目覚め
トリップファンタジーです。
草のにおいがする。
溝口茜はそう感じながら眠りから目覚めた。
が、目を開けてまず飛び込んできたのは真っ青な空。
眠気が一気に吹き飛び、茜は慌てて体を起こし周りを見る。
茜が眠っていたのはどうやら周りを森に囲まれた草原であった。
「…ここ、何処?」
当たり前な疑問を口にしつつ、立ち上がる。そして迷いもなく西に広がる森へ向かって歩き始めた。
茜は戸惑う。体が何かに導かれるように勝手に動くのだ。
「…はぁ、まぁいいか」
考えてもしょうがない。それにこの状況が打破できるなら行動した方がいいと判断したのだった。
ひたすら森を歩く。どれぐらい歩いたのかわからない。
だがいつの間にか日が傾いていた。
「まずいな…」
現代っ子の茜だが森を夜に歩くのは危険だということぐらいは知っている。
「せめて人に会いたいな…」
野宿が出来る能力を茜は持っていない。なんとしてでも人に会いたい、そう思った茜は早歩きで移動する。
「!!」
いきなり空が明るくなった。
茜は驚き足を止め、空を見上げた。
「…何で」
真っ青な空が広がっている。ついさっきまで日が傾き、赤みがかっていた空が。
茜は1歩後ろに下がる。
「!!!」
すると今度は空が青から赤へ変化した。
茜は驚き目を見開く。
「…どうなってんの」
茜はしばし、呆然としていたがため息をつくと再び歩き始めた。再び空が変化し青に変わった。
暗くなる不安がなくなった方がましであろうという考えであった。
しばらく歩いていたうちに茜は違和感を感じていた。
歩いていくうちにその違和感を感じていた理由に気がついた。
「音が、ない…」
空が赤い時は心地よい風によって木々が揺れ、音があふれていた。
しかし空が青くなってから全く音がない。風が吹いていない。
茜は不安になる。心なしかさらに早足になる。
早く人に会いたい。
早く自分だけしかいないこの場所から逃れたい。
その一心でひたすら歩いた。
どれぐらい歩いたのだろう。
ぼんやりと茜は考えた。
かなりの時間が経っているはずなのに空は未だに青い。それを見て茜はぼんやりと思う。
まるで時が止まっているようだと。