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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二部 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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62/80

62.崩れ始めた平穏と、もう一つの双竜家

それから、さらに数日の時が過ぎ――


俺の周囲は、かなり慌ただしくなり始めていた。


ヴェルミナさんは、ドワーフ国に素材が集まったとのことで出向き、今は不在にしている。

どうやら俺の武器を作ってくれるとのことで、王国にいたときに依頼していたらしい。


最初は防具を作る予定だったみたいなんだけど――。


「そんな希少素材で作るんですかぁ~? 【天竜燐】のある弟君にぃ~?」


というエルシェの発言に、ヴェルミナさんだけでなく、

エリオスさんやシアまで『あっ!?』という表情になっていた。


その結果、俺の意見も取り入れつつ、防具は軽装に。

代わりに“ある武器”をしっかり作り込んでもらうことになった。

完成するかは分からないが、もし実現すれば――俺のあるスキルが本領を発揮できそうで、今から楽しみだ。


エリオスさんは、溜まっていた公務に加えて、視察や上位華族との会議に出席する日々を送っている。


シアも補佐として同行したり、

竜妃であるシルヴィア様や他の華族女性たちとのお茶会に出席したりしていて、

自然と俺とは別行動になることが増えていた。


「もう酷いよ! 今までこんなことなかったのに、

 私がユウトと魂約したからって、急に交流しましょうなんてさ!」


「仕方ありませんよ……。

 シア様が魂約なさるなど、誰も想像していませんでしたから……」


「代わってよセリィ!?」

「イヤです♪」


……というシアの愚痴を聞いてなだめるのが大変だったと、セリィが教えてくれた。

ちなみに、シアの専属メイドであるセリィは、現在エルシェとともに俺の世話をしてくれている。


どうやらこの数日で、俺への面会依頼が殺到しているらしく、

その大半をエリオスさんだけでなく、竜皇のリオネス様まで対応してくれているらしい。


≪まさか一般高校生が、本物の華族と面会する日が来るとは……≫


現在の俺は、戦闘訓練に加えて社交の勉強もエルシェから叩き込まれている。

そうしなければ、シアの魂約者として正式なお披露目ができないからだ。

お披露目ができなければ、当然ながら誰とも会えない。


……はずなのだが。


実際には、直接会いに来ようとする人たちもそれなりにいるのが現状だったりする。


≪なんでよりによって、エルシェがいないタイミングで……≫


現在、彼女は別の用事で席を外している。


そのため俺の護衛兼メイドはセリィのみで、

普段はエルシェと二人体制で問題なく対応してくれていた。


……が、今回はそうもいかない。


ここは“皇族専用”の訓練場で、使用できる者は限られている。


つまり――


「セリィ……あそこにいるのって……もしかして?」

「はい……申し訳ありません、ユウト様」


どうやら、俺の予感は的中していたようだ。


以前エリオスさんから聞いた話では、

この訓練場は皇族と、それに“近い華族”しか利用することができる。


しかしあらかじめ申請をする必要があるため、

鉢合わせすることはほとんどない……はずなのだが……。


「やられました……。

 おそらく、申請を通していたことを隠していたのでしょう」


「そんなことできるの?」


「あの方なら簡単にできます……。

 私が対応しますので、ご安心ください」


セリィと小声で打ち合わせをしながら、

俺たちは不意の来訪者たちのもとへと歩いて行く。



――――



俺たちが三人の来訪者の前まで来ると、

中央に立つ男が、俺を値踏みするような視線を向けてきた。


彼は薄い金髪にルビーのような瞳を持つイケメンで、

軽装の鎧を身につけている。


右側に立つ男は、炎のように紅い髪と、

中央の男よりもさらに濃い、まるでガーネットのような瞳をしていて、

身長もこの場で最も高い。


≪正直、金髪イケメンよりも……威圧感というか、存在感が段違いだ。

 もしかして、こっちはお目付け役なのかな?≫


そしてもう一人。

いかにも軽薄そうな男で、茶髪に緑の瞳。

顔や手の甲には鱗が見え、おそらく中級竜の騎士だろう。


そんなふうに観察していると、

じろじろと見てきた金髪イケメンが口を開いた。


「よう人間! この俺様を待たせるとは、偉くなったもんだなぁ?」


「無礼が過ぎますね。

 まずは名乗るのが礼儀ではありませんか?」


セリィが鋭く睨みながらそう返すが、相手は気にした様子もない。


「あん? なんで俺様が、ひ弱な寄生虫に名乗らなきゃなんねぇんだよ?」


「ヴァルグラディオ家の教育を疑う発言ですね。

 この件は報告のうえ、抗議状を送らせていただきましょうか?」


セリィの言葉に、赤髪のイケメンが慌てて耳打ちする。

それを聞いた男は「チッ」と隠す気もなく舌打ちした。


「……双竜家が片翼。

 ヴァルグラディオ家次男、カイル・ヴァルグラディオだ。

 言っとくが、これ以上はやらねぇからな」


カイルと名乗った相手は、


「お披露目もまだな寄生虫には、これでも過ぎた挨拶だからな!」


などと吐き捨ててきた。


≪それなら会いに来るなよ……≫


と、俺もセリィも内心では思ったが、

挨拶を受けた以上、こちらも返さなければならない。


「シンシアの魂約者、霧島悠斗だ。

 この国ではユウト・キリシマと名乗った方が伝わりやすいだろう。

 知っての通りお披露目前なので簡易な挨拶になるが、よろしく頼む」


ラノベの貴族キャラを参考に、できるだけそれらしく返したつもりだが、

カイルは露骨に不機嫌そうな表情を浮かべた。


確定ではなかったらしいが、かつてシアの魂約者候補に名が挙がっていたと、

エルシェから聞いたことがある。


≪まあ、事実がどうあれ、寝耳に水だったろうな……≫


同情する気はないが、ひとまず練習通りに対応できたことに安心する。

あとはセリィが何とかしてくれるだろう。


「では、ご用件をうかがいましょうか?」


「あん? なんでテメェに言わなきゃなんねぇんだ?

 俺様が話してんのは、ソイツだろうが!」


「ソイツではなく、ユウト様です。

 先ほど名乗られたばかりですが、お忘れになったのですか?」


「テメェ……誰に向かって――」


「そこまでです!」


やり取りが激化しかけたところで、

赤髪のイケメンが前に出て割って入った。


「お披露目前のご無礼、誠に申し訳ございません。

 重ねて失礼とは存じますが、発言の許可をいただけますでしょうか?」


突然の丁寧な申し出に戸惑い、セリィを見ると軽く頷いてくれた。

許可を出すと、彼は一礼して口を開いた。


カイルは不貞腐れている様子だが、口を挟むつもりはないらしい。


「私は、カイル・ヴァルグラディオ様の筆頭護衛騎士。

 レオン・ヴォルフレイムと申します」


レオンと名乗った彼の説明をまとめるとこうだ。


・防御性の高いこの訓練施設で、本格的な模擬戦を行うために来たこと

・事前に申請を行い、許可も得ていること

・俺たちが急遽使用することになり、連絡が行き違った可能性があること

・これまでにも似たようなことが何度かあったこと


≪いや……予期せぬ事態って割には、完全に待ち構えてた感あるけど?≫


という疑念も浮かんだが、こういう場では体裁が大事なのだろう。


「なるほど……。

 確かに最近は、ユウト様の戦闘訓練のためにこの訓練場を使用しておりました。

 ですが、それについては事前に通達があったと聞いておりますが?」


「その件につきましては、弁明の余地もございません。

 しかし、この優秀な訓練場を皇族に独占されてしまっては、

 武を司るヴァルグラディオ家としても立場がございません。

 それが一週間以上ともなれば、

 この訓練場を管理するヴォルフレイム家としても同様でございます」


最後に「連絡が行き届かず申し訳ありません」と頭を下げるレオンさん。

だが、それまで黙っていたカイルが口を開いた。


「こっちはさんざん譲歩してんだ。

 少しくらい使っても問題ねぇだろ?」


「カイル様!?」


どこか、うちの高校にいた問題児・獅童と似た匂いがする。

とにかく自己中心的で、レオンさんの制止もまるで聞く気がなさそうだ。


それどころか――


「どうせ模擬戦する気だったんだろ?

 おい、寄生虫! 俺様がお前と戦ってやるよ!」


……などと言い出した。


その提案に、俺もセリィも思わずレオンさんを見る。

だが意外にも、今度は止める気がないようだった。


≪うわ……これ、最初からそれが目的だっただろ……≫


セリィも同じ考えだったのか、表情が険しくなる。

それでも冷静さを崩さず、対応しようとしてくれるのが心強い。


「ご理解なさっているのでしょうか?

 ユウト様は、まだお披露目前なのですよ?」


「そんなの、非公式でやりゃいいだけだろ……。

 第一、お前らが乱入してきて、俺様たちの訓練を邪魔したんだろうが」


セリィが反論しようとした、その直前。

カイルの口から、さらに最悪の言葉が飛び出した。


「ああそうか! 半端者には、俺様の考えなんて分かんねぇか!」


そう言ってアッハッハッハと笑う金髪イケメンに、セリィの雰囲気が変わる。


「……今……何とおっしゃいましたか?」


空気が一気に張り詰め、体感温度が数度下がったのではないかと錯覚する。


しかも、別の側近が、

「本当のこと言ったらダメですよぉ~、カイル様~!」

などと軽口を叩いている。


俺は知らなかったが、セリィは側室の娘らしい。

しかも、その母親は――


「あんなに粋がってたくせに、

 俺様たち竜族が参戦したら、あっさり大敗した魔族。

 それも献上品の子供だもんなぁ?」


ニヤニヤと嘲るように言い放つカイルに、

さすがの俺も限界を迎え、口を開こうとした――その瞬間。


セリィの手から放たれた数本のナイフが、カイルへ飛んでいった。


俺からは見えないが、

彼女の全身から、底冷えするような気配が立ち上っていた。

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