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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二部 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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48.竜妃の黒い微笑み――帰国した皇女の受難

昨日は、準備があるからとシアたちは部屋から出て行き、

一人になった俺は夕食の時間までゆっくりしようとベッドに横になった。


……のだが、気づけばすぐに眠ってしまっていた。


結局、セリィが呼びに来るまで夢の中にいた俺は、あくびをしながらベッドから降りて合流した。


最近やたらと眠くなるのは、竜力が体に馴染もうとしている影響だって

ヴェルミナさんが言ってたのを思い出す。


≪って言われても、さすがに即落ち&熟睡するとは……≫


眠くなったら無理せず寝るようにしているのだけど、一人で考え事をすることもできないのは考えものだ。


≪まあ、そのほうが馴染むのも早いって話だしな。

 それに原因はきっとこのベッドにもあるだろ……≫


王国の客室のベッドも十分すぎるほど寝心地が良かったが、

竜皇国のベッドはそれをはるかに上回っている。


穏やかな陽だまりを雲で包み込んだような寝心地で、

正直もう他のベッドでは満足できなくなりそうだった。


そんな馬鹿なことを考えながら、いざ晩餐会場へ……。

そう、晩餐会。


≪さすが皇族……。帰国した日の晩には、こんな豪勢な料理が並ぶとは……≫


ちなみに俺の服装は元の世界の学生服だ。

竜妃様はもちろん、シアやヴェルミナさんはドレスで着飾り、

竜皇様やエリオスさんも正装をしているので、どうしても場違い感が拭えない……。


≪ラノベ主人公たちは鋼のメンタルを持ってるに違いない。

 いくら学生服は礼服と同義だからって、一人だけ浮いている感覚が拭えない……≫


王国では俺以外にも義孝や友莉、奏もいたから良かったけど、ここでは俺一人……。


≪ホームシックになる人の気持ちがわかる気がするな……≫


とはいっても、家族だけで行う小さなものだから、まだマシなんだけどさ。


そんなことを考えながら、座って待っていると料理が並び終わる。


「今宵は、無事に帰国した我らが子たちと、

 異世界より来た勇者――そして、シンシアの魂約者を迎える祝いの席だ。

 堅苦しい話は抜きにして、今夜はゆっくりと食事を楽しもう」


そう言って竜皇様が言い、晩餐会が始まった。

並べられた料理は五つ星レストラン顔負けの豪華さだった。


≪いや、五つ星レストランなんて行ったことないけどさ。

 でも、こんなにうまいもの、日本でも食べたことないよ……≫


異世界の一般人が国のトップと何を話せばいいのか、などという悩みも、

料理の美味しさの前ではきれいさっぱり吹き飛んだ。


ちなみに竜皇様たちと会話した感想は、威厳はあるがいい意味での親バカとだけ話しておこう。

そして竜皇様は、竜妃様の尻に敷かれてるんだろうなぁとも……。


とにかく、晩餐会を存分に楽しませてもらった俺は自室へ戻り、

今度は朝までぐっすりと夢の中に旅立った。



――――



そして、翌日――。


『おはようユウト! これから迎えに行くけど、いいかな?』


というシアからのモーニングコールで目を覚ました俺は、

とりあえず返事を返してから起き上がり「う~ん……」と伸びをした。


するとタイミングを見計らったかのように、扉がノックされる音が響く。


シアがもう来たのかと思ったのだが――


「ユウト様、お目覚めでしょうか?」


扉越しに聞こえてきたのは、セリィの声だった。


俺は慌てて身なりを整え、部屋に入ってもらう。

しかし、そこにシアの姿はない。


「おはようございます! ユウト様!」


「うん、おはようセリィ。

 シアから【思考伝達】で、こっちに来るって聞いてたんだけど?」


俺がそう聞くと、セリィは「だと思いました」と、

どこか呆れたような口調で説明してくれた。


「シア様がウキウキしたご様子でお部屋から出てこられましたので、

 そのまま朝食の席へご案内しました」


どうやら俺のところへ向かおうとしたところを、

セリィに捕まったらしい。


≪でもシアならこっそり抜け出してきそうだよね……≫


という疑問が顔に出ていたのか、セリィはあっさりと否定する。


「問題ございません。

 シア様は椅子にお座りいただいた後、私の縄で固定しましたから!」


眩しい笑顔でそう言われ、

「あ、そうなんだ……」と苦笑しながら返し、

俺たちは朝食をとるため食堂へ向かうのだった。



――――



俺たちが食堂に入ると――


「おはようございます、ユウト。

 昨夜はゆっくりお休みできましたか?」


そう声をかけてきたのは、

いかにも“皇女然”とした雰囲気のシアだった。


その姿に、俺は一瞬フリーズする。

座っているだけなのに、気品がにじみ出ていて、

いつもの残念さがまったく感じられないのだから……。


「えっと……シア?」

「はい、そうですが? どうかなさいましたか?」

「いや……いつもと雰囲気が違うなって思ってさ……」


俺の率直な感想に、

シアの隣に座る女性の肩がピクッと揺れた。


それに反応するように、

シアの額から一筋の汗が流れるのが見える。


「い、嫌ですねユウト!

 私はいつもと変わらないではありませんか?」


冷や汗をかきながらも微笑むという、

なかなか器用なことをしつつ返してくるシア。


その様子を見て、

俺はふと隣の席へ視線を向け――納得した。


そこには、“シアのお母さん”が座っていたのだ。


≪なるほど……。

 シルヴィア様が隣にいるから、皇女様らしくしてるわけか……≫


それなら、さりげなく席を離れることもできそうなものだが――


――補足――


竜皇女シンシアは現在、逃走方法を必死に思考中。

しかし、魂約者であるマスターへの【思考伝達】は、

竜妃シルヴィアによって察知されるため断念。


席を立っての離脱も、

セリーネの竜燐で作られた“不可視の縄”により不可能。


現在、マスターへの救援を求めていると推察されます。


――。


そんな、なんとも気の毒な状況を知り、

俺は苦笑しながらシアの向かいの席に座った。


ちなみに、竜皇様の名はリオネス様という。

昨日の晩餐会で自己紹介を済ませており、

今ではお互い名前で呼び合う仲になっている。


≪そういえば、この謎の声――

 【見識】スキルのことも、あとで相談しないとな≫


これまで何となく後回しにしていた疑問。

脳内に響く“謎の機械音声”について……。


≪毎回助けられてるし、竜皇国に向かっている道中も

 頭の片隅にはあったんだけど後回しにしちゃってたんだよな≫


そんなことを考えているうちに、

朝食が次々と俺の前へと並べられていく。


メイドさんたちが離れたあと、

竜妃様――シルヴィア様が、俺に話しかけてきた。


「昨晩は、夫と娘が失礼しましたね。

 ゆっくり休めましたか?」


「はい!

 食事もとても美味しかったですし、

 ベッドも寝心地が最高で、熟睡できました」


俺の答えに、シルヴィア様は嬉しそうに微笑んだ。


昨晩の「失礼」というのは――

おそらく、リオネス様が俺とシアの魂約について絡んできたことだろう。


シアが照れながらはしゃぐものだから、

我慢の限界を迎えたシルヴィア様が、二人を会場の外へ連れ出していった。


その後、少しして戻ってきた二人の顔は、

見事なまでに真っ青になっていた。


≪あの時は連れ出されていなかったはずの

 ヴェルミナさんやエリオスさんまで

 表情が固まってたし……。

 シルヴィア様、怒ると相当怖いんだろうなぁ……≫


そんな出来事もありつつ、

朝食はシルヴィア様とシアと一緒に、穏やかな雰囲気のまま終わった。


そして今、俺たちは自室へ戻ってきている。

シアとセリィも一緒だ。


部屋に入った瞬間――


「怖かったよぉ~……!」

「自業自得ですよ、シア様……」


セリィに抱きつきながら、

シアが半泣きでそう叫ぶ。


どうやらセリィも、

シルヴィア様の怖さをよく知っているらしく、

シアを優しく慰めていた。


その後、セリィが淹れてくれた紅茶を

三人でゆっくり楽しんでいると、

ようやく落ち着いたのか、シアが昨日の話を切り出す。


ちなみに、このメンバーだけのときは、

セリィも一緒に紅茶を楽しんでいる。


「よし、ユウト!

 さっそく特訓を始めよう!」


「特訓って……昨日言ってたやつ?」


「うん!

 実は昨日、お父さまに相談したら、

 皇室の訓練場を貸してくれるって!」


「皇室の訓練場というと……

 一部の者しか入れない場所ですね」


「セリィも行ったことあるの?」


「はい。

 私の家は双竜家ですし、シア様の専属メイドなので、その際に何度か。

 確かに、ユウト様の特訓にはちょうど良い場所だと思います」


どうやらその訓練場は、

防御や隠匿といった面でも優れており、

他の場所とは一線を画しているらしい。


「じゃあ!

 今から行ってみよう!」


そう言って笑うシアの表情は、

朝食の席で見せていた皇女然とした姿とは違う、

年相応の、活発な少女のものだった。


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