表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

朝の意図しない会合

 週が明けても私のやることは変わらない、いつも通り六時に学校に着いて校舎裏に向かう。

 いつも使っているスポンジを取り出し、壁を見上げて驚きを隠せない。


「壁が汚れていない⁉」


 壁どころか地面までも汚れ一つない。

 これってどういうことですか? 私以外に掃除をしている人がいる?

 だとしたら柚木さんでしょうか? 正直あの人だったら嫌がらせをしてきても、おかしくはない気がします。


 しかし、廊下に移動して気づきました。そういうレベルの話ではないと。

 壁に埋め込まれたゴミ箱。

 それが、五メートルおきに設置されている。

 土日の間に設置していた事になる。


「こんなことできるのはあの人しかいないですね」

「あ、ここに居たのか」


 その問題の人が到着する。


「これは、どういうことなんですか!」

「うわぁっなんだ」


 胸ぐらを掴みながら、彼を責め立てる。


「どういうことですかって聞いてるんです!」

「ちょっとまって、首絞めるのやめて、くれッ!」


 仕方ないので、胸ぐらを掴むのをやめ放す。


「暴力的すぎんだろ……どうなってんだよ教育はよぉ……」

「そんなことはいいんです。これはどういうことかって聞いてるんです?」

「これってどれだ? 校舎裏の事か? それともこの廊下のゴミ箱か? それか、先週から挨拶に参加してる目白さんの事か?」

「全部ですッ!」


 この男分かっていて言ってるでしょ……

 本当に嫌な人。


「じゃあ、校舎裏からとりあえず部活になった。それで廊下なんだが――」

「ちょ、ちょっと待ってください! 部活になった? なんの事ですか?」


 汚れていたことは知っているが。何で汚れているかまでは知らないのです。

 知ろうとしなかったというか、気にしていなかったというか。


「校舎裏で起きてたことから解説するとだな、日頃の鬱憤を晴らすために男子生徒が集まって水風船にインクを入れ投げ合っていた。まぁざっくり言うとこんな感じ」

「そんなことがあったんですね」

「校舎裏綺麗にしてた当人が、何も知らない現状に驚いてるよ」


 汚れていたから綺麗にしてただけ、それ以上の事は考えていなかったんですもん……


「まぁ、そいつらがやっていたことを部として認めて、清掃やらを確約させた。あーあと今度そいつらが、書類持ってくるだろうからよろしく」

「いや、まぁはい。分かりましたけど……」


 私の知らない所で勝手に決まっているので、正直実感がわかない。

 

「そんで、このゴミ箱なんだが。設置してもらった」

「なんでそう、キミは言葉が足りないんだ……」

「だって、めんどくさいじゃん?」

「あのねぇ……」

「あーはいはい。このゴミ箱は上に頼んだ。ゴミ箱の前側が開くようになってるから、これを回収するだけでいい」


 壁に埋め込まれているが、しっかり回収することも考えてあるようだ。

 でも、こんなんで変わるのだろうか。

 一応教室にもゴミ箱は設置してあるのに、今までゴミが放置されていた。

 正直これだけでは変わる気がしないのだが。


「これだけで、変わるのか疑ってる顔だな」

「それはそうでしょう。今までやって来たんですよ? これだけで変わるなら苦労はしません」

「それもそうなんだが、この学園にどれぐらいこのゴミを発生させてる奴がいると思う?」


 この場合の発生させている人とは、嫌がらせでゴミを増やしている人と言う事。

 かなりの量があるので半分ぐらいだろうか?


「実はな三割ぐらいだ」

「そんなものなのですか?」

「まぁ、うずらに頼んで調べた情報だ。確実ではないがおおよそそんなもんだろ」


 意外に少ない事実に驚きつつ、彼から質問をさらにされる。


「なら、そのゴミを拾って捨てている人たちは何割くらいだと思う?」

「一割いかないくらいでしょうか?」

「ビンゴ。流石にゴミ拾いしてるだけはあるな」


 それはさほど驚かない。

 もっと人がいたなら綺麗だろうし、私ももっと楽になっているだろう。


「更に、ゴミがある環境を良くないと思っている人はどんだけいると思う?」


 この環境をよく思っていない人の割合……


「残りの六割とかですか?」

「残念、九割だ」

「九割!? 何故ですか、悪いと思っておきながら発生させている人たちもいるのですよね?」

「そうだな、まぁなんだかんだこの国って奇麗だからな。自分の暮らす環境がゴミまみれなのは嫌なんだろう」

「だからってゴミ箱を多く設置しても、今まで通りなんじゃないですか? 結局ゴミを拾って捨てている人は少ないですし」

「そこでだ、当分……三日ぐらいかな? あさのゴミ拾い辞めてくれないか?」


 何故でしょう、そんなことしたら逆に――


「あえて汚くするんですね」

「そういうこと。率先して動く人の割合を増やす。その為のゴミ箱か、少しでもゴミ箱が近かったら捨てようとするだろ? もしそれでも、汚かったらみんなでいる前でお前が拾ってくれ」

「私が拾えば、真似せざる負えないって事ですね」

「そういうことだ」


 実に合理的な判断だと思う。

 だからこそ思うのだ。


「なんで、もっと早くやらなかったんですか?」

「やる意味がなかったからだ」


 逆に言えば、今やることに意味があると言う事。

 この人をやる気に出来る人物が居るのだろうか?


「別に特別なことじゃない。頑張ってる人間はしっかり評価されるべきだ」

「明日は雨ですかね?」

「おい!」

「やっぱり考えてくれませんか?」

「何をだよ」

「トップにならなくてもいいです。私のサポートをしてくださいませんか……」

「いやだね!」


 あまりに早い返答。

 もう少し悩むふりとかしてくれても良いんではないでしょうか?


「俺は俺の為に動く。これもその為だと思ってろ」

「結局戦うんですね、会長選」

「そりゃそうだろ。ただ、負ける気はなくなった」

「それぐらいじゃないと、張り合いがないとも思ってました」


 誰のおかげか知りませんが、この人のやる気が出たことには感謝しましょう。

 これで、私が夢を引き継いでいける人物であることを証明してみせます。


「あ、そういえば。雪さんの挨拶の参加の件は!」

「あーそれに関しちゃ、特にやってないからなぁ。本人に聞いた方が良いんじゃないか? それじゃあ、俺は確認に来ただけだから生徒会室で寝てくる」

「そういう風に使ってほしくはないんですが……」


 へいへい。と言いながら生徒会室に向かう彼の背中を見送る。

 彼をやる気にさせた人物に少し嫉妬をしながら、私も勉強をして朝の挨拶まで時間を潰そうと決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ