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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二部 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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47.いびつな姉妹と、幻術の恐怖

「申し訳ありませんでした、ユウト様!」


エルシェリアが去ってから少ししてから、セリィが目を覚ました。


すぐに状況を思い出した彼女は周囲を警戒していたが、

俺が「もう大丈夫だよ」と声をかけると、

彼女は安心したように深々と頭を下げてきた。


「いやいや、セリィは何も悪くないよ!

 むしろ、お礼を言いたいくらいだ。ありがとう!」


そう言ってから、「腕は大丈夫なの?」と尋ねる。


彼女は何か言いたそうに一瞬口を開きかけたものの、

このままでは話が進まないと判断したのか、

いったん言葉を飲み込んでから、


「……はい、大丈夫です!」


と答え、その理由を俺の部屋へ向かいながら話してくれた。


「あれはエルシェ姉さまがよく使う幻術ですので、

 実際には腕が凍りついて落ちたわけではないのです」


「いやいやいや!

 あれが幻だったって方が、逆にビックリなんだけど!?」


驚いてツッコむ俺に、

セリィは苦笑しつつも、すぐに真剣な表情になる。


「ですが、とても危険な術なのは変わりありませんよ?」


どうやら、腕が“凍りついて落ちた”と脳が錯覚すると、

再生するタイプのスキルを持っている相手は、その部分を再生しようとしても、

実際には存在しているため、拒否反応のようなものが出るらしい。


しかもそれは、何も知らない人の魔法や薬といった外部の力にも影響するらしく、

最悪の場合、二度と動かなくなってしまうこともあるらしい。


≪精神干渉系が危険だとは思ってたけど……

 実際に体験すると、洒落にならないな≫


身震いしながら、ふと疑問が浮かぶ。


「あれ? でも俺って、そういう干渉系に耐性なかったっけ?」

「【天竜燐】のことですね」


確かに、あれがあればセリィの状況も見破れたはずだ。

実際、エルシェリアが俺に触れたときも影響はなかった。


そう思っていたのだが――。


「幻術には大きく分けて“幻覚”と“幻影”の二種類があります。

 そしてエルシェ姉さまは、それを同時に使っていました」


幻覚は精神に、

幻影は視覚情報に作用する。


俺の場合、

“セリィの腕が凍りついて落ちた”という強烈な視覚情報が、

【竜識眼】の看破能力を上回っていたため、

見抜くことができなかったらしい。


一方、俺に触れられたときは、

“凍らせようとする幻影”そのものを、

【天竜燐】が弾いてくれていたようだ。


「……とんでもないお姉さんだね」

「申し訳ありません……」


ちなみにセリィは、

あれがエルシェリアの常套手段だと知っていたため、

“そこに腕があると仮定して”、

自分の腕に短剣を突き立てたのだそうだ。


≪……住んでいた世界の違いを、

 嫌でも実感するな≫


平和な日本では、まず起こり得ない出来事だ。


仮に起きたとしても、

セリィのような判断と行動が、

即座に取れる人間はほとんどいないだろう。


それから少しして、

俺にあてがわれた部屋に着き、中へ入ると、

セリィが黙って紅茶の準備を始めてくれた。


「ありがとう。

 でも今回は、セリィも疲れただろ?

 一緒に座って、少し休もうよ」


あんな短時間で、

肝が冷えるような体験をしたのだ。

彼女の心労も、相当なもののはずだと思う。


だがセリィは、

「私はメイドですので」と、

やんわり首を横に振って断ってきた。


――だから、少しだけ策を講じることにした。


「ねぇセリィ。

 俺って、セリィの主になる予定なの?」


「そうですね。

 シア様の専属メイドですので、

 魂約者であるユウト様も、私の主にあたります」


うーん。

少し違う気もするが……都合がいいので流す。


「じゃあ、命令!

 一緒に休憩しよう!」


「……」


セリィは一瞬フリーズし、

やがて意味を理解したのか、

拗ねたように顔を赤くして俺の向かいの椅子に座った。


そして、ジトっと俺を睨み――


「ユウト様からの、

 初めてのご命令なのに……酷いです!」


その抗議が可愛すぎて、俺は必死に平静を装う。

しかし、まともに顔を見ることができなかった。



――――



それからしばらく、

俺たちはいろいろな話をした。


竜皇国での生活についてや、

これから接触してきそうな人物、

そして、それに伴うトラブルの可能性など……。


驚いたのは、エルシェリアが言っていた

「妹をめでるのは姉の特権」という言葉が、

どうやら本当らしいということだ。


実際、あの異常性を持つ少女は、

セリィを大切に思っているらしい。


「私の生い立ちは少し複雑ですが、

 父と二人の母、そして二人の姉には、大切にしてもらっていますよ」


「なるほどね……

 でも、あの姿を見ちゃうとなぁ……」


俺が正直な感想を漏らすと、

セリィは安堵したような、

それでいて少し寂しそうな表情を浮かべた。


「……ユウト様は、

 私の生い立ちについて、

 ご興味はありませんか?」


「え? あ、いや違う違う!

 簡単に聞いていいことじゃないと思ったんだよ!」


その言葉に、

セリィは心底安心したように微笑み――

次の瞬間、いたずらっぽい表情になる。


「こんな時は、ご命令されないんですね?」

「……もしかして、根に持ってる?」


困ったように聞くと、彼女はクスクス笑うだけで答えず、

エルシェリアの話を続けた。


「エルシェ姉さまは、

 シア様に出会うまでの間、

 ずっと私のそばで守ってくれていたんです」


懐かしむように目を細めたセリィは、

次第に小さく震え始め――


「当時から、あの異常性は変わりませんでしたが……」


どうやら、あの性格は昔かららしい。

家族はもちろん、

シアやヴェルミナさん、エリオスさん、

さらには竜皇様たちからも注意されたが、

直らなかったのだとか。


「実力も実績も素晴らしい方なので、

 尊敬と感謝はしていますが……」


そう苦笑するセリィの表情は、“困った姉ですよね”と言っているようだった。


竜皇国のトップ陣営からの注意を聞かないってどんな実績だろうって思ったが、

どうやら彼女は国の暗部に属していて、単独行動が認められている数少ない諜報員らしい。


今はその実力を買われ、エリオスさんの影としても行動しているのだと

セリィは誇らしそうに話してくれる。


≪姉妹仲が悪くないのはいいけど……

 どうにかならないものかな≫


そんなことを考えていると、

扉をノックする音とともに、


「ユウト~?

 入ってもいいかな?」


というシアの声が聞こえてきた。


セリィはすっと立ち上がり、

俺の許可を得てから扉を開け、シアを招き入れる。


入ってきたシアは、明らかに疲れた表情を浮かべ、

無意識のように俺の座る椅子へ歩み寄ってきた。


だが――

セリィが後ろから静かに肩へ手を添え、

そのまま俺の向かいの席へと導き、座らせる。


「セリィ?

 疲れた精神には、ユウトの癒しが必要だと思うの」


「では、ユウト様と同じものをご用意しますね」

「ねぇ、聞いてる?」


その抗議は華麗にスルーされ、

紅茶が置かれる。


セリィは少し離れた位置に控えようとしたが――

今度はシアが、

自分の座るソファの隣をポンポンと叩いた。


「一緒に座ろ?」

「あのですね、シア様……?」


「この部屋、私たちだけだし……

 セリィも疲れてるでしょ?」


何かを察したその言葉に、

俺とセリィは顔を見合わせ、苦笑する。


そして、

エルシェリアとの一件を話すと、

シアは――


「そっかそっかぁ……

 エルシェと、そんなことがあったんだぁ……」


と、不穏な気配を漂わせ始めた。


「し、シア……?」

「し、シア様……?」


声をかけると、その雰囲気はすぐに霧散したが、

今度は目を閉じて何かを考え込む。


そして、顔を間近に寄せるほど前に乗り出し――


「ユウト!

 明日から特訓しよう!」


と、キラキラした笑顔で言い出したのだった。

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