真夜中の男(7)
ジロー達の話
ピンポーンピンポーン
アパートの一階騒動が解決した後、部屋に入れた安心からジローは自分のベッドで眠りについていた。その眠りも無責任なチャイム音によって妨害される。
はぁ~~~っ
机に置いてあるペットボトルの水を一口口に運ぶ。
「ぬるい~」
思わず声が出た。
ピンポーンピンポーン
「はいはい」
玄関ののぞき穴から、この非常識な客人を見てやろうとジローは覗き穴を覗く。
見覚えのあるメガネに太った風貌、堤だ。あとはやけに体の細い男にしてジローの所属するサークルの部長、山下だ。心なしか堤は取り乱しているように見える。
問題はないだろう。
とりあえず文句の一つでも言おうとジローはドアを開いた。 さっきまで向こう側にいたのか…ジローは一瞬思った。
「あのな!こんな時間に…」
ジローが言い終わるよりも早く山下が口を開いた。
「よう!よくネムれたかい」
「あ…ああ、眠れたよ」
「へぇ~だれと一緒にぃ?」
山下は目を細める。
「だれと?いやいつでも俺は1人だけど」
真顔で答える。
「なんだよ。何もなかったのか?ジロー、ユウコちゃんに…」
「送ってもらったよあとはそれだけ」
「だと思ったよ。ホラ!」
持ち主に携帯を渡す。
「あっ!どこにあった」
「運ばれて言った時、新谷がな」
「そうか、よかった。とりあえずサンキュ」
ジローは自分の携帯を見つめる。
「ああ、そういえば、お目当てのメール来てたみたいだぞ」
「な、なに?オ、オマエら、勝手に人の携帯、覗いたのか?暗証番号のかけ方がいつもわからん」
ジローは動揺する。
「いやだからいつも、はじめの暗証番号は1234とか1111とかぞろ目って言ってんだろ~もしくは、説明書見なさい!」
堤が口を開く。
「くそ~この巨艦め、絶対次はロックかける!」
ジローは怒鳴るようにいう。
「どうせ忘れるんだやめとけって‥‥
そうだ!それよりさ、表の駐車場の杏子の駐車スペースに止まってる俺の車、傷つけた奴知らない?
他の車にも付いてたんだけどさ、ボンネットに、足跡みたいな後が付いてて思いっきりへこんでんだけど……」
堤は凹んでいる。
「明らかに 人が車の上を横切ってたみたいになってた」
山下はそれに合わせるようにいった。
「あれ、親父の車だから怒られる」
堤は思い詰めたような顔でジローを見た。
「……知らん」
心の声は違う。
「そういえばさっき杏子が外、出てくの見たぞ。戻ってないみたいだ」
ジローが言った。
「そうか。俺んちでも行ったかな?」
「自由な恋愛で~」
山下が言う。
「そうかな」
「そうだよ。離すなよ」
ジローが言った。
「あっ!そうだ!このエセ恋愛セラピスト!」
堤が言った。
「そうだ!ろくに恋愛もしたことないくせに」
山下も言う。
「語るな!」
「うるさいな~持論持っちゃ不味いかよ~」
「なんかジローだからムカつく!」
「なんだよそれ~高校生か?」
ジローが言う。
「もういいや、とりあえずせっかく届けたんだ。返信してやれよ。それからな明日は…」山下が言う。
「もういいよ、山下帰ろうぜ。見ればわかる」
「そうだな、それじゃあ月曜に話し聞かせてくれよ」
「あ、ああ…そうだ!」
ジローは思い出したように口を開く。
「何?」
「ならエセ恋愛セラピスト一言だけど…堤!」
「なんだよ」
「さっきのに付け足しといてくれ」
ジローが言った。
「人の気持ちほど…
変わりやすいものはない」
「…それだけ?」
「それだけ」
「やっぱりジローのくせに生意気だ」
堤は言った。
「お前ら、中学生か?」
ジローが言ったのを聞くと2人は去っていった。
慌ただしく2人が去って言った後、ジローはしばらく呆然と立ち尽くした。
深呼吸をすると、ジローはトイレで用を足し、もう1度ベッドにつき、受け取った携帯を開いた。途中、出入口を間違えたのではと不安になったが、大丈夫だ。
携帯の文面をジローは目で追い、読む。
「これは…?成功でいいんだよな。てか文章が長いな…」
ジローは呟いた。心なしか頬が緩む。
「うん…何々?P.S?……ああっ?そうか!」
明日は…はぁ~まあいいか、正確には今日になるのか?飲まなきゃよかった。とりあえず寝るか…ジローは携帯を開いたまま、再び夢の世界へ入って行った。
FROM:○×××@○○ne.jp
SUB:ユウコです
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昨日はお話できて良かったですo(^-^)o楽しい時間をありがとうございます☆ジローさん最後まで私の携帯、間違えて持ってたのでびっくりしました…(^_^;)
そのまま自分のものにしてしまうんじゃないかと…
ジローさんが私の携帯あまりに強く握るから、画面にヒビが入りましたよ(`o´)その罰として、明後日の日曜に私の買い物つき合ってくださいね☆たくさん買いますから荷物持ち、お願いしますね(笑)くれぐれも言いますけど、私はジローさんに一緒に来て欲しいんですからね。
では登録よろしくです★
P.S 明日、土曜日は年に一回の健康診断みたいですよ
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ジローの手に握れている開かれた携帯には、そう書かれていた。