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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第一部 王国に召喚された魂約者

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37.寝起き無自覚とプチ騒動!?友莉の暗躍と振り回される男子!

コンコン、と扉を叩く音が、静かな寝室に控えめに響いた。


「ユウト様? お目覚めでしょうか?」


澄んだ声に意識がゆっくりと浮上していき、俺はぼんやりと目を開ける。


「ん〜……あれ? ここは……」


体を起こし、固まった筋肉を伸ばしてほぐすと、俺はあたりを見回す。


≪あぁそっか……。昨夜は遅かったから、エリオスさんの部屋で休ませてもらったんだっけ≫


シアのステータスを見せてもらおうとしたら意識を失い、昨日の夜に目が覚めたんだけど、それでもぐっすり眠ることができた自分に、あくびをしながら呆れてしまった。


「ユウト様? 入ってもよろしいですか?」

「あ、セリィ。ごめん、入っていいよ!」


返事をすると、扉がゆっくりと開きメイドのセリィが姿を見せた。


「ふぁ〜……。おはよう、セリィ」


そう挨拶してセリィに顔を向けると――

彼女は扉を開けたまま固まっていた。


「……?」


俺がきょとんと首を傾げると、

セリィはハッとしたように顔を真っ赤にし、「コホン!」とぎこちなく咳払いして近づいてきた。


「ど、どうしたの?」

「い、いえ! 大丈夫です! 問題ありません!」


なぜか早口で否定してくるんだけど、明らかになにかあったよな。


≪知らずに何したんだよ俺……≫


この時、セリィは――

寝起きで髪が少し跳ねたままの俺の無防備すぎる姿に、フリーズしていたのだが……


あいにく、彼女いない歴=年齢の俺がその理由を察するはずもなかった。


その“分からなさ”がトリガーになったのか――


――鑑定結果――


名前:セリーネ・ヴァルティエル

種族:竜族

性別:女性

年齢:163歳


状態:尊敬(78%)/ 興奮(93%)/ 敬愛(95%)/ 尊み(89%)

好感度:74% → 82% / 敵対心:0%


[備考]

敬愛する新たな主人の“無防備な寝起き姿”に思考停止した。

現在は、そのことを知られないよう、精神を落ち着けることに悪戦苦闘中。


――。


≪え? 俺、少し意識しただけだよ? このスキルの感度どうなってんの……!?≫


鑑定結果にツッコミを入れて思考停止している俺を、セリィが不思議そうに見つめてくる。


「どうかされましたか?」

「う、うん! なんでもないから! それよりセリィはどうしたの?」


鑑定が勝手に発動しただけなので、慌てて話題を変える。

幸い、俺の目の色は変化していないようで気づかれずに済んだ。


セリィは少し戸惑いつつも、すぐにいつもの丁寧な口調で答えてくれた。


「はい。朝食の準備が整いましたので、ユウト様の体調がよろしければご一緒に、とエリオス様より言付かっております」

「あれ、そう言えばエリオスさんは?」


辺りを見回すが、昨夜ここで寝ていたはずのエリオスさんの姿はない。


「エリオス様は朝食前にお仕事をなされておりますよ!」

「こんな早くに?」


どうやら竜皇国に戻るまでに済ませることが増えたらしいが、詳しくはさすがに教えてもらえなかった。

とりあえず、皆を待たせるのは申し訳ないので俺はベッドから降りる。


「じゃあ、支度してすぐに行くね!」


そう声をかけて身支度しようとすると――


「お手伝いします!」


すすっと近づいてきたセリィの申し出を、俺はやんわりと断る。


≪女子への免疫ゼロの俺には難易度が高すぎる……≫


俺に断られたセリィは少し寂しそうにしながらも「かしこまりました」と微笑んで部屋を出ていった。


≪……うぅ、その表情はやめてください……胸が痛いです……≫



――――



「おはようユウト!」


いつものように、シアが勢いよく飛びついてこようとして――


「きゃんっ!?」


俺の前にすっと立ったセリィが、自然な所作でシアの進路から俺をずらすと、

シアは勢いをそのままに、扉に向かって顔面ダイブしていった。


「えっと……ありがとう、セリィ?」

「はい。主の安全を確保するのも、メイドの務めですので!」


胸を張るセリィの誇らしげな笑顔。

“主ってシアじゃなかったっけ?” という疑問は……飲み込んでおく。

この表情を見て、それを言える勇気は俺にないよ。


「おはようユウト! よく眠れたかい?」

「顔色もよさそうじゃな。食事は取れそうか?」

「えっと……はい! よく眠れましたし、食欲もあります!」


エリオスさんとヴェルミナさんが温かく声をかけてくれるが、

その後ろで――


「ひ、ひどいよセリィ!

 お兄さまもお姉さまもユウトと和やかに会話してズルい!」


シアが座り込んで涙目で抗議してくる。


しかし、


「朝からユウト様に抱きつくなんて……うらやま――コホン、はしたないですよ」

「そうじゃな。セリィのように“我慢”を覚えねば、ユウトに童と思われてしまうぞ?」

「ガーン!!?」


二人の援護射撃で、シアはショックを受けた顔になる。


ヴェルミナさんがさらっと爆弾込みで叱るものだから、

セリィは赤くなって誤魔化すように、俺とシアの給仕準備へ向かって行った。


料理が並び始め、俺はエリオスさんの横、向かいにはシアが座ると……


「ふむ……これはセリィとの“魂約こんやく”も近いかもしれないね!」

「えっ!?」


さらっと爆弾を投げるエリオスさんの一言に、俺は素で驚く。


「安心せい。セリィがそれを望んどると言うだけで、お主の気持ちを無視する気はない」

「いやいや、俺はもうシアと魂約してるんですよ!?」


するとヴェルミナさんは当然のように頷く。


「知っておるわ。じゃがの、妾らの国では一夫多妻は認められておるし、

 実力・地位・シアとの相性など……セリィほど条件がそろった娘はそうおらん。問題ないじゃろ」


問題しかないと思うのだが!?

俺が心の中で突っ込みを入れていると――


「まあ、ゆっくり考えたらいいよ。

 ちなみに僕としてもセリィはおすすめだよ?」


エリオスさんまで勧めてくる始末。


シアは終始嬉しそうに朝食をとり、

セリィは給仕をしながら、時々こちらを見ては頬を赤らめて微笑む。


≪あれ、これってすでに決定事項なのでは……?≫


どうやら外堀は完全に埋まっていることに俺は動揺しながら朝食をとることになった。



――――



「はぁ〜……大変な目にあった」


自室へ向かう廊下を一人で歩きながら、思わず愚痴が漏れた。


食後の紅茶を飲みながら今後のことを話し合った結果――

当分のあいだ、竜力の使用は禁止 と言い渡された。


……と言っても、全部が禁止というわけではない。


・周囲に危険が及ぶ攻撃系は使用不可

・【多重結界】や【竜識眼】など、影響の少ないものは“ある程度の練習可”


という制限付きだ。


≪【竜識眼】は、女性に向けて使わないようにするとして……≫


さっき試したばかりだが――

どうやら使用する際に、強い力を意識しない限り目の色が変わらないらしい。


食後に部屋にいるみんなと相談し、実際に試してみた結果――


●セリィを鑑定 → 目の色は変化なし

●【見識】や【視覚化】を使用 → 目の色は変化


ということがわかった。


≪……うん。中二病が発症していたころじゃなくてよっかた……≫


自分でも呆れるほど規格外だが、中二病末期の時だったら違う意味で規格外になるところだったよ。


そんなことを考えながら歩いていると、後ろから聞き慣れた声が飛んできた。


「あれ、悠斗じゃない!」

「本当だ!」


振り向くと、ここ数日ですっかり距離が縮まった二人――

友莉と奏が手を振りながらこちらへと歩いてくる。


「二人とも、おはよう」

「あれ? シンシアは一緒じゃないんだ」


シアが一緒にいないことを友莉が尋ねてくるきたので、俺は少し肩をすくめた。


「まあね。ちょっとやらかして、今は自室で謹慎中だよ」

「シンシアさんと何があったの?」


シアは俺を昏睡させてしまった件の罰として、国へ戻るまで 自室謹慎&思念伝達禁止になってしまい、

俺が部屋を出ようとするとき、捨てられた子犬みたいな目で見てくるのだ。


≪学校や遊びに行くときの、飼い主の気持ちを体験している感覚になるんだよなぁ……≫


セリィも同様に罰らしく、皇国から来て早々の謹慎にだいぶ落ち込んでいた。

もちろん、友莉と奏には余計な心配をかけないよう、内容はぼかして伝えておく。


「へぇ、じゃあその竜力?ってもう使えるようになったの?」

「いや、まだまだだよ。危険すぎるから、本格的な訓練をするまでは使うなって言われた」

「そ、そうなんだ……そんなに危険な力なんだね……」


奏は驚きながらも、どこかホッとした表情を見せる。



――――



俺たち三人の部屋は同じ区画にあるため、近況を報告し合いながら並んで廊下を歩く。

すると――


「あれ? 友莉と奏……それに悠斗か」


前方から軽装姿の義孝が歩いてくるのが見えた。


「義孝じゃん! これから訓練に向かうところ?」

「まあな。三人は?」


そう聞かれ、奏が楽しそうに答える。


「私と友莉ちゃんはお部屋に戻って、授業の準備だよ!」

「なるほど、二人も頑張ってるんだな! それで、悠斗は……シンシアのところに行くのか?」


義孝のその質問に俺が口を開こうとした瞬間――


「違うわよ! 悠斗は今までシンシアの部屋にいて、これから自分の部屋に戻るところなんだって!」

「ちょ、友莉さん!?」


友莉は悪戯が成功した子供みたいに肩を揺らして笑う。


「いわゆる“朝帰り”ってやつよ!」


≪いや、確かにそうだけどさ……言い方というものがあると思うんですけど!?≫


もちろん、俺の心の叫びは彼女には届かない。

それどころか、義孝の表情が――


「……ずいぶんと余裕なんだな」


――不機嫌を頑張って押さえてますと言う笑顔へと変わり、降ろされた両手は固く握られている。


奏が慌てて義孝の袖を引っ張りながらフォローし、俺も必死に弁明するが――


「約束の模擬戦……俺は全力で行くからな!」


そう言い残し、義孝は踵を訓練場へと去ってしまった。


「友莉ちゃん!」

「いいの、いいの! これで義孝、もっと修行する気になったでしょ?」


俺と奏が同時にため息をつく。

そんな二人をよそに、友莉は自信満々に胸を張る。


そして俺の前に回り込むと――顔をぐっと近づけ、真剣な眼差しで告げた。


「いい?悠斗。

 たとえ全力を出せない状態でも――絶対にわざと負けるんじゃないわよ?」


「いや……負けるつもりはないけどさ」


実際、義孝が俺へダメージを与えるのは相当難しい。

貰った能力の差が大きすぎるからだ。


俺の返答に満足したの友莉は気分よく前を歩き始めるが、

少し引っかかる点がある。


「友莉。お前……義孝と何かあったのか?」


前を歩いていた友莉は、少しだけ振り向いてニヤリと笑った。


「挫折を知らない義孝には、ちょ〜っとぐらい“痛い目”見せた方が成長すると思うのよ!」


まるでイタズラが成功するのを待つ少女の笑顔で答える友莉に、


「友莉ちゃん、性格悪いよ?」と奏が不満をこぼす。


「いいのよ! 悠斗が勝てばアイツのためにもなるんだから!」

「……もう……」


奏の苦言にもどこ吹く風。

そんな友莉を見て、俺は心の中で思うのだった。


≪いや……たぶん義孝が負けた後のほうが面倒なんじゃ……?≫

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