真夜中の女子
飲み会後、ユウコの話
ユウコはバスタオル一枚だけにくるまり、裸で1Kの部屋でベッドてシーツをかぶり横になって眠っている。シーツの肩の部分がはだけていて、官能的な印象を受ける。部屋の電気はついており、光が反射して、少しだけ汗ばんだ体が印象的だ。ポニーテールを下ろした少し湿った髪の毛がベッドの上に、まとわりついていようだ。右手には少し液晶画面にひびの入った携帯電話が握られている。
部屋には今、彼女だけしかいない。彼女の寝息だけが聞こえる。
ゴンゴンゴン
唐突に窓を叩く音がする。ユウコは、ハっとし夢の中から呼び戻される。携帯を持ち直し、シーツを剥がし立ち上がる。自分の今の裸の姿に気づき、はだけそうなバスタオルをまき直すと、窓のそばへ歩み寄った。多分、この時間帯、窓を叩くのは下着泥棒か、あの人だろう。ユウコには今、窓をたたく人物に心当たりがあった。
バスタオルが落ちないようにしながらカーテンを開け、窓を開ける。
狭いベランダには、サークルの先輩、年上の杏子が立っていた。コンビニの袋とレンタルショップの袋を持っている。
「こんばんは~電気ついてたから起きてるのかな~と思って‥女同士で借りてきたDVDでもみない?飲み会の続きでもしながら」
杏子はお酒の袋をユウコの顔の前に掲げながら言う。
「いつも言ってますけど、ここ玄関じゃないんですよ」
ユウコは言う。杏子の胸元を強調した服装とハイヒールをはいた姿に、なんでそんな服装で後輩の家に遊びにくるのかと、女のユウコでも言ってやりたくなる。 しかし、何もまとわずタオル一枚のユウコにはそれをいう資格はなかった。
「いいじゃないの~ここ一階なんだし、ガールズトークしましょうよ!」
「いいですけど…」
「それよりなんで裸なの?さっきまで男でもいたの?」
「ち、違いますよ。シャワー浴びて携帯見てたら寝ちゃったんです」
「そう。アタシの読みは外れたわね~」
「えっ、今なんて?」
「いやいや別に…とりあえず、中に入りましょうよ」
服を来たユウコは
ベッドを背にして、小さい丸テーブルを挟み、杏子と向かいあった。
「堤さんは?」
「どこかで油売ってるわよ。そういえばジローくんの家、言ったでしょ?」
「行きましたけど…ジローさん、泥酔していたのですぐ帰りました。」
「そう、前から相談には乗ってたけど、何もなかったのかしら」
「当たり前ですよ。でもジローさん酔っぱらいながらアタシの携帯、強く握って離さないからビックリしましたけど」
「やっぱり。同じ色で同じ機種だもんね~ちゃんとメールしたの?デブがあなた達2人に割り込んでったから心配してたの」
「み、見てたんですか?」
「あんだけ騒いでるなかで、2人っきりになってたら目立つよ」
「恥ずかしい……」
「メールは、したの?」
「はい~こんな文面でよかったんですか?」
さっきまで手に持っていた携帯を杏子に渡した。
「……なるほど、ジローくん、きっと喜ぶわよ」
「アタシあまりメールとか苦手で…」
「あんた達2人とも不器用な奴らね」
ユウコを杏子はニヤニヤしながらみる。
「あい…」
ユウコは顔が赤くなる。
杏子はメールの文面をスクロールしていく。杏子は何かに気が付いた。
「あれ?これ明日だっけ?」
「そうですよ」
「結構、飲んじゃった…はははっ」
杏子は買ってきたおつまみを口に運んだ。
「そうですよ!だって明日は……
クシュっ!」
ユウコは話ながらリスとかウサギ、小動物を連想させるようなクシャミがする。風邪は引きたくないなぁ~、ユウコは思った。
「あら?カワイイ~!あんな格好で寝るからよ」
杏子がユウコに抱きつこうとするが、ユウコはそれを振り払った。杏子の顔はふざけてるときの顔だ。この表情の時の杏子は厄介だ。
もし、引っ越すなら次は2階以上にしよう
ユウコは思った。