。大体百人ぐらいだろうか、それぐらいの人がこれの違和感に気づいた。
魔力の見えるものはこれが魔力によるものでないから異常であると気づき、その他のものは彼が始めてきちんとした構えを取ったことから異常性に気づいた。
なんだかすっきりした。




