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本戦 1

 一つ、はじめに言おう。

「しまった…目立ちすぎた……」

 さすがに一ブロックだけ早く終わったらさすがにおかしいからな。

「坊主、見かけによらず強いんだな」

「運がよかったんですよ」

 このようにさっきから声をかけられている。

「ふう……」

 結構の人数に声をかけられて、意外と疲れた。

 ―――人付き合いが少ないからって話すだけでここまで疲れるとは……。

 自室へと戻り、飯は食べたので後は寝るだけだ。

「そういえばここにはもう一人本線にいった人がいるんだったな」

 少し気になるが、あまり気にしすぎてもいけない。

「警戒だけは怠らないようにしないと」

 一つ自分に言い聞かせ、しっかりと防犯用の魔法をかけて眠った。


 Side ???

 身分を隠して大会に出てるけど、思ったより手ごたえがなかったわね……。

「そういえば、ここにはもう一人本線に出た人がいるらしいわね」

 自身の力が強すぎるため、里では化け物扱いされてきたけど、こういう風に力を使えるならいいわね。

 ―――大きすぎる力は制御できない。その力が器を溢れ出てしまうから。

「私は放たれた矢…自身でその力をとめることができない……」

 放たれた矢はその身にかかる力のとおり突き進む。

「だから、私は私を止められる存在に殺されるまで突き進むしかない。

 ―――それがいつになったとしても……」

 受け止めてほしいと願う。しかし、現実として放たれた矢をつかみ取れるのはもはや人という枠組みではない。それは化け物か伝説に出てくる勇者ぐらいだ。

「この大会では殺しはほとんどないけども、私を倒せる人なんていないだろうし……」

 少しうつむき、その黒く長い髪が前へときたのを後ろへ払う。

「同じ力でも、あんな陰の力なんて要らなかったな……」


 ―――エルフでは、闇属性の得意なものをダークエルフといい、蔑む。固体としてはまったく同じなのだが、エルフはもともと光や風に属するものが多いためそうなったのではないかと考えられている。



 よく眠り、これから始まる本戦には先日の魔法を使ったことでの疲労感は完全になくなっていた。

「ふっ!!」

 準備運動として一通りの動きの確認をする。

 ただの剣技、魔剣技などの型を一通りこなし、魔力の確認をして、体を動かしておく。

 二振りの細工済みの剣を持ち、もう一度細工に問題がないかを確認する。

 細工といってるが、これは魔力付加の一種なのでルール違反にはならない。

 というよりも、この大会にルールはほとんどない。

 ルールは二つだけ、観客に被害を出さないようにすることと試合開始より早く動かないこと。

 この説明でわかると思うが、実質的には一つしかルールはないのだ。

 禁止事項はフライングのみ。観客の件は、出してもいい。出さないようにしてくれという大会側のお願いだ。

 故に、観客はこの大会による怪我などの責任は自分もちである。

 ―――それでも見たいというのだからすごいと思うが……。

「第一試合を始めます!

 まず始めに、最初の本戦通過者で今大会で最もランクの低いCランクの冒険者…刈谷 慎吾だ!!!」

 呼ばれたのでステージに出て行く。

 そこはローマのコロッセオに雰囲気が似ている円形のところだが、半径は50メートル程度。これならある程度の大きな魔法を使っても観客までは届かない。

 いろいろな声援がくるが、その中でも多いのは、『あのクソ野郎をぶっ飛ばせー!!』といったものが多い。

「次に、聖国の騎士…聖騎士の名を持つ帝国を倒した英雄のティッグ・アヴェランドだ!!」

 声援…黄色い。を頭につけるべきか?なるほど、どうやら僕は悪役にだったらしい。

 まあ、やることは変わらないが……。

「刈谷……?」

「よう、ティッグ。偉そうにしてんな」

「何でお前がここにいる!?」

 とても驚いて様子だ。

「そりゃ、お前の対戦相手だからだろう」

「そうじゃない。何であれを食らって精神崩壊を起こしていないんだ!?」

 ああ、あれのことか……。

「あんなので崩壊するような精神は持ち合わせていないんでね」

 その後もぶつぶつとつぶやき続けるティッグだったが、アナウンスで始まることが伝わると元に戻った。


 開始の合図が響く。

 用意していた方法でやることにして、剣を引き抜く。

「今のうちに言っておく。

 ――怨んでもかまわないからな」

 一言そういった後、詠唱を唱え始める。

 ―――魔法を使う方法は大きく二つある。

 一つ目が、この世界で一般的に使われる方法で、極理式と呼ばれている。

 これは、頭の中でどういった魔法をどのような式でやるかを考えて、式により魔力で世界に干渉する方法。

 二つ目は、詠唱式という方法で、あまり使われない。

 これは、詠唱すれば魔力さえあればでき魔力もあまり使わないという利点はあるものの、時間がかかり、魔物のいるこの世界では一刻も早く使う必要があったため、あまり浸透していない。

 大きな特徴は……。

「――I will add the ability……」

 その詠唱は、英語で行われる。

 刈谷がいっているのは訳すとこうなる。

『この剣に、私は光と闇そして四元素の力を加え、すべてを砕く力を与える』

 詠唱はそこまで長くない。しかし、その刀身に刻まれた文字にそれらを意味するものがある。それによって詠唱の簡略化をした。

「何を言っているかはわからないが……。

 俺は確かに帝国を裏切り、聖国で聖騎士なんて崇められて、お前らには恨まれているだろう。

だが、俺は帝国の暴挙に耐えかねただけだし、何も間違ったことはしていないつもりだ。それに……」

一区切りをいれ、こちらをにらみつける。

「―――この聖剣をもって勝てぬものはない。それがたとえ刈谷…いや、殲滅の魔術師でもな!!」

 一気に突っ込んでくる。大きく剣を引いており、詠唱中でなければすぐさま切っていただろう。

「魔剣技――夢幻――」

 二振りの剣はその刻まれた文字をはじめに輝き、斬るとともに周囲に光で満たす。

「な……に?」

 衝突前にティッグの持つ聖剣は砕けちり、防ぐこともかなわぬまま手足を切り刻まれる。

 ―――痛みはなかった。あったのはただの違和感。

 ―――確かに在ったものが、さっきまで在ったものがない。

 ―――なくなったものが何なのかすら、わからない。

 ―――今もなお、なくなり続ける何か、それが一つなのかすらわからない。

 ―――ただ、一つだけわかる。

 ―――俺は……こいつには勝てないと、

 ―――俺とこいつでは、そもそも背負っているものが違うと、

 ―――そう、理解したとき、何が無くなったのかがわかった。

 ―――聖剣は砕けた。俺の手も足も砕けた。

 ―――それとともに、俺への信頼も、俺の持つ力も、俺の人生さえも……。


 慎吾はティッグの手と足を砕け散らせた。

 骨をではなく、それそのものを、

 血は出ていない。

 傍から見れば、光とともに二人は見えなくなり、光が収まったらティッグの手足がなくなり、地面に仰向けで倒れていることしかわからないだろう。

「は、早く担架を!」

 ようやく事態に気付いたようだ。

 バキンッ!!

 そういう音を立てて、刈谷の持つ剣は砕け散る。背後では、聖剣が砕けたときに出た金属片が宙を舞っており、今この剣が砕けて、その周囲は金属片で幻想的に輝いた。

「し、勝者…刈谷 慎吾……」

 この大会では、殺しはよくあることだ。

 よって、この大会では、誓約書を書かされる。

 たとえ、勇者を殺しても、王族を殺しても、神を殺そうとも、問題にならない。

「じゃあな、ティッグ……」

 そう、一言残して、独り、その場を立ち去った。

 次、どうしよう……。

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