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その悪役令嬢はあまりにもマッチョすぎた  作者: 七谷こへ
第二章 マッチョ令嬢、悪魔に寄宿舎を焼かれるも筋肉でねじ伏せる
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第11話 第五王子は即負けし、魔の手が聖女へ迫る


「〈風の具足(ウィンドブーツ)〉!」


 いさましく声を張り、悪魔に憑依(ひょうい)されたオーランドへとつっこんでいくマクシミリアンであったが、


「へぶぅッ!」


 渾身(こんしん)の一撃はさらりとかわされ、あっけなくオーランドに頬をぶんなぐられた。


「マクシミリアンさま!」


 ベネクトリックスがふっとんだマクシミリアンのもとへ駆けつけようとすると、すさまじいスピードで眼前(がんぜん)にオーランドがあらわれる。

 距離にして3メートルほどにかぎるが、彼が魔力を足にまとって走ると、瞬間移動でもしたかのごとく軌跡に炎をまとわせながら直進することができる。

 とめどなくあふれる魔力の解放を(よろこ)ぶように(たけ)った炎は、まだ彼の背後でチリチリと燃えのこっていた。


 ベネクトリックスのうしろには学園の背の高い石塀(いしべい)があり、ドンと壁に手をつけ、さわやかに笑ったオーランドの顔が近づいた。


「女の子はさ、だまって男の意向にしたがってたほうがかわいいよ」


 その笑顔は、「ハンサム四人衆」のなかでも女子にやさしいプレイボーイとしてひときわ人気を得ていたものそのままである。

 しかし、一方で女性を軽侮(けいぶ)するようなその言葉は、彼がこれまで発したことがない種類のものであった。


「……オーランドさまは、部屋に飾るお人形さんのような女性がお好みですか?」


 彼の内面で煮えたぎる魔力に()され、じんわりと背に汗をにじませながらもベネクトリックスが不敵に笑ってみせる。

 オーランドは動じず、ベネクトリックスのつややかな黒髪を手にとってなでる。


「もともと、お人形さんみたいなものだろう? キャーキャーとおれの行く先々にむらがって、着飾ることとうわさ話が大好きな女の子たち……。ベネくんも、聖女として王国つぶしに協力するなら、厚遇(こうぐう)してあげるよ。攻撃魔法はもっていなくても、キミの回復魔法や補助魔法があれば王国への侵攻をさらに激化させられるだろう」


 そのままオーランドが自分の髪にキスをするので、ゾワリとしたベネクトリックスは「結構です!」とふりはらって走る。


「うわあああ痛いいいいい!」


 と、年相応に泣きわめくマクシミリアンのもとへと行くと、腫れあがった頬や全身のすり傷に回復魔法をかけてやる。

 虫を見るような目でそれを(ぼう)とながめているオーランドは、音も立てずに歩いたあと、てのひらから炎を発し天までとどこうかという高さへ膨張させた。


「わからないかなぁ。いまのおれなら、人間など回復させるいとまもなく消し炭にできるのに……」


 その炎が赤から青へと変わっていくのを見て、その色彩のまがまがしさ(ヽヽヽヽヽヽ)に、ベネクトリックスは理由もわからず恐怖をおぼえあとずさった。

 そうして彼がさらに一歩を踏み出した、そのときだった。


 ドォンという破裂音とともに、巨大な大砲が放たれでもしたように寄宿舎の入口が激しく粉砕されたのである。


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