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その悪役令嬢はあまりにもマッチョすぎた  作者: 七谷ぐちた
第三章 マッチョ令嬢、凍らされて氷の像となりかけるも筋肉でねじ伏せる
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第20話 水のハンサムからの想定外の告白


 お昼をまえにした魔法学園の生徒会室に、第一王子アレクシスと聖女ベネクトリックス、そして公爵令嬢コマンゾネスとが集まっていた。

 学園の正式な卒業式を待つだけの卒業生にはもう授業がないものの、下級生を教える先生たちの声がなごやかな()の光を通してかすかに校舎にひびいている。


 もう少しでやってくるはずのふたりのハンサムを待ちながら、アレクシスがふたりに報告する。


「どうにも奇怪(きかい)なことがわかったんだが、きのう、警備部隊への連絡がまともに行ってなかったらしい」


「! どうにも来るのが遅いとは思っていましたが……どういうことですか?」


「詳しいことはわからない……。が、『警備部隊に知らせてくる』と言ってアンヌくんと分かれた男子生徒が、途中でたおれていたんだ」


「その男子生徒は……」


「ただ眠っていただけで、命に別条(べつじょう)はないそうだ。そして、(あん)(じょう)記憶があやふやにしかのこっていない……。警備部隊は、見まわりのときに燃える寄宿舎を発見し態勢(たいせい)をととのえてから自分たちの判断で来ただけだということだ」


 おそらく黒幕──“フードをかぶった男”のしわざであろうことに思い至ると、一同は沈黙した。

 オーランドに悪魔を憑依(ひょうい)させ、その男子生徒と接触して眠らせたということだろうか。

 そうするとそのとき自由に動けたのは──


 高速でめぐっていたコマンゾネスの思考は、ノックののちドアがひらく音により中断させられた。


「お呼びでしょうか、殿下」


 生徒会室の入口に立っていたのは──水のハンサムルミエールである。

 トレードマークでもあるメガネをくいっとあげ、川の清流(せいりゅう)のごとき涼やかな声をかなでる。


「ああ、ルミエール……呼び出してすまなかった」


「まったくです。殿下といえども、よけいな心労をかけるのはおやめいただきたい。いったいどんな用件だろうと考えていたら眠れなくなってしまい……目ざめたら朝でした」


「じゃあ寝てない?」


 アレクシスが反射的に応じると、ルミエールはコバルトブルーの澄んだひとみで「冗談です」と言った。


 その真顔ぶりに「お、おお……」とアレクシスがうろたえつつ、気をとり直して()く。


「その、ヴィクトアもいっしょに呼んだんだが、知らないか?」


「いえ、ひとりで参りましたので……」


 その問いに、もの静かに答えるルミエール。


 ふたたびドアがノックされると、あらわれたのは土のハンサムヴィクトアではなくアレクシスの私兵隊のひとりであった。

 耳打ち後に音もなく去っていった彼を見送り、アレクシスはため息をついた。


「念のためヴィクトアを見張らせていたが、どうも来る気配がなく、配下があわただしく出入りしてものものしい雰囲気になっているそうだ。そうすると彼で決まりかもしれないな……」


「決まり、というのは?」


 ふしぎそうにルミエールが首をかしげる。


「ルミエール、きみも知ってのとおり卒業パーティーで、その、ぼくとベネクトリックスが悪魔にあやつられる事件があっただろう。あのあと、さらにオーランドもあやつられたんだ……。ほら、寄宿舎が焼け落ちてしまった、という話は聞いていないか?」


「なるほど、あの事件ですか……」ルミエールが切れ長の目でメガネをクイとあげる。「初耳です」


「そ、そうか……。それで、悪魔を召喚し、ぼくたちに憑依(ひょうい)させた黒幕ともいうべき人間がいるはずだから、探しているんだ。正直にいえば、きみも候補のひとりではある。が、状況的にヴィクトアが怪しいなと……」


「悪魔って……召喚できるものなんですか?」


 ルミエールのはさんだ初歩的な疑問、これはもっともなものであって、いまさら気がついたようにアレクシスがまゆをあげる。


「そう言われると、悪魔みずからが『召喚』という言葉を使っていたにすぎないな……。なにか知ってるか?」


 水をむけられ、コマンゾネスがこたえる。


「わたくしもマクシミリアンさまに教えていただいただけですが、古文書(こもんじょ)に悪魔を召喚する方法がのっていた、とのことです。

 一、悪しき野望をもったものに悪魔から呼びかけがあること。

 二、それに応じ、契約すること。

 三、契約によって特殊な魔法を授かり、その魔法を用いること。

 この3つの手順を踏むことで、悪魔が召喚できるとか」


 ルミエールが腕を組み、「ふうん」と高い声でうなった。


「それで、どうやって召喚したかどうかを特定するのですか」


「いま、マクシミリアンさまが国宝である『真実の鏡』をとってきてくださっています。悪魔と契約した人間であれば、黒いモヤのようなものが写るはずとのこと……。ルミエールさまにはたいへん恐れ入りますが、その確認だけさせていただければと……」


「私はかまいませんよ」


 先ほどのアレクシスの(げん)といい、明確に容疑者のひとりとして扱われているわけだが、ルミエールはなんの不快感も見せずに手相を見せてくれと言われたぐらいの気軽さで許諾(きょだく)した。

 しかし、つづけたひとことによって一瞬で室内が凍りつく。


「私がその契約者ですし」


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