あの日憧れたキミ
今でも鮮明に思い出す。
中等部時代のある日の事。
私は、世界に絶望し諦めていました。
輝実月家の長女でありながら、成績も悪く、運動もできない。
これといって何かが出来るわけでもなく、むしろ下から数えた方が早い部類。
しかも、自分の好きな食べ物は二つに別けられ争いが起きている。
誰も私に興味はなく、私も誰にも興味がない。
そんな色あせた毎日を劇的に変える少年と出会った。
「こんな世界は間違ってる! 本当は白身と黄身は一つの卵なんだ! 争う意必要はない!」
城宮柚木。私と同じ立場で、唯一同じ境遇の彼。
「俺は、この世界を一つにしたいと思ってる。どっちが美味しいのではなく、どっちも美味しいと言える世界にしたい。その為に協力して欲しい」
誰もが彼の横を通り、聞く耳を持たない。
この世界では、それが普通なのだ。
それでも続ける。
「確かに変かもしれない、でも生きづらくはないか? 楽しいと本当に思ってるのか? 好きな物を好きと言わず、誰かを蹴落とすことで好きを証明するこの世界に疑問はないか?」
だがしかし、その言葉に鼓動が高鳴る。
「俺はいつかこの世界を統一する! だから! だから少しでも賛同できる人が居たらいつまでも待つ!」
痛いほど綺麗なその光景を目に焼き付け、私の一日はその日から変わった。
あれほど意味ないと思っていた努力をした。
学力を上げる為に空き時間は勉強をし、運動も出来るようにした。
すべては彼の隣に立つため。
今のままじゃ、足手まといにしかならないと思ったから。
しばらくし、高校では輝実月家の跡取りとしても有名になった。
そしてやっと彼と対等になったはずだったのに。
「何言ってるんだお前?」
あまりにも冷たい言葉だった。
遅すぎたのだ。
あの中等部の演説から三年もたった今。彼はあの頃の私の様に世の中に絶望していた。
期待を裏切られたと思い、勝手に怒り突き放してしまったけど。もとはと言えばこの世界が悪いのだ。
だから、今度は私が動く番なのだ。
彼のかつての夢を抱え、私が実現する。
その為にも、偽りの王冠も。仮初の希望ももう少しだけ持っていようと誓った。
〇 〇 〇
「おーい、大丈夫ましろん?」
友人の目白雪が顔を除いてくる。
「えぇ、大丈夫よ」
「その割に上の空だったけど」
「ちょっと考え事をしてただけよ」
「ならいいんだけどさー……もう一回今解決できそうな問題聞いておくぅ?」
「……そうね。お願いするわ」
今、学園で起こっている問題を聞いていたはずなのに私としたことが別の事を考えていたわ。
「っていっても、全部知ってるんでしょ? 拶の少なさ、旧校舎のごみ、校舎裏の飛び散ったインクなんだけど」
「そうね、一応知っているわ。広羽からも聞いていたし」
おおよそ片付いている問題ではありますが、学園内の生徒が気づいている問題と一致するかは大事です。
もし間違ったことをしたら、無駄になってしまいますから。
「そんなことより、もうそろそろだよね。会長選の演説」
「ええ」
一週間後に、校内放送による演説がある。
そこで、この学園をどうしたいか。もし会長になったらどのようなことをしたいか。
それらを踏まえ演説をする。
この学園では、どちらかの派閥に入っていても実はもう一方の勢力に入りたいと感じている人もいる。
実際秘密裏に白身と黄身の受け渡しなどが多発している。
だからこそ、この会長選は想像以上に大切なものなのです。
更に、私と彼は現在の輝実月家、城宮家の跡取り。
この会長選の結果次第で、今後の体制が大きく変わるかもしれない。
そういう意味では、誰もが注目することでしょう。
「学校内の問題を解決するの手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。これは私がやらないといけない事なので」
これは、将来この業界を背負うものとしてやらなきゃいけない事。
これぐらいの問題は一人で解決しなければなりません。
今までもそうであったように、同じことをしていくだけです。
「わかった! 何かあったら絶対相談してよね!」
「えぇ、その時は絶対に」
こうして一人の王は、この世界を変える為に密かに動き出した。




