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会長選、柚木の演説

 俺は、いつも以上に服の身だしなみを整え始める。

 もちろん会長選だからだが、今回は全校生徒の前に立って演説をする。

 だからこそ、流石に身だしなみを整えないわけにはいかない。


「流石のあなたでもこういう時は身だしなみを整えるんですね」

「そうだよ、悪いか?」

「いえ、良い心構えなんじゃないですか?」


 いつもの感じで返してくるかと思いきや、少し弱めの言葉。

 その変化を感じ取り、もう少しつついてみる。


「あの輝実月純白様が、緊張してらっしゃるのですかぁ?」

「別に……緊張ですか、確かにしているかもしれないですね」

「お、意外にも認めた」

「久しく忘れていましたよ、緊張と言う感覚」


 それでも、大丈夫だという純白。


「これぐらいの緊張どうってことありません。むしろちょうどいいストレスですよ」

「あー調子が逆に上がる的な?」

「そうです。ですから負けても泣かないでくださいね? ちゃんと私の手下として使ってあげますので」

「泣きはしないが、その手下になるってのは嫌だなぁ」


 どうやら奇遇だったらしい。


「あなたの方こそ、緊張とかは大丈夫なんですか?」

「するようなタイプに見えるか?」

「まぁ、そうですよね」


 まぁ、緊張するのも無理はない。

 今回は放送と同じような演説、プラスその後にディベート形式の演説をすることになっている。

 ディベート式の演説なんて基本しないし、それを全校生徒の前でとなればハードルも上がり緊張もする。

 とはいっても基本やることは変わらない。

 俺が演説した後に純白が演説し、その後また俺のディベートから始まる。


「まぁ、気楽にやろうぜ」

「そうもいかないでしょ、皆があなたみたいにテキトーに生きてないんですよ」

「言い方ひどくね?」

『それでは、今回の会長候補生徒に入場していただきましょう』

「ほら、行きますよ」

「はいはい」


 裏から入場し、檀上の過度のライトの光を浴び目を細める。


 やっぱ人多いな……

 頭でも分かっているつもりだったが、いざ全校生徒の前に立つとその多さを実感する。


『最初は城宮柚木様の演説です。それではお願いいたします』


 壇上の中心にあるマイクの前に立って一例。


「どうも皆さんこんにちは。城宮柚木です」


 放送演説の時のように、気持ちを切り替えていく。

 今立って話しているのは、城宮柚木ではなく白身派の城宮柚木なのだ。


「今回、僕が話をする前に皆様の頭に入れておいて欲しいことが一つあります」


 多少反感を持たれるだろうが、仕方ない。


「俺は割と今白身と黄身で争ってるのどうでもいいと思っています」

「……は?」


 少し離れた純白の今悪の声が、耳に届く。

 全校生徒もあっけにとられた表情だ。


「何故か、そこから話しましょう」


 これは純白もやった現状の否定から入ると言うもの。

 そうでもしなければ、純白には勝てないだろう。


「まず皆様は、なんで争っているか知っていますか? 答えは単純そういうものだからと教わったからです」


 厳密に言うと俺たちの曾祖父が問題なのだが、今のこいつらには関係ない情報。

 今なぜ自分たちが争っているか、今一度考えさせなければならない。

 

「別にいいんですよ、それが理由でも。先輩方もそうしていましたし、その前の先輩もきっとそうだったでしょう」


 理由なんて今はどうでもいいのだ。


「でも、このままでいいのか?」


 ずっと前からそうだったから、俺達もそうする。

 いたってシンプルで、わかりやすく。そして、何とも面白くない。

 本心から相手を否定することは、俺は否定しない。

 しかし、なんとなくや、流れで乗っかるそれだけは許せない。


「敷かれたレールの上を歩くのはさぞ楽だろうと思うが、誰も思わないのか? どうにかしてやろうと」


 居るはずのその存在に語り掛ける。


「面白くないよな! ただ敷かれているレールの上を歩くのは。俺たちはまだひよこだ。この学園と言う檻に入れられて大人に管理されている」


 柚木は自覚していた。

 多くの人を動かすことができる演説は自分にはできないと。


「きといつかそのまま鶏になるだろう。でも俺は育つ環境くらいは選びたい!」


 だが、柚木の本質はそこには無いから仕方がないと思っていた。

 うわべだけの言葉ではなく、本心からする演説。


「だからこそ俺は新しい、争いの無い世界を欲した」


 嘘を交えながら、ここぞと言うときには本音で語る。

 その真剣な表情から、ちらほらと見入る生徒が出始める。


 来たッ!


「俺はこの学園で黄身と白身を分けて生活し、争いの無い学園を作っていきたいと思っている」


 多くの人の心を動かせずとも、芯を持っている人間の心を動かすのは得意であった。

 流れに乗るのは嫌いだと思ってはいるが、人とは集まったら流される場面も多い。

 ならば流れを作れる側の人間を動かせばいいと思っていた。


「以上で僕、城宮柚木の演説を終わります」


 こうして、会長選の火ぶたが切って落とされた。

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