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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二章 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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97.大きくなり過ぎた側室問題!?政略を盾に迫る少女

カイルたちのいる応接間へ戻り、俺たちは対面の席に着く。


すると、シエラがかなり緊張した面持ちで口を開いた。


「これからのお話……

 というより、ご相談の前にお聞きしたいことがあります」


「聞きたいこと?」


俺がそう聞き返すと、彼女は顔を真っ赤にしながら深呼吸する。


そして――


「ユウト様は……その……。

 わ、私への印象はどのようなものでしょうか!?」


バキン!?


……お嬢さん?

俺とあなたが会ったの、つい数時間前ですよ?


カイルさんや……。

妹が大事なのはわかったから、そんな形相で睨まないでくれ!


そんで、なにさっきの音は?

あれか?血を滴っている両手の【天竜燐】を握り砕いたせいなのか!?


そんなツッコミをすべて飲み込み、愛想笑いで乗り切った俺に拍手を送りたい。


「え~と……シエラちゃん?」

「ぜひシエラとお呼びくだ――ヒッ!?」


真っ赤な顔のまま身を乗り出してくるが、

次の瞬間、青ざめて俺の後ろへ視線を向けた。


「エルシェ……。

 怯えさせたら話が進まないよ?」


「これも試験の一環ですからぁ、お気になさらずにぃ~」


どうやらエルシェがピンポイントで殺気を飛ばしていたらしい。

それをシアが諫め、今度は二人が火花を散らし始める。


「あの、話が見えないから説明してくれる?」


俺がそう言うと、「うん、私が説明するね」とシアが口を開いた。


……のだが。


「まずね、ユウトのお嫁さんなんだけど……は、恥ずかしくなってきたよ!」


「いや、わかるけども!」


“嫁”だの“魂約者”だの、いまだに慣れないワードを、

こうして面と向かって言われると余計にくる。


すると、エルシェが代わりに話を引き取った。


要約すると――


・双竜家のひとつ、ヴァルティエル家から、エルシェとセリィが嫁ぐ

・そのままでは影響力が偏るため、同じ双竜家であるヴァルグラディオ家からも出したい

・さらに、その下に位置する五家からも各一名ずつ側室入りの要請があった


≪シアが第二皇女だから仕方ないんだろうけど……。

 まさか政略結婚の話になるとは……≫


そう考えていると、エルシェがこそっと耳打ちしてくる。


「これはですねぇ~。

 政略結婚という建前でぇ、主様に嫁ぎたい方が多かったからなのですよぉ~」


「……はい?」


彼女曰く――

お披露目で俺を見て、名乗りを上げた女性がかなり多く、

政略と言うのはあくまで“理由付け”なのだとか。


そう説明を受けて困惑していると、シエラが口を開いた。


「勇者様の世界が一夫一妻制であることは存じております。

 ですが、竜族にとって“番”となりたい相手を諦めることは容易ではありません。

 それを抑えるには、力を示す必要があるのです」


この場合、俺ではなく――シアのことを指しているのだろう。


だが人数が多すぎる以上、個の力で抑えるのは現実的ではない。

だからこそ、分かりやすく“家の力”で押さえ込む、ということだ。


「シエラの話は分かった。

 でも、家の力っていうなら――

 シアは第二皇女だし、エルシェやセリィは双竜家だよね。


 パワーバランスを取るためにシエラが来るのは理解できるけど……。

 どうして五家まで?」


俺の問いに、今まで黙っていたカイルが口を開く。


「ユウト。その件については俺様――っ!?

 いや、俺から説明してや――します」


言葉を選ぶたびに、シエラが殺気を飛ばすため、

カイルは、そのたびに言い直した。


どうやら彼も例に漏れず、妹には弱いらしい。


「シエラ。とりあえず普通に喋らせてあげてくれない?」

「勇者様がそうおっしゃるなら……」


俺の言葉に、しぶしぶといった様子で引き下がるシエラに、

「ありがとう。それから俺のことはユウトでいいよ」と声をかけると、目を輝かせた。


「よ、よろしいのですか!?」

「勇者って呼ばれ方に慣れてないだけだよ」

「それでも嬉しいです!」


そう言ったシエラは、先ほどの優雅な令嬢然とした姿はなく、

年相応の少女のような笑顔を向けてきた。


……竜族だから、実年齢は俺より上なんだろうけど。そこは置いておく。


「そろそろいいか?」


カイルに声をかけられ、俺は頷いて視線を向ける。


「話す前に頼みたいんだが……。

 俺様の言葉で、シエラの評価を下げないでくれ」


「どういうこと?」


「これから話す内容は、お前が大切にしているシンシア第二皇女への侮蔑とも取れるものが含まれてる。

 だが、これは周囲――俺様たち華族と、竜国内の同胞たちの認識だ」


真剣な表情で、カイルが俺たちを見据える。


シアは――特に気にした様子はないが、

後ろで控えるセリィの表情が曇る。


その内容とは――


・生まれた瞬間から、家族全員によって封印を施されるほどの力を持っていたこと

・それでも漏れ出る力により自身は守られるが、強大な力を制御できないこと

・周囲への被害が出る可能性を考え、外に出る機会が極端に制限されていたこと


そこまで聞いて、俺はこの世界に召喚された瞬間のことを思い出した。

突如として爆炎が起こり、周囲が溶岩地帯へと変わったあの光景を――


その記憶をよぎらせながら、カイルの話に耳を傾ける。


「言っちまえばだ。

 皇女は、華族以外の同胞たちから――城からも出て来られない臆病者だと思われてる。

 さっき言った事情も、皇族と一部の竜にしか知らされていないしな」


カイルは一度言葉を区切ってから、上級竜族の認識を口にした。


「だが、俺様を含む上位の華族は、

 皇女の力を“感じる”ことができる。

 だからこそ――皇女を娶り、強い子孫を残そうと考えていた」


竜族としては、ある意味当然の発想なのかもしれない。


外に出られない弱者と蔑まれる一方で、

実際には制御しきれないほどの力を持つ存在。


それが華族であるならなおさら、

自分たちの理に組み込もうと考えるのも理解はできる。


――だが。


俺の中で、怒りが静かに膨れ上がる。


その殺気が漏れるより先に、

シアの手がそっと重なり、俺は視線を向ける。


「気にしてないから、大丈夫だよ」


彼女は静かに微笑んでいた。


≪ああ……そういうことか≫


自国民が傷つけられたという報告を聞いても、

怒りを見せなかった理由が、ようやく腑に落ちる。


納得してしまったことに、わずかな苦さが残る。


「話を続けるぞ?」


カイルの声で、意識を引き戻された。


「お前の気持ちは分かる……つもりだ。

 だが、この事実は、今のところ双竜家までしか知らされていない」


「どういうこと?」


俺が問い返すと、「ここからは私が説明いたします」とシエラが引き継ぐ。


「竜族は、自分が“見たもの”を最も信じます。

 たとえ血縁者から聞いた話であっても……です。


 そして、皇女様の力は圧倒的すぎるのです。


 先ほどカイル兄さまは“力を感じられる”と申しましたが、

 正確には――“なんとなく強い”程度にしか認識できません。


 自分たちより上であるとは、感じ取れないのです」


つまり、差が大きすぎて――

誰もシアの本当の強さを理解できていない、ということだ。


俺がエルシェへ視線を向けると、


「私でも難しいですねぇ~」


と、あっさり返された。


「強さを示せない皇女様を、他の女性たちは良く思いません。

 それどころか、引きずり下ろそうとするでしょう」


「俺と結婚するために?」


「それが竜ですから」


シエラは苦笑しながら、紅茶を一口飲み、続ける。


「その状況で、双竜家であるヴァルティエル家から二人も側室が出る。

 これは、確実に不和を生みます」


「ヴァルティエル家が、ヴァルグラディオ家より影響力を持つから?」


「双竜家は対でなければなりません。

 ……私が言うのも、説得力に欠けますが」


シア、セリィ、エルシェもその意見には同意しているようで、静かに頷いた。


確かに――

これまでの経緯も含め、ヴァルグラディオ家の立場は弱まっている。


そして。


「言いにくいことではありますが……均衡を保つためには、私が――」


一度言葉を詰まらせてから、シエラは顔を真っ赤にしながら先を口にする。


「だ、第二婦人としてユウト様に嫁ぐのが最善だと考えております!」


その真剣さに、思わず俺まで動揺してしまうのだった。

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