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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第一部 王国に召喚された魂約者

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38/79

38.燃料の過剰供給!? 制限付きチートの“なめプ模擬戦”ついに開幕!

友莉が義孝の闘志にガソリンぶちまけた日から、数日後――。


朝食を終えた俺は、エリオスさんに呼ばれて部屋を訪れていた。


「さてユウト、僕たちは明後日に帰国することになったよ」

「急な日程になってしまってすまんな。予定よりも長く滞在してしまったゆえ、これ以上は延ばせんのじゃ」


シアとの魂約や増禍薬事件の対応で予定が大幅に狂っていたが、ついに――

俺が竜皇国に行く日が正式に決まったらしい。


「分かりました。確かに驚きましたけど大丈夫ですよ! 他のみんなにも挨拶しておきますね!」

「ごめんねユウト……」


「シアが謝ることじゃないよ! それに、竜皇国に行くのは正直ワクワクしてるからさ!」


おそらくシアは、俺の意思を聞く前に魂約したことを気にしているんだろう。

でも正直、俺は結構感謝しているんだよね。


≪シアがいなかったら……獅童のパシリにされて異世界ライフなんて送れなかっただろうし……≫


俺が笑って返すと、シアもほっとしたように微笑んだ。


「あ、エリオスさん、ヴェルミナさん。実は少し相談があって……」

「ん? なんだい?」


俺は義孝との模擬戦の約束と、あの日の経緯をすべて話す。


「なるほど……それなら非公式で行えるよう、僕の方から国王陛下に進言しておこう」


「そうじゃな。ヨシタカ殿はこの国では勇者として注目されておる。

 観客は少ない方が良かろう」


どうやら義孝は、訓練を重ねた結果、今や普通の兵士では相手にならないらしく、

その成長速度に男女問わず城内での人気が急上昇しているみたいだ。


「もうそこまで強くなってるとは……さすが万能王子」


と俺が呟くと、隣のシアが即座に俺へ向き直り――


「大丈夫! ユウトなら絶対に勝てるから!」


不安がってると思ったのか励ましてくれる。


……いや、むしろ不安なのは義孝側なんだけどね。


「あ、ユウト。分かってるとは思うけど、竜力は使っちゃ駄目だからね?」

「むしろ攻撃系スキルは使用禁止じゃな」


……おっふ。

どうやら俺はイケメン王子に “なめプで勝て” と言われているらしい……わかってたけどさ。


≪まあ……シアから貰ったチートスキルがあるし、心配はしてないけど≫


それから少し模擬戦について話し合ったあと、出発までの流れや竜皇国の文化を教えてもらって解散。

翌朝の食事で、明日この国を離れることをみんなに告げた。


予想外に奏だけでなく友莉まで寂しそうな顔をしてくれた。

義孝は……闘志を燃やしていた。


うん、知ってた。


その日、他のみんなは普段通り過ごし、

俺はシアに監督してもらいながら【竜力循環】の練習をしていた。


スキル自体は持っているが、俺の場合は暴走すると部屋が吹き飛ぶ可能性があるので、

監督者がいない状態での練習はNGだ。


≪俺もその方が安心できるし……なにより“去る鳥 全て吹き飛ばす”とか笑えない≫


そんな風に、出発前の時間は模擬戦の準備をして穏やかに過ぎていった。



――――



翌日の早朝。

うっすら霧が残る王国第一訓練場に、俺と義孝は向かい合っていた。


「ついにこの日が来たな、悠斗! 手加減はできないから、本気で来てほしい!」


義孝は張りつめた気配をまとい、気合十分といった表情で俺に言い放つ。

左腕には小さい盾が取り付けられ、腰には剣が下げられているのを見ると、

スタンダードな戦闘スタイルでくるのだろうと予想できた。


「えーと……一応言っとくけど、竜力のせいでいろいろ制限されてるから、俺の“本気”はちょっと無理だよ?」


本気なんて出したら義孝を殺しかねないので、ここは正直に伝えたつもりだが――


「それなら俺もスキルを使わない!」


――義孝は真っすぐな目で宣言してきた。

いや、それはそれで困るんだけど……。


≪これじゃ友莉の“義孝の育成計画(今、勝手に命名した)”が成立しないだろうしなぁ≫


俺が肩をすくめたのが気に障ったのか、義孝は少し不機嫌そうに眉をひそめた。

そこで、友莉の言葉を思い出す。


――“痛い目”見せた方が成長すると思うのよ!


≪……つまり、ちゃんと“痛い目”にあってもらう必要があるわけだよなぁ≫


“スキルを使わなかったから負けた”と言う逃げ道を与えてしまうと、

友莉の言う義孝の成長にはならないと思った俺は少し“悪役”になることにした。


「まあ、好きにすればいいけどさ。義孝じゃ、本気出しても俺には勝てないよ?」

「……は?」


ひゅっと義孝の表情が変わる。

さっきまでの“真剣なイケメンフェイス”が、一瞬で“煮えたぎったアングリーフェイス”へとクラスチェンジした。


≪よし、こうなったらとことんいこう!≫


別に人をあおる趣味なんてないんだけど……

ちょっと楽しくなってきたのも事実だ。


それに、“イケメン王子”なんて呼ばれてた義孝の本気と、今の俺の能力の差がどれくらいあるのか――

単純に知りたくなった。


あとのことは友莉に任せるつもりで、悪役ムーブを楽しむことにする。


「悪いんだけど、俺にはシアからもらった“チートスキル”があるんだ。

 攻撃は手加減してあげる。 防御については……義孝が気にする必要はないかな!」


「つまり――俺の攻撃は、お前に届かないって言いたいわけだな?」


俺が軽く口角を上げてみせると、義孝の怒りゲージが一気に跳ね上がったのが分かった。


≪まあ、眼中にないと思ってた相手にここまで言われたら、そりゃ怒るよな……≫


そんな俺たちの空気を感じ取ってか、審判役のヴォルフさんが大声で笑った。


「ガッハッハッハ! 両者、戦う気は十分のようだな!」


今回の審判は、王国騎士団長のヴォルフさん。

ほかに何人かの騎士たちが観客席の護衛を兼ねて控えてくれている。


そして観客席には――


友莉、奏、ユリウス王子、イリス王女、エルフの女性騎士、ドワーフの少女。

さらに、なぜか獅童の姿もあった。


≪あの時返り討ちにされた俺の力を、確認しに来た……ってところかな?≫


彼の顔は、陰キャがボコられるのを楽しみに来た――というよりは、

“真剣に見極めようとしている”雰囲気だった。


俺がそんなことを考えていると、ヴォルフさんが大声で説明を始める。


「勝敗はどちらかが降参するか、戦闘続行不可能と俺が判断した場合だ!

 魔法と武器は訓練用の武器のみ。刃は潰してあるが鉄製だからな……。

 医療班も待機させてはいるが気をつけろ!」


「はい!」

「分かりました!」


義孝は腰に下げられていた鉄剣を抜き放つと

自分の武器の具合を確かめている俺に、少し低い声で告げてきた。


「悠斗。俺はこの数日でかなり鍛えた。

 ……なのに、お前はその俺を侮辱した。

 怪我したくなければ、本気で来い」


据わった目で告げてくる義孝に、俺は肩をすくめて返す。


「なら、本気を出させてみなよ」


≪……友莉、本当にフォローしてくれるんだよな? 大丈夫だよな!?≫


ここに来る前、友莉からは


「ちゃんとフォローしてあげるから、心を折る勢いでいっちゃいなさい!」


なんてことを改めて言われたけど――


≪……やりすぎた感しかない……≫


義孝の殺気を真正面から受けながら、俺は個人的に後で謝るべきか本気で悩む。


そんな中、ヴォルフさんが手を高く掲げ、声を張った。


「これより、ヨシタカとユウトの模擬戦を行う。両者、準備はいいか?」


「「はい!」」


俺と義孝の声が同時に響くと、

ヴォルフさんが力強く頷き――


「では双方、全力を尽くせ! 始め!」


手が振り下ろされるや否や、ヴォルフさんは後方へ跳び下がり安全距離を取る。


その瞬間。


「はああっ!!」


義孝が地を蹴り、一気に距離を詰めてきた。


鉄剣が横一文字に振り抜かれる――!


ガキィン!!


「なっ……!?」


義孝の剣は、俺の身体の手前で“見えない壁”に阻まれ弾かれた。


≪やっぱり【多重障壁】はチート……≫


俺は一歩たりとも動いていない。

ただ立っているだけだ。


義孝は驚愕したまま剣を構え直せず、硬直してしまう。


「ぼーっとしてると負けちゃうよ?」


俺は笑顔で言いながら、左肩を前に出して半身になり、右手に持った“棍”をその陰に隠す。


そう――穂先を外した訓練用の“槍の柄”。

素人でも扱いやすく、鉄よりは怪我もさせにくいと言う点と、もう一つの理由から選んだ武器だ。


ちなみにこの障壁は自分の攻撃に干渉しないと言うご都合性能なので、引きこもりながら攻撃ができる。


≪まさに陰キャな俺にピッタリな戦法ってやつだ……!≫


俺は地面と水平にした棍の先端を手で包むように握って見えなくすると、腰を少し落として構えた。


――そして、腰をひねって右手に隠した棍を“射出する様に突き出す”。


ヒュッ!


「ぐっ……!」


義孝は慌てて左腕の盾を前に出し、辛うじて受け止めた。


盾越しにも衝撃は強かったらしく、義孝は歯を食いしばって後方に吹き飛ぶもすぐに体勢を立て直し、

俺はもう一度、棍を隠すように構える


「なかなか卑怯な攻撃をするんだな……悠斗は……!」

「悪いな! これは俺の好きな漫画の“正式な技”なんだよ!」


「こんな姑息な技があってたまるか!!」


義孝は悔しそうに吐き捨てるが、最強の師匠たちに弟子入りした男子高校生の漫画――

その作品に登場する、女性の棒術使いが使っていた技なので俺に文句を言わないでほしい。


≪……あれ、俺……この戦い……結構楽しんでる?≫


そう気づいて思わず苦笑した。


続けざまに、義孝がギッと歯を鳴らし――

俺を見据えて踏み込んでくる。


模擬戦は、まだ始まったばかりだ。

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