表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二部 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/79

78.竜族淑女たちの黒い笑み

竜の天秤の一人、レオリクスとの一件をエリオスさん達に報告すると、

竜皇リオネス様へ相談してくれるらしく、俺たちは別の客室で待つことになった。


一応、同じ組織のトルシアが細工を解除してくれたらしいが、

さすがに信用はできないと、エリオスさんが手配してくれたのだ。


話し合いのため別行動をとっていたエルシェも合流し、俺たちは用意された部屋へと入る。


――バタン。


扉が閉まった瞬間、エルシェが口を開いた。


「ではではぁ~、ことの経緯をお願いしますねぇ~?」


振り返った彼女は、穏やかな黒い笑みを浮かべている。


「えっと、エリオスさん達に報告したはずだけど……。

 エルシェもそこに居たよね?」


俺がそう聞くと、エルシェは自分の頬に片手を添えて、

困ったような仕草をする。


「もちろんお聞きしましたよぉ~?

 ですがぁ、私が聞きたいのはですねぇ~……」


そう言った瞬間、黒い笑みは禍々しい笑みへと進化し、

彼女の足元が凍り始める。


「セリィちゃんが受けたことについてなのですよぉ~」


確かにエリオスさん達への報告に、セリィのことは含まれていなかったが、

どうやらこの狂気メイドは、そこを詳しく知りたいらしい。



――――



「なるほど、なるほど〜。

 そういうことがあったのですかぁ〜」


一通りの説明を終えるころには、

エルシェの表情から感情が消えていた。


完全な無表情なのに、言葉だけは間延びしているという、

もはやホラーシーンのように見えた。


「ヴァルグラディオ家はぁ、

 私を怒らせるのがよほど好きなのですねぇ〜……」


「姉様、また殺気と冷気が漏れてますよ!?」


エルシェの座っている椅子が、また凍り始め、

セリィが慌てて指摘して止めていた。


「とりあえずはぁ、あの家の極秘情報を

 拡散するところから始めましょうかねぇ〜」


少し考えるようなそぶりを見せたあと、エルシェが危ないことを口にする。


彼女はもともと単独行動を許された諜報員だったため、

持っている情報の価値は計り知れないだろう。


しかしそれを拡散するということは――。


「それは、エルシェが危険なんじゃないの?」


「確かにそうかもしれませんねぇ~。

 ではぁ、トルシア様に拡散してもらいましょうぉ〜!」


さらりと別の意味で物騒な提案をする。


俺は今回の件でしか会ったことがないが、

間違いなく嬉々としてエルシェの提案に乗ると思う。


「あのロリコンの秘密なら問題ないでしょうからぁ〜」

「ロリコン?」


俺が思わず口にした疑問に、

シアとセリィの視線もエルシェに集中した。


そして――


エルシェの目が、本気で軽蔑する色に変わる。


「あのドクズはですねぇ。

 当時400歳の……それも傷心中のヴェルちゃんに求婚したんですよ。

 自分が竜皇国に残りたいがために」


その時のことを思い出したのだろう。

いつもの間延びした語尾は影を潜め、感情を一切排したような硬い声になる。


「エルシェ……詳しく聞かせてくれるかな?」

「いいですよね、姉さま?」


訂正。

シアとセリィの表情からも感情が消えていた。


≪あれ……? 俺とシアたちに温度差がありすぎるのは……。

 気のせいじゃないよね≫


部屋の温度が数度下がったかのように錯覚するほどの、

濃密な殺気と怒気が充満している。


エルシェの話を聞いて怒りを感じるけど、

俺のものと、シアたちのものではあまりにも違い過ぎていた。


≪これが種族の違いなんだろうな……≫


はたして同じことを日本にいる家族にされたら、

俺も同じように怒れるだろうか。


エルシェは目を閉じ、一度深呼吸してから口を開いた。


「私もまだまだですねぇ~。

 シンシア様もセリィちゃんも、落ち着きましょうかぁ~」


そう言われた二人も、感情が抑えられていないことに気が付き、深呼吸して落ち着かせようとする。

しかし、エルシェと違ってまだ完全に抑えきれていないみたいだ。


「ふふふ……淑女ならぁ、

 ちゃんとコントロールできるようになりましょうねぇ~」


そう言ってエルシェは、

レオリクスの求婚について話し始めた。


その内容をまとめると――


新竜皇が即位する際、一定の年齢を過ぎた竜は、

前竜皇と共に隠居する決まりになっている。


その隠居先は、“久遠の竜都”と呼ばれ、

一度そこへ向かえば、許可なく竜皇国へ戻ることは許されない。


年齢の範囲に入っていたレオリクスは、

竜皇国に残るため、皇女であるヴェルミナさんへ求婚したそうだ。


「当時400歳のクール美少女に、

 3200歳の老害がですよぉ~?

 殺したくなるではないですかぁ~」


口調はいつものそれだが、その瞳には狂気の光しか宿していない。


しかし、その感情にも納得する。


だって、現代日本で例えるなら、

女子大生に40代中盤の男が求婚するようなものだろ。


≪好きあっているならともかく、そうじゃないなら特にさ≫


しかも、ヴェルミナさんの父、

竜皇リオネス様は当時2100歳だったそうだ。


さすがに自分の父より1000歳以上も

年上の相手からの求婚ってどうなのだろうか。


「確かにロリコンって言われても仕方ないな……」


厳密には違うのだろうけど、歳の差がありすぎるのは事実だ。


「どうしようセリィ……私、殺意が収まらない」


「わかります……が抑えましょう。

 相手は執行者です」


そう言いながらも、二人の視線は鋭く、

握りしめた手の甲には白く血の気が引いていた。


そんな状況に、どうすることもできずエルシェに視線を向けると――。


彼女のシアとセリィを見る表情は、とても穏やかだった。


見た目は中学生ほどなのに、

そこにいるのは、間違いなく大人の女性に見える。


しかし、すぐにいつもの調子に戻り、

エルシェはパンパンと手を鳴らす。


「先代竜皇様が制裁しましたのでぇ、

 シアちゃんもセリィちゃんもぉ、ヴェルちゃんには内緒ですよぉ~」


確かに、それなら掘り返さない方がいいだろう。

二人もなんとか、怒りを鎮められ始めているようだ。


≪竜族は、想像以上に繋がりを大切にするんだなぁ≫


そう思っていた時、ふと違和感が湧いた。


「あれ、シア……ちゃん?」


しばしの沈黙。


そして――


「エルシェー!」


さっきまでとは一転して、

感極まったシアがエルシェに飛びつこうとする。


しかし、すっと避けられてしまい――。


ドゴン!


「はうっ!?」


壁に見事な顔面ダイブをした。


普通なら心配するところなんだけど、

【天竜燐】のおかげで痛みはないと分かっている俺とセリィは苦笑する。


「酷いよエルシェ!どうして避けるの!?」


「あのまま飛びつかれてしまってはぁ、

 竜妃様に怒られてしまいますからぁ~」


「お母さまに……?」

「もちろんご報告しますよぉ~♪」

「それはダメだよ!?」


「それよりもぉ、淑女らしくお座りになるのが先ではぁ~?」


そう言われたシアは、一瞬で竜皇女然とした雰囲気になり、

自分の席へと静かに座る。


「ユウト、先ほどは見苦しい姿をお見せしました。

 ではエルシェ、今後について話し合いましょうか」


「おやおやぁ~。可愛いシアちゃんとのおしゃべりは終わりですかぁ~?」


「どうしたらいいの私!?」


そんなやり取りに、

俺とセリィは笑いを堪えきれず吹き出す。


シアはその様子にぷくぅっと頬を膨らませたが、

つられて笑い始めた。


そうして穏やかさを取り戻した部屋で、

俺たちは今後について話し合ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ