三年後
一応第二章
―――Three Years After―――
「おい坊主、お前まだそんな依頼受けてんのか?」
「びびってんじゃねーぞ」
「そんなんだからまだCランクなんだよ」
酒に酔ったおっさんたちの笑い声が聞こえるが、そんなものはいちいち気にする事ではない。
「依頼完了しました」
受付に依頼の部位を届ける。
「はい、確認しました。こちらが報酬となります」
いくらかのお金をもらい、
「あの、もう少しランクの上の依頼は受けないんですか?
このままではいいように言われてしまいますが……」
心優しい受付の方に心配される。いつものことだ。
「僕はランクを上げるのが目的でも、見栄を張って強い奴に挑んで死にかけたくもありませんから」
あくまでもその考えは変えない。変える必要も無い。これで十分生きていける。
「そうですか……」
ギルドカードには僕の能力が書かれている。
スキルは書いて無いが、筋力などのステータスを見ればCランクよりも上の仕事を請けられるのは分かる。
「あくまでも自分のランクの仕事でこつこつランクを上げていきますよ」
自分のランクの仕事をすれば5ポイント一つ上なら10ポイント二つ上なら20ポイントとなっていて、実力があるなら、上の依頼を受けたほうが効率がいい。
「分かりました。呼び止めてしまってすいません」
「いえいえ」
そうして漆黒の髪の青年はギルドを立ち去る。
腰に長剣を差し、皮を重ねたよろいの中に鎖帷子を着込む。その上から黒の外装をまとっており、隙の無い動きで宿へと帰る。
「ああ、刈谷さん。ちょうど良かった。今、食事ができたところですよ」
「ありがとうございます。じゃあ、今から食堂に行きますね」
「そうするといい」
笑顔で宿の店主と会話をし、話の通り食堂へ向かう。
これが今の刈谷だ。
「ご馳走様でした」
誰が聞いているわけでもないのだが、ここまで来ると一種のくせだろう。
酒は苦手なので水を飲み、席を立とうとすると、
「おい、てめぇ…いいご身分だな。女と二人で食事なんてよ」
面倒ごとが起きた。
ここでの正しい第三者の対応は……無視だ。
「いえっ!別にそういうわけじゃ」
ふと見てみると、被害者はパッとしない青年で向かい合う形で座っているのは顔立ちが整っているわけでもなく、だからといって不細工でもない…要するに結構普通の女性だった。
しかし、ここで重要なのは、美人かそうでないかではなく、若い女とともに二人で食事をしている。と言うことがあの男には重要なのだ。
―――確かあの男、少し前に振られていたな……。
まあ、少なくともかっこいいと呼ばれる感じではない。つうかむさい。
―――これは運が悪かったなあのカップル。
その程度考えて、食堂を出ようとする。
「……くたばれ!」
ガッ!と後ろで人を殴る音が聞こえる。
少し右に避ける。
左にその絡まれていた青年が倒れこむ。
「おいそこの!そいつ抑えといてくれねえか?」
セリフは願いをあらわしているが、口調は命令だ。
正直こういうのが一番嫌いだ。
まあ、そう言いつつ……。
「……」
しっかり無視して出て行くんだけどな。
「あ?てめえ聞こえてんのか?もう一度言うぞそいつを抑えておけ」
おっ!今度は命令になった。
「……」
無論無視だが。
「てめえ、いい加減にしろよ」
こちらに近づいてくる男。
「こっち向けよ」
肩に手を伸ばしてくる。
「いい加減黙ってくれませんか?」
触られる前に振り返り一言。
「なっ……」
「いくら振られたからって、他人に迷惑はかけないでください」
男はうつむいて震えている。
しまった。思わず言ってしまった。
「ガキが…死ね」
こんなところで武器を使い出そうとする男。
さすがにとめるべきだな。
抜こうと柄に手をかけたところでその柄を押さえる。
「さすがにこんなところで抜く気じゃないですよね?」
殺気と魔力を少しだけ出す。
「……」
完全に殺気に飲まれてるな。
「それでは」
そう言って、店主に御代を払い、部屋に戻る。
その後、そこに居た人は刈谷の出した殺気と魔力に飲まれて、動けなくなった人が多かった。
朝早く、刈谷はギルドへ行く。
「あ、刈谷さん。
今日も依頼を受けるんですか?毎日毎日ご苦労様です」
「いえ、あまり大きな仕事はしないんで、毎日やらないといざって言うときに困るんですよ」
こういっているが、ギルドに預けている預金総額はかなりある。
怪我をしないから冒険者での消費が多いポーション系統に金を使わないからだ。
「なるほど……。
他の方々も、もう少し考えて依頼を受けてくださるといいんですが……」
小さな声で、聞き取り辛かったが、確かに聞いた。突っ込むべきではないな。
「なあ、あんた俺たちと一緒にこの依頼を受けてくれないか?」
後ろから声をかけられる。
振り向いてみてみると、そこには刈谷より少し若い青年とその青年に似た少女、そして刈谷よし少し年をとった女性が立っていた。
青年は結構整った顔つきで、髪の色は青、体格はそれなりによく、イケメンだ。
少女は恐らく青年の妹だとおもう。髪の色が同じで、青年の後ろに少し隠れるように立っている。
女性は結構普通の感じ、可もなく不可もなくといった感じだろうか、髪は赤く、魔力をそれなりに感じるので魔術師だろう。
「僕よりもいい人が居ると思うけど……」
遠まわしな拒否。
「いえ、あなたが適任です」
そういわれても困ると言い、断ろうとおもったのだが、
「一応、話だけでも聞いてあげたらどうですか?」
思わぬ援軍が居た。
「はあ、じゃあ、話だけでいいなら」
話だけ聞いて断ろうと思い、一応話を聞くことにする。
「一緒に受けてほしいのはグリーンドラゴンの討伐です」
グリーンドラゴンはBランクの魔物で、ドラゴンの中では最弱。だが龍は龍なのでよく名前を売ろうとしたCランクのパーティーが挑み、そして死んでいくことからこいつを倒せば上級者(Bランク以上の人のこと)と言われ、未だ被害が減らないと有名だ。
「あんたら、ランクは?」
少し呆れ顔で聞いてみると、
「全員Cランクです」
自分を基準に考えると、いけないと思うが……。
「さすがにこのメンバーじゃ無理だろう」
正確には、こいつらにはあのドラゴンにダメージを与えられないだろう。だ。
「ですから、あなたに協力を求めているんです」
「いや、僕がなんて呼ばれているか知らないだろ」
「なんて呼ばれてるんですか?」
本当に知らないらしい。
「ああ、それはだな……」
「最弱の中級者だ。こいつに声をかけるなら俺たちに声をかけたほうがいいぜ」
隣で聞いていたらしい中年の男が口を挟む。
「えっ!嘘!」
魔術師の女が驚いている。
「どうしてそう思ったか知らないが、俺はBランクだ。報酬しだいで引き受けよう」
「え、いいんですか?」
青年は早速交渉を始める。
魔術師の女はまだぶつぶつ言ってるが、話が終わったんなら戻ろう。
「じゃあ、ガロンさん。その人たちよろしくお願いしますね」
「ああ、任せとけ」
この中年…ガロンさんは仲間を昔グリーンドラゴンによって失っているので、中級者がグリーンドラゴンに挑むとなるとしっかりとしたアドバイスをくれたりする。
曰く、もうあいつらと同じ目にあわせたくないそうだ。
引き受けてくれるなら僕にもう用は無い。さっさと依頼を受けて外へと向かった。




