ディベート式の演説
やられた……
純白は柚木の演説を聞きながらそう思った。
基本的に放送演説の順番で本演説も行う。
そのため、今回も柚木から純白の順番で行う。
今回もテキトーにやっていると思っていた。
しかし結果はどうだ、聞き手の好奇心を沸かせる演説をしてきた。
正直、彼の方が現実味のある内容だし、反対意見も少ないだろう。
その後に私の共存する道というのは、喧嘩や対立の先にあるものだと思う。
そうなると最終的に彼より良い世界であるとしても、同意は得ずらい状況になってしまっている。
彼の後にこれを演説するのはかなりのマイナススタートになってしまいますね。
……まさか、これを狙って放送演説を先にした?
しかし、今更どうすることも出来ない。
でもまだ諦めるべき時でもない、ディベート演説が残っている。
なら、今の私にできる事をするだけ。
『次に輝実月純白様の演説です。お願いいたします』
「はい、皆さんこんにちは輝実月純白です」
柚木によって盛り上げられた空気感を肌で感じる。
本当にやりずらいですね。
「以前の放送と同じように、私の目標は白身と黄身の共存です」
私がとる選択肢。
それは――
「以上です」
最短で演説を終わらせること。
あまりの速さに柚木も困惑していた。
(な、なにが狙いなんだ……いやそもそも狙いがあるのか? 普通に考えれば俺の演説の後に長居演説は不利だと思い、短くインパクトだけの演説をしてディベートにシフトしたと捉えられるが)
困惑しているのは、柚木だけじゃなく。全校生徒もであり、ざわざわしていた。
『それでは、ここからディベート演説になります。最初に柚木様から純白様への反論。そのあとに純白様からの反論の流れで行きます。それでは、柚木様お願いいたします』
「はい……」
そのままの流れでディベートに入る柚木。
「まず輝実月様の共存についてなのですが、現在も一応共存関係と言えると思います。その中でさらに共存するなど無理だと思うのが普通じゃないでしょうか?」
同じクラスに白身派と黄身派が半々でいる現状も、共存ではある。
そんな中でも、争いは起こるのに更にそこから仲良くしようなんて無謀だと柚木は論じる。
「それに、共存を目指すと言う事を言っておきながら、具体的に何をするかは言えていない」
付け入る隙はここだと思う柚木。
不干渉にするより、関わっていくのはハードルが高い。
そこの説明無くして理想を掲げるのは無謀だと思っていた。
「それにさっきの演説。あの短さあまり具体案がない裏付けになっていると思います。だからこそ、俺は共存の道ではなく、干渉しない方が良いと思いました」
『ありがとうございました。それでは次に純白様のディベート演説です。お願いいたします』
「はい」
彼のディベートのおかげで舞台は整った。
さぁ、私の時間だ。
「それでは私のディベートを始めます」
圧倒的不利状況、彼の演説のせいで共存は無理だと思っている人が多いでしょう。
だからこそ、良い。
この状況だからこそ燃えると言うもの!
「まず、先ほどの私の演説が短かったと言う話なんですが、打つ手がなかったから短い演説をしたわけではありません。私のやりたいことは放送演説で言ったことがすべてだった。それだけです」
嘘です。
今もアドリブ、自分の考えてた通りになんて一ミリも進んでいません。
それでも、虚勢を張り続けなさい。
「まず、共存のメリットを言いましょう。シンプルに白身と黄身両方を使えるようになります」
これは、裏で白身と黄身の取引をしている人もいるので有効打であるはず。
それに、目に見えていないだけでもっといるはずだろう。
「不干渉は確かに実現しやすいラインだと思います。ですが、それゆえに切り捨てるものも多い。よく考えて欲しいのは、争いを無くすために争っているわけではないと言う事です」
元々好きな物の証明をするために争っていた。不干渉にするのは相手から逃げると言う事に等しい。
「なぜ、好きな物を好きと言うためにお互いから離れるのでしょうか? 確かに難しいかもしれません。でももし、この目標が達成された暁には今よりもっと良くなっていると思います」
そう思うのは私だけではないはず。
「確かに、具体的な案はありません」
それは事実なのだから仕方ない。
「だからこそ、私の理想を叶える為に協力して欲しいのです。私一人では出来ないけれど、この学園の人たちの力を貸していただければ、出来ない事ではないと思っています」
頭を下げ頼むしかない。
「どうか、私の理想の為にもし賛同してくれる方が居たら力を貸してください。お願いします」
こんなのはもはやディベートじゃない。
演説ですらないだろう。
本当にお願いでしかない。
しかし、皆の前に立ち引っ張て来た理想の完璧少女である輝実月純白のお願い。
それは、黄身派だけでなく、争っている相手の白身派にも届いていた。
争いとは同じレベル同しか起こらない。
少なからず相手を認めている節はあるのだ。
「以上で私のディベートを終わります」
そんな相手からのお願い、それが演説でなくてもディベートでなくてももうどうだってよくなっていた。
ここまでで、五分五分と言ったところだろうか、後は応援演説だ。
『城宮柚木様の応援演説を、輝実月純白様。輝実月純白様の応援演説を、城宮柚木様お願いいたします』
――は?
純白も柚木も会場全体も予想だにしない応援演説者の名前を聞き、この日一番の困惑が会場内で充満した。




