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柚木の計画

「それはそれとしてだ」


 正直純白のやり方は気に食わない。

 理念も信念も尊敬はするが、やり方だけは納得いかない。

 

「あ、あれぇ? ゆ、柚木様怒ってる?」

「あぁ、ぶちぎれてるよ!」

「うずら、この人何に怒ってるんだ?」

「う、うずらにもわからない……」


 あぁ、ぶちぎれちまったよ。

 あいつの努力が実るように手伝ってあげるつもりではある。

 それはそれとして、俺は俺の理想を叶える。

 白身と黄身の不干渉、そのために俺は動く。

 純白を利用してでも。

 あいつのやり方を俺自身が否定する。


「直ぐに動けることと、しばらく時間のかかることの二つある。とりあえず、これの申請を上に頼む」


 俺はうずらに、メモした紙を渡す。

 上とは、この学園の創設者。曾祖父である。

 現在でも健在であるため、直接言った方が早い。


「わかったっす。柚木様はなにするんです?」

「俺は友人に頼りに行くかな……」


   〇   〇   〇


「てなわけで、お願いできないかな火野と目白さん」

「ユキでいいって~」


 フレンドリーに接しようとしてくる雪。

 しかし、その裏にこちらを警戒している事が伝わってくる。

 本来黄身派の目白雪と白身派の俺が話すことなんて無いからだ。

 さらに、純白の友人であるため警戒しない方がおかしいというものだろう。


「僕は大丈夫だけど、こんな話して大丈夫なの? 立場的な問題で」

「別にバレなきゃいい。白身と黄身の密輸すらこの学園内で行われてるんだ、いまさらだろ」

「まぁ、それはそうなんだけどね……」

「ウチとしては意図が分からないんだけど」

「意図が伝わらなくても、やってもらうだけで良いんだが」


 どうやら、本人は腑に落ちないらしい。

 白身側の人間に使われるのが、嫌なんだろうか。


「別にやったっていいんだけど。なんでかぐらい教えてくれたっていいじゃん? こっち側としては、協力しなくても良い所を協力するわけだし」


 それもそうか。


「別に大した理由じゃないよ俺の朝の挨拶を無くしたいだけ」


 二人にお願いしていたのは朝の挨拶だった。

 元々は運動部がローテーションを組んでやっていたことではあったので、男女陸上部部長の力を借りたいというわけだ。

 この学園の二つの派閥の上位に位置する二人がやっていたともなれば、周りもいがみ合っている場合ではなくなる。


 いきなり最初からは無理だろうが、徐々に人は集まってくるだろう。

 そうしたら、俺達の仕事は減る。


「しょーみ、ゆずきんの為って言うならウチはやりたくないんだけど」


 まぁ、だろうな。


「目白さんはあいつの……輝実月のやってることはどれぐらい知ってる?」

「基本知ってると思うけど」

「校舎裏の件も?」

「うん」


 顔色を変えずに二つ返事で答えてくることから、嘘ではないことがわかる。


「ちょっとまって柚木、校舎裏ってあのインクの件?」

「そうだ、理由はわからんが、その掃除を朝早くから来てやってる。校舎内のゴミも」

「うそでしょ……一人でやる量じゃないよそれ」

「俺もそう思う」


 目白がその話を知ってるなら、話が早い。


「ならこの話に乗った方が良いのはわかるだろ。あいつの負担を軽減することができる」

「それで言うなら、ウチは動かなくていいんだよね」

「……なんでだ?」

「ましろんに手伝わなくていいって言われてるから。それに、何かあった時に動けないんじゃ元も子もないでしょ?」


 奇麗で歪な笑み。

 当たり前だ、建前でそうは言っても何もできない今の状況に腹が立っているに違いない。


「ましろん……輝実月純白はねぇ、皆の王様。理想の人なの……なんでも一人でこなして完璧超人。ホントはそんなことないのにね……」


 ほんの少し寂しそうに語る。


「でも、ましろんがそう望んだから。ウチはその理想のましろんを壊さないようにしてるの! だから邪魔しないでくれないかなぁ!」


 絶対に入れない一線。

 この覚悟に土足で踏み込むなんてことは誰であっても許さない。

 確かに、並の人間なら引いていただろう。

 だが、相手が悪かった。

 目の前の城宮柚木もまた動くと覚悟を決めた男。

 世界を統一しようと覚悟を持っている人間と、同じ覚悟を持ってしまっているから。


「だからどうした? やれよそれでも」


 あぁ、クソどうでもいい。

 確かに純白は覚悟を持ってやっているのだろう。

 その気持ちを尊重する目白の気持ちも分かった。

 だからこそあえて言おう。


「やりたいことはやればいい」

「は?」

「目白さんあんたは、輝実月の覚悟とか理想とか言ってたけどまだ何一つとして、あんたがやりたくない理由を聞けてない」

「だ、だからましろんを思って……」

「違うって! あんたは! 今! 純白に何をしてあげたいんだ!」

「柚木君……」


 こいつらは、本当にどうかしてる。

 この世界を統一するとか言っておきながら、この世界に合わない理想を掲げながら、この世界の型にはまっている。

 いいじゃないか、好きなことをして。

 好きな物を好きと叫んだって。


「ウチだってましろんを手伝いたいよ!」

「ならすればいい」

「でも、やったらましろんのイメージが」

「安心しろ。俺がいる」


 俺が指示を出しているんだ、俺のせいにすればいい。

 そうして好きなことすればいい。


「勝手にやれ、俺も勝手にやる。世の中をかき乱してやる。」

「ほ、ホントに手伝っていいのかな?」

「むしろやってもらわないと困る」


 俺の計画に必要不可欠な行動なのだ。

 

「あ、ありがと――」

「勘違いすんな、別に純白のやり方を全く認めてない。むしろ俺は敵対者だ。だから利害の一致でしかない相手に俺は言わなくていい」


 なんだこいつと言う視線を向けられつつも、承諾は得た。


「なんだか、懐かしいな今の柚木。昔もこんな感じだったからねーイタくて、かっこつけてて」

「他人事みたいに言うなよ、これからお前も振り回されるんだから」


 こうして着々と、柚木の思惑通りに事が進み始めていた。


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