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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二部 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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73/80

73.吊るされ皇女様と、不穏な気配

「さて、ユウト……話を聞かせてくれるかい?」

「え~と、さっきの戦いのことですよね?」

「当たり前じゃ! 何じゃ、あの魔法は!?」


カイルとの戦闘を終え、控室で一息ついていた俺のもとに、

エリオスさんとヴェルミナさんが、突然やって来て問い詰められていた。


ちなみに、こういう場面で必ず暴走するシアはというと――


「ねぇ、セリィ? 降ろしてくれないかな?」

「ダメです。そんなことをしたら、ユウト様に抱きつくではありませんか」


「でもこのままだと、皇女としての威厳がなくなっちゃうよ?」


「大丈夫ですよぉ~。

 他の方がいらしたら幻影で隠しますのでぇ~!」


「そういう問題なの!?」

「それとぉ、これはヴェルちゃんの指示ですのでぇ~」

「お姉さまの!?」


扉を開け放ったシアは、一直線に飛びつこうとしてきたのだが、

セリィ特製の迷子紐によって捕獲され、そのままエルシェが天井に生み出した

氷のフックへと引っ掛けられ、宙吊りにされたのだ。


そんなシアはヴェルミナさんへ恨めしそうな視線を向けている。

しかし彼女は気にも留めず――。


「騒がれては聞けるものも聞けぬし、この後の面倒ごとへの対処も遅れるからな」


バッサリとした言葉に、シアは「ガーン!」と声を上げ、

わかりやすく打ちひしがれていた。


……どうやら、残念皇女は今日も平常運転らしい。


≪というか、どんどん扱いがエスカレートしてる気もするけど……

 気にしたら負けだよね≫


そんなことを考えていると、『ユウト~……』というシアからの【思考伝達】が届いた。

しかし俺にはどうしようもないので『ごめん……』とだけ返す。


すると、ショボーンとした表情でうなだれるシアが目に入り、

可愛いと思ってしまったことは心に秘めておく。


ふと後ろからの視線に気づいて振り向くと、

エルシェが口パクで『サディストですねぇ~』と言ってきた。


どうやら、彼女には速攻でバレたらしい……。


≪相変わらず勘がいいというか……≫


どういうわけか俺の考えが筒抜けなエルシェに、

ドSにだけは言われたくないな……という視線を返してやる。


しかし、エリオスさんからコホンという咳払いが聞こえ、

俺は慌てて説明を再開した。


「え~と、竜縛系と竜弾系、それから竜砲系については?」


「あれらの魔法は話に聞いておったから問題ない。

 じゃが、最後の“魔法陣”を使ったものは聞いておらぬ!」


あれはカイルとの戦闘中に【見識】が作り出したものだから、

みんなの反応は当然だ。


俺は「ですよねぇ~」と苦笑しながら説明を始める。


魔法陣の効果は三つ――


一つ目は、身体能力と魔法性能の強化。


特に魔法の発動速度まで強化できるのは大きい。


決着をつけるため、大半の力を集中させただろうカイルの攻撃は、

通常のドラグウォールでは間に合わなかったし、防ぎきれなかった。


≪竜力とスキル、さらに魔法陣を重ねなければ、

 うまくはいかなかっただろうな≫


二つ目の効果が、【竜人化】の補助。

これにより不安定だった【部分竜化】も安定させることができた。


≪まあ、自由に飛ぶにはまだ練習が必要だけど……≫


そして三つ目は、カイルが最初に使った魔法――

煌陽監獄ヘリオス・プリズン”を解析しなければ生まれなかった効果だ。


「なるほど、魔法陣を用いた“属性変換”か……」


「考えたのう……。確かにそれであれば、適正がなくとも

 短時間であれほどの効果を出せるじゃろうな」


この世界では、スキルがなくとも大半は“技術”で代替できる。

剣術や体術、錬金術がそうだ。


だが、スキルの方が“魂へ定着”しているため性能が高い。


「でも姉さん……」

「わかっておる……」


エリオスさんの言葉に、目を閉じて考えていたヴェルミナさんが頷き、

真剣な表情で俺を見据えた。


何か悪いことをしてしまったのだろうかと、不安が胸をよぎる。


「よく聞け、ユウトよ……。

 慣れぬ間は“属性変換”を使うでない。

 あのままでは死人が出る」


その言葉に、俺は思わず冷や汗をかく。

だが危険性は理解しているつもりなのですぐに頷いた。


≪なにしろ、双竜家でありセリィを圧倒できるカイルが

 あそこまで黒焦げだったもんな≫


体中を焦がされながらも攻撃してきた生命力には驚かされたが、

聖炎のような炎で回復できるカイルを、あの一撃で沈めたのだ。


もし一般人を巻き込めば、取り返しのつかないことになる。


すると、これまで静観していたエルシェが歩み寄り、口を開いた。


「そろそろ弟君には必要ではないでしょうかぁ~?」


表情こそいつも通りだが、声色は真剣そのもの。


それがわかっているのか、

ヴェルミナさんとエリオスさんは複雑そうな顔をする。


俺は言葉の意図がわからず、質問しようとしたその時――。


コンコンコン……


そう扉をノックする音が響いた。


エリオスさんの側近がすぐに動き扉の外へ出ると、

すぐに焦った表情で戻り、小声で報告する。


どうやら、悪い知らせのようだ。


エリオスさんは表情を険しくし、そのまま扉の外へ出ていった。


「お兄さまがあんな顔するのって珍しいよね」

「想定以上の面倒ごとが来たようじゃな……」


いつの間にか解放されたらしいシアがヴェルミナさんに声をかけると、

彼女は真剣な視線を扉へ向けたまま答える。


しばらくして、訪問者は帰らせることができたのか、

エリオスさんが側近と共に戻ってきた。


だがその表情は重く、俺たちの前に来ても黙ったままだ。


「エリオスよ、何があった?」

「……そうだね。ここにいる面々には早めに伝えておくべきだろう」


ヴェルミナさんに問われ、エリオスさんは一度全員を見渡し、

最後に俺へ視線を止めた。


予想通り、俺の話題らしい。

しかも表情から察するに、かなり悪い方の……。


「結論から言うと、“竜の天秤”の一人がユウトに会わせろと要求してきた」

「なんじゃと……?」

「え!? それでどうなったのお兄さま?」


「今は追い返したから大丈夫だよ。

 いくら彼らでも強硬手段は取れないからね」


エリオスさんの口にした“竜の天秤”という言葉に首を傾げていると、

セリィが静かに教えてくれる。


まとめると――


・彼らは竜族の掟により、先代竜皇と共に表舞台から退いた者たち。

・その中から選ばれた者たちが国の統治に問題がないかを調査し、竜皇へ進言する。

・場合によっては、不穏分子の排除すら行う存在。


聞く限り、先代竜皇と一緒に隠居した老人たちというイメージだが……。


そんな俺の疑問に、ヴェルミナさんが答える。


「ユウトの言いたいことはわかるがな。

 退いた者の中には、父上と同格かそれ以上の者もおるのじゃよ」


その言葉に、思わず言葉を失う。

つまり、現段階で竜国最強の竜皇リオネス様以上の存在がいるということだ。


詳しくは後でエルシェから聞くとよい――

そう言って、ヴェルミナさんは話を戻した。


「でも、なんで俺に?」

「おそらく、ユウトが見せた力――特にあの魔法陣だろうけど……」


「それだけではなかろう。

 シアの魂約者という点もじゃ!」


ヴェルミナさんの言葉に、エリオスさんも「確かにそうだね」と頷いた。


「え~と、すみません……話についていけそうにないです」


そう言うと、全員の視線が俺に集まり、張りつめていた表情が緩む。


≪その子供を見るような視線、恥ずかしいのでやめてもらえませんか?≫


いたたまれなさに耐えていると、

エリオスさんがエルシェへ視線を向けた。


「知っていることはあるかい?」


「そうですねぇ~。機密も含まれますからぁ、

 この後お時間をいただけますかぁ~?」


そう言って彼女はセリィへ視線を送り、

「私がいない間はお願いしますねぇ~」と微笑む。


「お任せください!」


「じゃぁユウトには私の部屋で――」

「「それは早い!?」」


エルシェがいない間に自室へ招こうとするシアを、

エリオスさんとヴェルミナさんが同時に却下した。

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