大会 前
騎竜国…その国は竜騎士の王が作り上げた国で、その国は世界的に見ても高い武力を保有している。高い武力を持っていても、自分たちからは戦いを仕掛けず、よく戦況を見てより大儀のある方に加勢することで有名だ。
「思ったよりも近かったな」
刈谷は歩いてきたが、大会の1週間前についた。
とりあえず宿を取ろうと安くて安心できる宿を探し、この国に来たことはそんなに無かったので、下手に動かず、冒険者ギルドに行って聞いてみることにした。
ギルドは思ったよりも空いていた。
「はい、今回はどのようなご用件で?」
受付の方が笑顔で聞いてくる。
「大会の受付といい宿があったら教えてください」
刈谷は礼には礼をもって返すことを心情としている。
「あっと、とりあえず、この紙に必要なことを書いてください。
そして、いい宿でしたらここを出て左に曲がり、まっすぐ行って、武器屋のところで右に曲がったところの突き当りがお勧めです」
「ありがとうございます」
ここにも礼を返し、紙に必要事項を書く。
「どうぞ」
そう言って受付の方に紙を渡す。
「はい、承りました。えっと……大丈夫ですね。
今日は何か依頼を受けますか?」
そもそも依頼をしばらく受ける気はなかったのでそのことを伝え、ギルドを出て教えられた宿を目指す。
最近良く思う。僕って巻き込まれ体質なのかな?と。
「なーなー嬢ちゃん。ちょっと俺らと一緒にいいことしないか?」
「大丈夫、大丈夫。怖がらなくてもしっかり俺らが教えてあげるからさあ」
「……」
「あれぇ。だんまりかぁ。でもさあ、無視はいけないなぁ」
一人の女性を男たちが3人で囲んで連れて行こうとしている。
その女性は、一目見て美人だと分かるぐらいの人だった。恐らく、この男たちはこの女性を見かけて思わず声をかけて、そのままこういうふうになったのだろう。
いつものように、無視するつもりだったし、無視しようと行動していた。
そう、あんなことにならなければ、無視して何も起きずにすむはずだった。
「あっ! 待ったのよ! おかげで変なのに絡まれちゃったじゃない」
ちょっと待て、僕はあんたのことは知らない。
「ちょ……何があったかは知らないけれど、人を巻き込まないでくれ」
本心をオブラードに包んで言う。
―――ほとんど包めてない気もするが……。
「おいおい、兄ちゃん…俺たちがお話しをしてるんだぜ。とっとと離れてくれねえか?」
不良が見下すようにして言う。全く怖くないが。
ああ、僕もそうしたいよ。
「腕をつかまれ、足を踏まれて、この場から動こうにも動けない僕の気持ちが分かるか?」
はっきり言おう。いい迷惑だ。
「おいおい、腕なんて組んじゃってるよこいつ等」
「つぶさないと気がすまないな」
こいつらに人の言葉を聞くということは難しすぎたのだろう。仕方ないからこの場に僕を縛り続けている枷の方をどうにかしよう。
『おい、いい加減に放せ』
『嫌よ、適当に追い払ってよね』
『巻き込んどいてそれは無いだろう』
『いいじゃない。こんな美女と腕が組めて☆』
『☆じゃ無いだろ。別に組んでくれなくてかまわない。だからとにかく放せ』
「手前ら! いい加減何時まで話してんだよ!」
いい加減に怒り出したようだ。早くしよう。
『おまえの魔力なら自力で追い払えるだろう』
『それならあなたも同じでしょう。男なんだから女性を守りなさいよ』
「手前ら!いい加減に「うるせえ!」…はい」
しまった。思わず殺気を出してしまった。
仕方ないな……。
『もうこれから巻き込むなよ』
『善処するわ』
『……もういい』
くるりと不良どものほうを振り返り、
「いい加減にしろよ。こっちは巻き込まれただけだって言うの聞こえなかったのか?
それともお前らには、耳が無いのか?それとも、言葉が通じないのか?
どっちでもいいが、これ以上愚考を続きけるなら、こっちにも考えがあるぞ」
殺気を少しずつ出しながら最後にはにやりと笑う。
「お…覚えてろよ!」
そう言って逃げ出そうとしたので、
「覚えてていいんだな」
そう聞くと、すぐさま逃げ出した。
「はい、おつり」
「ありがとうございます」
受付で聞いた宿は少し高かったが確かに安心できそうな雰囲気だ。
安心出来そうというのは、あまりこちらの事を深く聞いてこない。さすがに名前とかは聞くが……。
「これが部屋の鍵だ。飯は日が沈んでから一刻と日が昇ってから一刻だ。遅れると追加料金が必要だから気をつけてくれ」
サービスはそこそこにいい。
「分かりました」
鍵を受け取り、とりあえず自室に入ろうとする。
鍵には205と書かれているため、二階に上がる。
「意外といい部屋だな」
周囲を見渡すと、一つのそこそこに大きいベッドや机、クローゼットなどがあり、値段の割には色々物がおいてある。
「確かにいい宿だな」
納得して、装備は外さず、周囲の気配を探る。
この宿に入ってから、ずっと誰かに見られていた。
誰かとかどこからまでは分からなかったが、誰かに見られてる。誰会に監視されてるのは良くわかる。
―――我ながら気配には敏感なほうだが…相手は優秀なんだろう。しかし、対外的にはただのCランクの冒険者に監視が付くのはおかしいと思うのだが……。
色々と思うところはあるが、明日レオナから剣を受け取るのだ。それに細工するためのものでも買おう。そう思い、部屋に鍵とロックの魔法を掛け、部屋を出る。
刈谷が出て行ったあと、その周囲では……。
「本当にあいつが殲滅の魔術師なのか?」
とある人物に流された噂。『刈谷と言う冒険者は何でもあの殲滅の魔術師らしい』と言うのが広まっていた。
刈谷は、てっきり見た目でなめられているのだろうと思い気にしなかったが、それのせいで、優勝を狙う国が自国の騎士を勝たせるため、いくらかの斥候を放っていたのでその気配を刈谷は感じたのだ。
「あんな奴が殲滅の魔術師なんてふざけてる。俺でも勝てるぜ」
まあ、なめられているのは事実なのであながち刈谷の考えも間違いではないのだが……。
―――殲滅の魔術師。今では一種の英雄として崇められている。
聖国と皇国との戦争が2年前にあった。
結論からすれば、結果は半年に及ぶ戦争で、聖国が勝利している。
聖国はほぼすべての武力衝突において勝利し、死者は5万人。対する皇国は死者が25万人を越えるとされる。
その中での武力衝突において、一つ、後の世界に残される戦いがあった。
その名をウィード平原の戦いと言われるもので、たった1人の魔術師が皇国側に立ち、聖国を打ち倒したというものだった。そのときの聖国の死者が約3万人…このたびの騒乱での聖国側の死者のほとんどを占める。
その戦いで生き残ったものはこう語った。
『あれは一方的な殺戮だった。相手からの攻撃を防ぐことは出来ず、目の前の奴に剣が突き刺さったり、槍が突き刺さったりして、あれを一人の人間がやったと思うと……』
なお、その正体は未だ分かっておらず、一説によると、進行上に学院があったため、そこにいた人々を守るためでは、といわれているが、それらは定かではない。
そしてその戦乱に、一度だけ姿を現し、その力を持って敵軍を殲滅したため、その動きに対し、殲滅の魔術師。と言う二つ名をつけたのだが、自分がそうだと名乗り出る者は後を絶たず、しかし、未だ本人は現れていないという。
「刈谷。お前のこと噂になってるぞ?」
再会した坂本からそんなことを言われる。
「? 何でだ? 僕はそんな目だったこと最近は……したな」
「何をやった?」
「レッドドラゴンの単身撃破」
「それ以外は?」
「特にやってないはず、一番最近やったのは2年前だよ」
何でそんなことに? といった雰囲気で話す刈谷を見て少しうんざりした顔をしつつ、
「しかしな、出回ってる噂はお前が殲滅の魔術師だって言うものだぞ」
「は?」
意味不明と続ける。
「分かってはいたがお前が出所じゃないか……。そうだ、レオナから預かりものだ」
そう言って剣を渡す坂本。
「ありがとう」
「そんじゃあ、気をつけてな」
「ああ」
坂本と別れ、剣に細工を施しながら考える。
「何でいまさらあの名前が出て来るんだ?」
その疑問は、刈谷の剣に細工する音で消えていった。
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