真夜中の男(5)
ジローの話
ジローはとにかく走った。自らの住むアパートのポストの前を通り、出口へ向かう。自分の姿なんて気にしてられない。
ジローの住むアパートの前には住人専用の駐車スペースがあり、そして道路を挟んで公園がある。アパートの各部屋の窓はすべて駐車場、そして公園に面していている。
公園には、滑り台、ブランコ、公衆トイレがある。ジローは間に横たわる道路を横切り、公衆トイレに向かって走る。 裸足に道路に転がる砂利が刺さる。そんなことは気にならない。なんか暑くなってきた‥
公衆トイレの中をを覗くと少しだけその場に立ち止まった。するとジローはアパートに向かい引き返した。
「やっぱり、そういうことだ!」
ジローはつま先を立て、加速する。。アパートで電気がついているのは……俺の部屋だけだ…
あれだ!
タタタタタタっ!
道路を向いて止まっている車のボンネットに足をかける。車体の屋根!飛び越える!止まっている車が激しく揺れた。確かこれは大家さんの車だ。お許しを‥
ガコン!
タタタタタっ!
今度はアパートを背にしている車だ。
ジローのとった進路は道路から、電気の付いた部屋まで一直線だ。障害物はすべて飛び越える。
コレ誰の車だっけ?‥忘れてしまった。まあいいか‥
その車のボンネットを思いっきり蹴る。
そして車体の屋根をまたを踏む。
バコっ!バコっ! ガコン!
車が激しく揺れる。
あまりの強く踏み込むため、車体のボディが深くゆがむ。
そして、車を自分の後ろに蹴り飛ばすように、前へ飛ぶ!
べタン!
右足からベランダに 着地した。
はあはあはああっ
「サークルやってて良かった」
はあはあはあっ
カーテンの締まっているが部屋からは光がもれている。
ゴンゴンゴン
ジローは窓に手を掛けるより先に、窓を叩いた。夜の闇に響く。
はあっ はあっ はあっ
ジローの呼吸は、なかなか整わなかった。ジローの背後では、横切った車がまだ揺れていた。
「はぁはぁ…とりあえず筋肉痛決定…」
そう呟くと窓に手を掛けた。




