無駄
「何言ってるんだお前?」
コイツは何を言っているのだろうか。
白身と黄身の統一? その言葉を聞いて脳が理解を拒んでいる。
銃火器を使っていないとは言え、正直内戦状態とも見られるこの状況。
そこまで悪化している両陣営を統一しようなんて、正気の沙汰ではない。
「キミこそ何を言っているの? 中等部時代同じことをしてたでしょ?」
「――それは……昔の事だ」
確かに、あの時は世界の在り方に疑問を持っていた。
でもそれは、無駄に終わった。
世界の広さを知った。一人じゃどうにもならないことを知った。変えられないものがあることを知った。
だから諦めたんだ。
「知ってるならわかるだろ? 無理だよ今の世界を変えようなんて」
「だからって諦めて腐るんですか?」
「無理なものは無理だってわかる年齢だろ……理想を抱くのは勝手だ。でも出来ないものを出来ると言い、しかも他人を巻き込もうとしてるのは嫌いだ」
口だけなら何とでも言えるのだ。かつての俺の様に。
「なるほどわかりました。キミは、今そういう考えなんですね……がっかりしましたよ」
静かに、だがしっかり怒っている純白の姿を見つめる。
「なら仕方ないですね。私がこの世界を統一します」
「勝手にしろよ」
「なら、一か月後にある生徒会長選挙でなくていいですよね?」
「は? 出るが?」
「……なんでですか?」
「お前なんも分かってないな」
世の中は異端児を排除するようにできている。
白身のトップが選挙に出なかったら、総叩きにされるだろう。そんなのは嫌なのだ。
「結局保身に走るんですね」
「悪いね。俺はもう学習したんだ」
「そんなんだから腹黒王子って言われるんですよ!」
「うるせぇ! バレないようにやってんだよ! なのに何で腹黒って言われてるんだよ!」
「知らないですよ! 滲み出てるんじゃないですか⁉」
そんなことないはずなんだが……
「って、そんなことどうでもいいんですよ! あなたも選挙戦に出るなら邪魔しないでくださいよ」
「するかよ。勝手にそっちが勝って、統一とかぬかしてればいいんじゃないですかねー」
「それじゃあ! 行きますよ広羽!」
「わかりましたお嬢様」
ドタドタと言う効果音が付きそうな歩き方で出ていく純白。
「何をそんなに怒っているんだろ……わかるか? すずめ」
「まーわからなくもないですねーって感じです」
「なら教えてくれるか?」
「いやっすけど」
「えぇ……」
なんなんこいつ……一応俺の従者、メイドだよね?
「更に言うなら、正直な話し輝実月様の言いたいこともわかるので、口出しずらいなぁって言うのが本音です」
「尚更教えて欲しいんだが」
「こういうのは外野が言うもんじゃないので」
納得はいかないが、そういうこともあるか。
なら、次に考える事が別にある。
「じゃあ別の質問だ、この学園で起きている問題ってなんかあるか?」
「それはまた何です?」
「選挙戦するってなった時に何もしてないと、ポーズとしては赤点だろ。ある程度拮抗した状態で純白に負ける。そのためにも、問題を解決する姿勢はやっておかないとな」
全くもってやりたくないが、負けるだけでも批判してくる輩は必ずいる。それをなるべく減らそうという判断だ。
「さっき輝実月様も言ってましたが、そんなんだから腹黒王子って言われるんじゃないですか?」
「お前まで言うか……正直バレてる気がしないんだけど」
「まぁ、完全な善人って方が変ですからね。不気味に見えるんでしょきっと」
「変なことするよりはマシだと思うんだけど、わからんねー不特定多数の声と言うものは……ホント嫌いだわ」
世の中と言うと変だろうが、学生なんて言う学校が世の中の大半を占めている世界ですら、なんとなくで相手を叩いたりする輩が居る。
そういうのをいちいち対応するだけ無駄だと分かっていながら、それはそれとしてムカつく自分が居る。
ゴミはゴミ箱へなんて言葉があるが、もしトップになったら統一なんかじゃなく、そういう人間を区別する学校を作った方が幾分か良いんじゃないだろうか。
白身と黄身の戦争なんて言っているが、相手を認めたくないとか、自分の好き以外は認めないとか、周りが叩いてるから自分も叩くとかそんなもばっかだ。
最近のネットのくだらない論争みたいで飽き飽きする。
一番は白身だけど、黄身も美味しいよねとか。どっちかが良いじゃなくて、どっちも良いにならないのは、叩くことが目的になっているからなんだろうな。
その原因が身内なのは何とも言えないが……
「ちなみにさっきの質問だけど、今学園内の見える範囲での問題は……挨拶の少なさ、旧校舎のごみ、校舎裏の飛び散ったインクとかですかね」
「挨拶ってのは普通だな。旧校舎のごみもまぁ想定の範囲か、でも校舎裏のインク……なんだそれ」
「わからないんだけど、とりあえずインクが地面とか校舎に飛び散っているらしいよ」
想像できないな現場が。
「まぁ、色々当たってみるか……」
「それじゃあ、すずめ用事あるので離脱します!」
「あぁ……」
そう言って風の速さでいなくなる。
「あいつ……本当に俺の従者なんだよな……?」
そう思いながら俺も教室へ向かい、いつもの相談相手を探しに行った。




